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ギア・フィーネと歌い手(2)

 

 どこにも所属していない、世界に追われ続けた三号機と四号機が、世界に追い回されても決して捕まることも倒されることもなかったのは、それが理由。


「三号機と四号機はギア(フォー)まで上げられた。当時だとラウトがギア3から4へ上げられそうで上がらない……といったところだったな。二号機のことはよくわからないが、彼も3から4、だったはずだ。その4に上がるのにどうしても必要なのが“歌い手”の歌だと聞いている。そのせいなのか、三号機と四号機は難なくギア4に到達して適応できていたのだ。はっきり言って、ギア4は魔法の領域。すべての機械類は、ギア・フィーネを相手になにもできない」

「…………」


 例えば戦闘機や戦艦、戦車など俺でも知っている自動化された兵器のすべてはギア4に上がったギア・フィーネ相手に無効化される。

 物量戦に打って出たカネス・ヴィナティキ帝国が、それでも三号機や四号機を得ることができなかった理由がそれだ。

 手動兵器で戦える相手ではない。

 三号機に至っては『神の手を持つ悪魔』、ジークフリート。

 彼の場合メカニックだがプログラムも当然凄腕で、機体の中身も独自にいじり倒しておりギア4に上がるないなや、無効化した敵性兵器を支配下に置いて同士討ちまでさせていたらしい。

 なるほど、性格が悪い。


「そしておそらくラウトは今、ギア(ファイブ)に到達している。ザード曰く最大ギアがギア5。『神性領域』だ」

「神性領域……?」


 ギア・フィーネはギア4に到達した時点で、金属製だった機体が未知の金属に変質する。

 一度ギア4に到達している二号機から五号機は、当時の科学で説明できない不思議な金属へと変質済み。

 その金属は時間が経つと破損した部分が元に戻る。

 大幅に欠損すると、進化して別の形に変わる。

 ラウトの五号機が良い例で、元は『ブレイク・ゼロ』というシンプルな騎士型の機体だった。

 二号機や四号機との戦いで大幅に欠損した五号機は、一度ザードが再生させて『ナイト・ゼロ』というエンジンと操縦席以外八割新品の新型になっている。

 それも四号機に破壊され、現在の『ブレイクナイトゼロ』になったのだそうだ。

『ブレイクナイトゼロ』も最終戦で四号機に破壊されたらしいのに、元の姿に戻っている。

 ……というかラウトは四号機に負け続きなの?

 あまりにも負けててびっくりしたわ。

 その辺は機体の相性が悪すぎるらしいが、破壊しても進化して元に戻る。

 ギア・フィーネの研究第一人者、ザード・コアブロシアはそれはもう首を傾げていたそうだ。

「俺らが乗ってるもん、マジでなに?」と彼の疑似人格の大元になった王苑寺ギアンの頭のおかしさを罵っていたほどに。

 だから俺が知っているサルヴェイションは通常モードのみ。

 ギアが入ったところさえ見たことがない、ということらしい。

 怖すぎない?

 あれより強くなるってこと?

 ふぉおぉ?


「ギア1は機体の機能の全向上、ギア2は出力全向上、ギア1とギア2は不慣れな登録者が行うと脳への負荷が大きく治療が必要となる。ギア3は機体全体に光の線が走り、周辺機械類へ影響を及ぼす。主に停止、阻害、故障、異常反応など。三号機は誰より早くこのギア3に到達しており、鹵獲はほぼ不可能な状態だった」

「っ」

「その後、リリファ・ユン・ルレーンの歌声で四号機が瞬く間にギア4に到達。ザードはそれを『新生領域』と呼んでいた。新たに生まれる、という意味だ。四号機と、そして立て続けに三号機も“歌”の力でギア4に到達して、世界は三号機と四号機を『新たな勢力』として認め、手に入れるのを諦め、三号機と四号機の登録者の殺害にシフトした。それ以外の方法がなくなったと言える」


 つまり機体に乗っている間はチートすぎて手が出ない、というやつだ。

 話を聞く限り「ですよね」って感じ。

 しかも損傷しても欠損しても、勝手に直るんだろ?

 なるほど、チートすぎる。

 しかし、ギア・フィーネにはさらにその上がある、と。

 ギア5。

 誰も到達していない、『神性領域』。


「ラウトはそれに、到達してる、んですか?」

「おそらく。そう思う根拠は四つ。単純に時間。離れていた時間が長いとはいえ、俺がサルヴェイションの登録者になった時点でラウトは五年、五号機の登録者をやっていた。もっとも登録者として才能があった四号機の登録者が一年未満でギア4に到達したのに対し、一番搭乗歴の長い三号機でも最大ギア3。……四号機に関しては最初から“歌い手”の助力があったので『アイツは参考にならない』とも言われているが……」


 最初からブースター付きだった的な?

 多分それを言ったのは三号機の登録者だろうなぁ。


「そもそも脳波に干渉するなど普通ではない。時間をかけねばできないことだ」

「そ、そうですね」

「俺の場合はその日が浅い。そしてサルヴェイションと離れていた時期も長い。ラウトは元々ギア4までは到達していた。歌い手の助力なしでも、ギア4に。それが明確な差だ」

「……不利、ということですね」

「二つ目の根拠はラウトの姿。俺の知るラウトの姿は15歳の出会った頃の姿と、20歳の最終戦の頃のもの。お前たちが救い、死者の村に連れてきた時のラウトは子どもの……15歳の姿に戻っていた。これは、あり得ない事態だ。ラウトがギア5に到達していない限り……」


 確かにあり得ない。

 一度成長した人間が若返るなんて、そんなこと普通じゃない。


小ネタ


ヒューバート(それにしても、さっきの映像に入り込んでいたジェラルドのご先祖様の声、めちゃくちゃイケボだったな。あれは直に聞いたら腰が砕けるわ。男でも妊娠しちゃうやつだわ)

ジェラルド「そういえばラウトがぼくはご先祖様にそっくりって言ってたよね〜。見たかったな〜」

ヒューバート「人死が出るぞ」

ジェラルド「どど、どういうこと!?」

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