事後——神々の舞い降りた国(1)
「一度登録者になると、解除する術はない。……俺のように神に至るか、至らぬまま天寿をまっとうするか……お前は後者であればいいな」
「まだ起き上がるなよ。無理に動くと脳波がまた崩れて、頭痛で死ぬような思いをするぞ」
「うう」
部屋の中にはデュラハンとラウトだけ。
窓から見える景色は夕焼けだ。
ぼーっとするけど……色々聞かなければいけない。
「ラウトは、大丈夫か?」
「どうして真っ先に俺の心配をする?」
「いや……だって……」
「心配はいらない。お前が意識を失う前に言ったことを、ナルミが上手いことまとめてルオートニスの王と民に伝えてくれた。国王も正しくラウトをルオートニス王国の守護神と認め、祀る約束をしてくれたよ」
「よ、よかった……。あれ、でも……それじゃあ結晶化した大地は……?」
結晶化した大地がラウトの呪い——神力による結晶化なら、国の外はもうすべて普通の大地に戻ったのだろうか?
だとしたら石晶巨兵は、労働補助としての開発に舵を切った方がいいのかな?
「うーん、それがな」
「え?」
「どうやって全面解除するのかわからん」
「ou…………」
デュラハンがチラリとラウトを見る。
そのラウトが、いっそドヤ顔で言うではありませんか。
マジか。
「なのでナルミがかなり都合のいいように説明した」
「ど、どのように」
正直聞くのが怖い。
しかし聞かない方がもっと怖い。
「そうだな。まず千年前、人類は“遺物”を用いて絶滅寸前まで殺し合いの戦争を行った。この辺りは脚色もなく事実に相違ない」
「はい」
千年前に大戦があったのは事実。
ギア・フィーネが千年前の大戦の遺物であるのも間違ってない。
うんうん、ここまでは史実に基づいているのね。
「その時生まれた神が、絶滅寸前まで殺し合った愚かな人類に怒りの鉄槌を下した。それが結晶病。……地味に間違っていないのがなんとも」
「あ、ああ、はい」
そうね。
概ね間違ってない。
ラウトは大戦終結、勝敗が決したあとに神格化した。
その時ブレイクナイトゼロは破壊されていて、ラウトは搭乗していない状態だったが積み重ねてきた同調の末だから正式な形で神格化を果たしたと言えるらしい。
ただ、搭乗した状態ではなかったからこそ、ラウトは記憶を失い眠りについた。
どうして若返っていたのかは本人にもわからない。
ミドレ公国で記憶を取り戻し、自動修復・進化していたブレイクナイトゼロに乗って初めてラウトは神として完成したのだ。
千年前に神格化した時のラウトは神として未完成。
だから、結晶病を自在に操れるかと言われるとまだ微妙、ということのようだ。
ナンテコッター。
で、それを隠すためにも都合よくなんかそれっぽい「神が人類にお怒りになり鉄槌を下して早千年」みたいに語ったらしい。
「ヒューバートとレナがその怒りの神を救い出し、現在の世界を見せて神に更生しているところを理解してもらい、最後の試練として“遺物”で戦うように申し渡した——ちなみに俺はその“遺物”をヒューバートに渡す役割の神、ということになった」
「…………」
「で、見事に“遺物”の力を聖女レナと共に目覚めさせその試練を乗り越え、怒れる神を鎮めたばかりかルオートニスの守護神に迎えることができた。それもすべて、ヒューバート・ルオートニスの起こした奇跡である。以後、ルオートニス王国は二体の神を守護神として祀ることとして、その役割を聖殿に一任する。聖女は引き続き聖殿が候補を集め、育成するということになる。ただし、聖殿の上にはこの奇跡をもたらしたヒューバート・ルオートニスと国の守護神となった神——俺とラウトが据えられる。守護神の加護はルオートニス王家に与えられるだろう、という感じだな」
「…………」
どえらい感じになりましたね。
吐きそう。
オェ。
「色々言いたいことはあるが、今後聖殿ではヒューバートとレナ、お前たちの偉業を神話と認定して聖書に記載され配布される」
「ゥワァァァァァ……」
「なんて声を出すんだ。どちらにしてもお前は十代前半から医療や農業、建築など幅広い分野で改革を行い、石晶巨兵の開発者として歴史に名前が載るのは確定だったと聞いているぞ。そのおかげでルオートニス王国内だけでなくミドレ公国からも絶大な人気を誇るとか」
「ううう、そ、それはぁ……」
心当たりしかありませんけれど。
でもさぁ! ちょっと評価高すぎじゃない!?
俺はただ死にたくなくて、快適に生きたかっただけですしぃ!?
いや、本当特に死にたくない、ってだけですよ!?
なに、神話って。
やばくない? 神話? は?
「あとなんか王都の各広場にお前の石像が建つらしいぞ」
「ホァイ!?」
「急に起き上がろうとするのはやめろ。また頭痛をぶり返すぞ」
「あっっっっ!」
「言わんこっちゃない」
ラウトの爆弾発言に思わず起き上がり、恐ろしい頭痛と眩暈で再びベッドに沈む。
デュラハンの治癒魔法が冷たくて気持ちいいけど、頭痛の方がヤバババババ。
いやもう、頭全体を金槌で中から全方位に殴られてる感じ。
小ネタ
ヒューバート「ナルミさん、登録者たちにパイロット適性の低い高いがあるのなら、俺ってどのくらいの適性なんですかね!」
ナルミ「んー……こんな感じかな?」
1位 シズフ(二号機登録者)
超えられない壁
2位 一号機二代目
3位 ザード(三号機)
4位 ラウト(五号機)
5位 アベルト(四号機初代)
6位 一号機初代
7位 ヒューバート(四号機二代目)
8位 ディアス(一号機三代目)
ヒューバート「1位と2位の間にすでに超えられない壁がある!? あと俺がギリディアスより上!?」
ナルミ「まあ、シズフはそもそも戦闘特化の戦闘用強化ノーティスだし仕方ないね。二号機は扱いが一番難しい機体だし。一号機二代目も精神崩壊していなければギア5に至っていても不思議ではない逸材だったけど、精神的に弱い子だったんですよ。ザードとラウトは好戦的だったので納得の位置。アベルトは、あれはもうなんつーかずるい」
ヒューバート「ずるい!?」
ナルミ「だって最初から歌い手ブースター付きだったんだもの。参考にならないですよ。なので、まあそれ以下は消去法的な?」
ヒューバート「うぐぅ……」
ナルミ(というかヒューバートも最初から歌い手ブースター付きなので参考にならないんですよね。ま、今後に期待しましょう)