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オズの正体

 

「結晶病を、操る……!? な、何者だ!?」

「え? あれ? ご紹介してませんでしたか? 我が国、ルオートニス王国の守護戦神、ラウトと申します。千年前に世界を滅ぼすほどの戦争が行われたのに怒り、愚かな人類に結晶病という鉄槌を下した怒りの神です。今は私を認めてルオートニスの守護神となってくださっています」

「なっ、なんじゃとぉ!?」


 あれ? 言ってなかったっけ? 本当に?

 ソードリオ王にも周りの騎士やエドワードの兵たちにもそりゃもうびっくらこかれてしまった。

 ご、ごめんなさーい?


「……神? ギア5に到達していたのか?」

「まぁな。知っていたのか?」

「ザードの提唱は聞いている。……本当に神になるのか……」


 シズフさんとラウトの会話が最低限過ぎてこっちは「なに言ってんの?」ってなるよ。

 俺はかろうじてわかるけれども。

 口下手さんたちめぇ。


「それよりも説明しろ。デュレオ・ビドロは共和主義連合国軍……貴様の“歌い手”だろう? ヴァンパイアのような生き物だったのにも驚いたが……コレがなんなのか貴様は知っていたのか?」


 そうだ! デュレオ・ビドロ!

 ギギが前に教えてくれた、千年前で『もっとも有名な五人の軍人』の一人!

 共和主義連合国軍広報部、シンガーソングライターにしてギア・フィーネの“歌い手”の一角。

 そして、唯一“男性”の“歌い手”だった人。


「こ、この人が『デュレオ・ビドロ』なの?」

「俺でも顔は知っている。化け物だったのは初めて知った」

「……デュレオは化け物ではない。御菊名・イヴ・ルナージュの研究結果の一つだ」

「だ、誰?」

「王苑寺ギアンとナルミの母にあたる。ある意味デュレオも御菊名・イヴ・ルナージュの息子だな」

「「え」」


 俺とラウトの声が重なる。

 王苑寺ギアンはギア・フィーネの創造者。

 ナルミさんは、うちの国にいるあのナルミさんだと思う。

 そして、このデュレオ・ビドロも?


「ろ——ろくでもない……?」

「正解だ。あの女は本当にろくでもない。共和主義連合国軍で行われていたノーティス手術に使われるノーティスナノマシンは、デュレオの体内結晶から作られていたらしいからな。強化ノーティス手術にもデュレオの細胞が使われていた。ある意味、俺はデュレオと血が近い」

「…………」


 衝撃的すぎるんですが。

 そろそろ驚かなくなってきたと思っていたけど、意外と驚くもんだなあ。


「ノーティス手術や強化ノーティス手術を施された人間に拒絶反応——副作用が出るのは当然ということか」

「そうだな」


 人間がオズを——デュレオを食えば、デュレオの血肉が食った人間さえ捕食する。

 そう、言ってたからか。

 それを体内に取り込み、強化人間になれば当然、副作用は害あるものになる。

 やなこと考えるし、実行するもんだよ、千年前の人たち。オェ……。


「“歌い手”だったのも王苑寺ギアンとデュレオの血が近いからだろう。他の二人の“歌い手”はよくわからない」

「意外すぎる接点だな。というか、なにを研究したらこんなのができるんだ?」

「不老不死と聞いている。御菊名・イヴ・ルナージュは永遠の若さと命を望んだらしい。だがデュレオは男体だったから魂と精神の定着ができなかったとか。人格データを『クイーン』に移植して、ネットワーク内に生きようとしたらしいが、それもザードのワクチンで駆逐した」

「は!? 『クイーン』の人格……!? それは俺も知らないぞ!? 『クイーン』はカネス・ヴィナティキで製造されたのではなかったのか!?」

大和(タイワ)からカネス・ヴィナティキに渡ったと聞いている」

「っ……!」


 ……シズフさんとラウト、二人にしかわからない会話しないでほしい。

 俺は前世の知識と事情を聞いてるからわりかし理解できるけど、現地人の皆さんは「???」ってなってるよ。

 無理もないよね。

 っていうか、『クイーン』ってあのコンピューターウイルスのことだよな?

 そんなろくでもない研究者の人格データを使ったものだったのか。

 そりゃウイルスに変質するよ。


「千年前、殺すと約束した」

「こいつをか?」

「ビームライフルで細胞一つ残さず消し飛ばしたと思ったのだが……それでも死ぬことができなかったんだな」


 ほとんど独白のように呟いて、シズフさんは結晶の中に閉じ込められたデュレオを見上げた。

 ただ無駄に殺してるように見えたけど、本当に殺すつもりだったのか。

 というか、今の言い方は、まるで……。


「デュレオ・ビドロは死にたかったんですか?」

「生み出されておきながら失敗作と罵られ、死ぬこともできないのに人の命を喰わねばならず、その餌を強くするための素材にされて——生き永らえたいとは思わんだろう」

「……」


 想像すると、それは、まあ。


「八つ当たりのように人間関係を破壊して、国を世界を滅ぼそうとする。根っから邪悪だが、最初から邪悪だったわけではないだろう」

「貴様、祖国を滅ぼされたのはこれのせいなのだろう?」


 ああ、さっきデュレオが自分で言ってたね。

 ミシアを瓦解に追い込んだのは、自分だっ、て。

 シズフさんはミシアの延命薬で生き延びていた。

 それがなくなって、延命薬も望めなくなったはず。



裏設定


千年前の世界で誰でも知っている五人の軍人は以下の五人です。


共和主義連合国軍

デュレオ・ビドロ(広報部・歌手)

シズフ・エフォロン(軍部・ミシア軍所属パイロット)


アスメジスア基国軍

ロニー・ベル・ロス(第五軍事主要都市アトバテントス都市長・双翼『無欠の紅獅子』)

リーマルド・リー(第一軍事主要都市レムレス都市長・双翼『黄金竜』)


カネス・ヴィナティキ帝国軍

スヴィーリオ・イオ 『残影の万人殺し』



単純な知名度の高さで選ばれています。

デュレオは元々歌手として活動していましたが、共和主義連合国軍に統合された時にスカウトされて広報部所属となりました。

正確な経緯はナルミが大和(タイワ)の偉い人のところに養子入りしたため、手土産がわりにされたようです。

ナルミとイクフ(シズフの兄)の婚約がきっかけで、シズフとも知り合いでした。

ちなみにアスメジスア基国には『蒼海の虎』の二つ名を持つ軍人がおり、ロニーとリーマルドと並びかつては『三将壁』と呼ばれていました。

レネエルに奥さんと子どもがいたため、共和主義連合国軍にレネエルが取り込まれることを知った時に引退、退役してレネエルに帰化しています。

なお、その息子がアベルト・ザグレブ。

四号機の初代登録者です。

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