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16歳になりまして(2)

 

 父上も顔を顰めて立ち上がり「レバー伯爵よ、不敬だぞ」と手を横に振るう。

 しかし空気の読めない己の栄華を極めた時代に取り残されたままなのか、レバー氏はニンマリ笑うと「不敬とは心外!」と大声で叫ぶ。

 会場の静まり返り具合が大変に痛々しい。


「私は聖殿真代表最高顧問長として神にご挨拶したいだけです! それのなにがおかしいのですかな!」


 これは俺や父というより、周囲の人間に聞いている。

 自分の周りが味方ばかりだった名残だろう。

 可哀想だが、今日は俺の誕生日パーティーで残り少ない聖殿派や反王家派は多分あんただけなんだよね。

 ラウトを、チラリと振り返り「ごめんな」って小声で謝ると不機嫌そうだった表情がスン、と無表情になる。

 俺や周りの反応を見て、このおっさんの場違いな勘違いぶりを察してくれたんだろう。

 さすがにこれ以上はうざいので、いい加減お引き取りいただこう。


「レバー聖殿真代表最高顧問長殿、それは本日でなく別の日を改めて用意しよう」


 ラウトとディアスがあんたに「会ってもいいよ」って言ってくれるかどうかは別だけどな。


「今日のところは事前通告を守ってほしい。聖殿の長であるあなたならば、わかっていただけると思うが」


 一度持ち上げておけばこれ以上騒げないはず。

 丸く収まるだろう。

 そう思ってかなり下手に出たのがまずかった。


「おお、神よ! どうか私の信仰心をお認めください! 真なる神であるのならば、我信仰心をお認めいただけると!」

「ちょ、ちょっとレバー伯爵?」


 俺を無視。

 そしてずかずか父上と赤子を抱いた母上の方へ近づいていく。

 母上が抱く赤子は俺の実弟。

 半年ほど前に生まれた、ライモンド。

 うん、俺の誕生日だが、今日は守護神二神の他に実はライモンドのお披露目も兼ねていたりする。

 我が王家はまだまだ貧乏癖が抜けていないのだ。

 もう半年経つから、一部の貴族は顔を見たりもしているけれど。

 このめでたいことはひとまとめにして祝うのも、ゆっくり改善していきたいものだ。

 王家としてはその都度派手にパーティーを開催して、権威を知らしめるべきだろう。

 ってそんなこと考えてる場合ではなかった。

 無遠慮に近づくのは、それこそ王家への不敬。


「レバー伯爵! それ以上近づくのであれば取り押さえ……」


 母上が不安そうな表情になったのを見て、咄嗟に叫んだ瞬間、ラウトがなにかに勘づいたような表情になり手を差し出す。

 途端にレバー伯爵の進路方向を塞ぎ、父上と母上を守るように結晶が鉱物のように無数に地面から生える。

 あー……言わんこっちゃない。


「ヒッ! ヒィィィィイイイィ!」

「赤子を抱える女に気安く近づくとは、不敬以前に人間として気色が悪い」


 尻餅をついて恐怖に震え上がるレバー伯爵。

 他にも悲鳴も多くあがったが、それらが一通り終わるとラウトがそう言い放つ。

 それを聞いて、俺もだけど……周囲の人間のすへてが「確かに——!」と納得した気配を感じた。

 すごい、口に出なくてもこんなに満場一致に納得する気配って感じるものなんだな。


「貴様は不快だな。二度と顔を見せるな」

「な、なっ、そ、そんな……!」

「聖殿というのはこんな者が集まっているのか? だとしたら一度解体しろ。逆恨みするようなら殺せ。ああ、ヒューバートの弟がもう一人いたな。あれにやらせろ」

「「「は!?」」」


 思わず聞き返したのは俺と父上とレバー伯爵である。

 父上は玉座から立ち上がって振り返ったほど。


「レ、レオナルドに聖殿の長をやらせるのですか……!? しかしレオナルドはまだ十五になったばかり……」

「十五になったならば大人も同然だろう。ヒューバートなど、もっと幼い頃から様々な改革をしていたではないか。ヒューバートの弟なら問題はなかろう」


 なあ、とディアスの方を見るラウトに、ディアスも意味深に微笑む。

 あれ? もしかして俺の知らないところで事前に打ち合わせしてました?

 しかしそれにしては父上もめちゃくちゃびっくりしてるんだが?


「お待ちください、神よ! 聖殿真代表最高顧問長は私ですぞ!」


 すげーなレバー伯爵。

 目の前に結晶を出されてもまだ食らいついてくるのか。


「頭が高い」

「ァッ」

「あ!」


 バキン、と今度こそレバー伯爵が結晶化してしまった。

 会場が恐れ慄く中、しかしこれまでと違って中身まで結晶化していないことに気づく。

 これなら聖女の魔法で元通りにできるだろう。


「三度目はないと言っておけ。ヒューバートの祝いの日というから大目に見るが、俺は人間が嫌いだ。殺すのに躊躇はない」

「っ、は、はっ、もちろんでございます。すぐに片付けよ! あ、壊さぬようにな」

「は、はい!」


 神輿の上の席に座り直すラウトの尊大な態度。

 父上も頭を下げて周囲の騎士にレバー伯爵を片付けるよう指示して、上下関係を周囲に示す。


「寛大なお心遣い感謝いたします。神、ラウトよ」

「ふん」


 ああ、地味にごまかされたが——レオナルドの方を見ると驚愕に打ち震えて青ざめている。

 隣にジェラルドがいるけど、ジェラルドはレオナルドのフォローなんかしないだろうしなあ。


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