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事後——神々が舞い降りた国(2)

 、

「きもい、なにそれぇ……」

「信仰の象徴になってしまったのだから仕方がないな」

「嫌だァッ……」


 デュラハンが優しく言うけど、仕方ないなんて思いたくないよ。


「王族としては誉なのではないか? 権力者はこぞって建てたがったぞ」

「俺はそんな大したことしてないぃ」

「「…………」」


 なんでそこで二人して黙るんですか。

 ラウトの知ってる権力者って自分の像を建てたがるやつばっかりなの?

 それはそれでヤバくない?


「まあ、とにかくお前は試練を乗り越えた王子ということでより人気が高まった。俺たちもこの国に神として祀られる。これからはより側にいるから、大丈夫だ」

「デュラハン……」

「うん、それでな……デュラハンという名は首が取れるから名乗っていたんだが、ナルミに『神格化して首が取れなくなったから、もう名を戻していいのではないか』と言われた。神として神名を偽りの名で名乗るのもよくないだろうと」

「! あ、じゃあ……」

「これからはディアスと」

「……うん、改めてよろしくお願いします、ディアス、さん?」

「今まで通り呼び捨てでいいよ」


 そうか。

 そうだな。それもそうだ。

 右の紫色の瞳も、十分綺麗だったけれど。


「そういえば貴様、俺が出会った時すでに左右目の色が違っていたな」

「ああ、実家で母がダークマター発生メカニズムの実験を行なっているところに、妹が遊びにきてな。暴発に巻き込まれたのを庇ったら右目がざっくりと……」

「痛い痛い痛い」


 話がもうすでに痛い!


「なので義眼にしていた。自分の遺伝子を基にした人工眼球と人工視神経を組み込んだ新素材のもので、とてもいい論文が書けたぞ」

「「ぅゎぁ……」」

「なぜそんな顔をする?」


 なぜそんな話を生き生き語るんでしょうかこの人は。

 怖い怖い怖い。


「今はまだわからないが、俺の神力、権能も医療関係だといいな、と思う」

「ディアスは医療担当の神でいいと思う……本当」

「そのように努めよう」


 でもちょっと事故を自分の実験に利用するのはどうかと思います。かなり。


「話を戻すが、俺は結晶病に触れないといまいち上手く扱えない。ただ、人間への突発的な感染はもうないだろう。そんな感じがする。ただ晶魔獣? あれは本当になんだか俺にもわからん」

「ええ……!?」

「近くにいれば操作はできそうなんだが、アレに傷つけられると結晶病になるのは今後も現象としては()()と思え。もう少しこの権能というものに慣れれば、取り除くこともできると思うが……」


 つまりラウトは神として初心者だから、自分の能力が把握できてない状態ってこと?

 そんなことあるんだぁ……。


「なのでナルミはルオートニスの王侯貴族と国民には、『ラウトという神は千年前の大戦で人類が己を律することなく暴走し、世界を滅ぼしかけたことを未だに案じている。現代の人類が争うことなく、力を正しく使えるかどうかを今後も試すため、結晶化した大地(クリステルエリア)は自力で開拓せよ』と言っていることになっている」

「つ、都合がいいですね」

「ああ、お前の石晶巨兵(クォーツドール)も活躍の機会を失わずに済むな」


 微妙なところだなぁ。

 俺は結晶化した大地(クリステルエリア)がなくなる方が、嬉しいんだけど。

 しかも晶魔獣についてはラウトもよくわからんとは。


「あ、でも、それってつまり結晶化した大地(クリステルエリア)には、これまで通り立ち行ったら……死ぬ?」

「死ぬ」

「ぅぐぅ……」

「だが石晶巨兵(クォーツドール)を用いれば大丈夫なのだろう? せいぜい頑張って開拓していくんだな」

「…………」


 言いたいことは、確かにとても色々あるけど……特にラウト、本当に偉そう!

 能力が使いこなせてないのに、よくこんな偉そうにできるな。

 あーあ、結晶化した大地(クリステルエリア)に生身で入るとこれまで通り死ぬのか……破滅エンド回避ならずじゃねーか!


「だが、侵食は止まる」

「!」

「結界は晶魔獣侵入を防ぐために、今後もあった方がいいだろうが……国土の減少はなくなるだろう」

「……そうか」


 ミドレ公国はそれでかなり落ち着きそうだな。

 他の国々も。

 でも、そうなると石晶巨兵(クォーツドール)の開発は今後も必要。

 そして普及も。

 うーん、となると……。


「じゃあ、当初の予定通り国内が落ち着いたらハニュレオに行こう」

「ハニュレオ……カネス・ヴィナティキ帝国があった土地の国か」

「そうなの? ……うん、ハニュレオもミドレと同じように孤立しているんだ。石晶巨兵(クォーツドール)を持っていって、国土を安定させて、国交回復と不可侵・和平条約を取りつけようかな、って」

「ああ、いいと思うよ」


 ディアスの手が額を撫でると、頭痛が少し治まる。

 不思議な魔法だな。

 脳波に効果を持つ魔法って、多分ディアスにしか使えないんだろうな。

 ああ、冷たくて気持ちいい。


「カネス・ヴィナティキか……あの国は『クイーン』発祥の地だからな。石晶巨兵(クォーツドール)に感染しないだろうか?」

「!?」


『クイーン』……!

 そういえば千年前の大戦はコンピューターウイルス『クイーン』のせいで、さらに大混乱になったんだっけ?

 ギギが研究塔への侵入をなにより嫌がっていたウイルスの、発祥の地!


裏設定


ディアスの妹はこの事故で兄が右目を失ったことを、それはもう気にしてしまい、完全なるブラコンが完成しました。

なんならガチ目に「お兄ちゃんと結婚する!」って言っちゃうタイプです。

しかし、当人が嬉々として新型義眼の実験をしていたので「そんなお兄ちゃんも素敵!」とますます傾倒しました。

弟も体が弱く、ディアスが特効薬を開発して完治したことから立派なブラコンになり、「お兄ちゃんと結婚するのは僕!」と、こちらも負けず劣らず結構やばいタイプに成長。

伯父のロニーはディアスは人望を集めるタイプなので、次期国王選定選挙にディアスを推奨するつもりだったようで、それが婿入りで国王の座を狙っていたアレバン・ゼシュ・ロス(ロニーの義弟でディアスの実父)に妬まれ、対戦後半に差し掛かる前のアスメジスア基国反乱に乗じて投獄されるきっかけとなりました。

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