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ギア・フィーネと歌い手(1)

 

 結局“歌い手”についてわかったことは、“歌い手”の歌がギア・フィーネと登録者の『同調率』というものを上げる効果がある——ということ。

 しかし、なぜそんな効果があるのかまでは、ギア・フィーネの第一人者と呼んでも差し支えない三号機の登録者、ザード・コアブロシアにもわからなかったという。


「他にも歌い手っていたんですか?」

「カネス・ヴィナティキ帝国の第一皇女、ラミレス・イオ・カネス・ヴィナティキと共和主義連合国軍宣伝部のデュレオ・ビドロが該当する——と聞いている。二人とも世界的なシンガーソングライターだったとか。……大変申し訳ないが、歌手は本当に全然わからない。俺が歌い手として恩恵を与えてもらえたのは、リリファ・ユン・ルレーンのみだ」

「歌手って他にもいたんですよね? なのにその三人だけだったんですか?」

「そうらしいな。それにデュレオ・ビドロは男性だった。今の時代は“聖女”が歌うことで結晶病が治癒されたりするから、無関係ではないと思うのだが」

「男性の“歌い手”……」


 腕を組んで首を傾げるデュラハン。

 千年前に“歌い手”と認められた歌手は三人。

 リリファ・ユン・ルレーン。

 小さな島国のお姫様。

 ラミレス・イオ・カネス・ヴィナティキ。

 アスメジスア基国と並ぶ大国カネス・ヴィナティキ帝国の第一皇女。

 ——彼女はどちらかというとアイドルみたいな存在だったらしい。

 そして唯一の男性デュレオ・ビドロ。

 共和主義連合国軍の宣伝部——広告塔というやつだ。

 出身地は不明だが、容姿は大和(タイワ)人みたいだったらしい。


「“歌い手”とギア・フィーネの情報は俺よりもやはりザードの方が詳しい。この研究塔に残されているデータも、ナルミがザードに交渉して()()()()()()()だろう」

「! ……情報の根絶を恐れた、拡散保存」

「ああ。そしてそれは間違っていなかったのだろうな。ザード……というか、ジークフリートが母艦として使っていた『エアーフリート』ならば、もっと詳細なデータも多く残っているだろう。……今はどこにあるかは、わからないが……少なくとも陸地にはなかろう」


 つまり、そのデータが揃っている『エアーフリート』というジークフリートの母艦は結晶化した海——結晶化した大地(クリステルエリア)のどこか、ということだ。

 あまりにも絶望的すぎる。

 三号機や四号機も、当然その付近。

 でも、どうなんだろうか?

 デュラハンとラウトが機体とともに生きていたことを思うと、他のギア・フィーネと登録者も生きていたりするんだろうか?

 今から探してもラウトが宣言した『約束の日』には、到底間に合わないと思うけれども。


「…………」

「デュラハン?」

「いや、なんとなくだが、ザードとアベルトは天寿をまっとうした——ような気がする」


 三号機と四号機の、登録者。

 二号機の登録者はそもそも遺伝性の病を発症しており、永く生きられない体質。

 ええと、それじゃあつまり……デュラハンとラウト以外の登録者の生存は絶望的ということか。

 千年だし、普通に考えれば当たり前のこと、なんだけど。


「四号機の登録者、アベルト・ザグレブは初めてラウトに会った時からずっとラウトを気にかけていたな。彼の心情を思うと申し訳がない。なぜ生き延びたのが俺なのか。彼ならば、俺などよりよほどラウトをわかっていただろう。彼ならば、ラウトをきっと救えただろう。今度こそ」

「デュラハン……」


 いつ、どこで、どのようにして出会ったのかわからないけれど、登録者同士には不思議な繋がりがあるのだろう。

 世界でたった五人だけの、ギア・フィーネシリーズの登録者。

 たとえ敵対国家に所属していたって、なにかしらの、一種の、絆のようなものが。

 ラウトが、本当にルオートニスを滅ぼしに来るというのなら、俺が……助けることを選択した俺が戦わねばいけないんだろうけれど……でも、ギア・フィーネとはギア・フィーネでしか戦えない。

 デュラハンに戦ってもらうしかないのだ。

 いくら千年前からの因縁があったとしても、俺はなんて……なんて無力なのだろうか。


「デュラハン、ギア・フィーネに魔法は通用するだろうか?」

「ラウトの迎撃に国を挙げて挑むつもりならばやめておけ。俺に任せてくれればいい。とはいえ、サルヴェイションの登録者になって俺は日が浅い」

「え? 千年……」

「そこが問題ではないのだ。先程の映像に『同調率』の話があっただろう?」

「あ、は、はい」


 デュラハン曰く、ギア・フィーネのエンジンからは特殊な電波のようなものが出ており、それが登録者の脳波を少しずつ変化させて同調していくのだそうだ。

 その同調の割合により、その名の通りギア・フィーネの“ギア”が上げられるようになる。


「え! ギ、ギア? ギアがあるんですか?」

「ある。俺はギア(セカンド)にも到達していない」

「っ」


 当然そのギアの上がり具合により、ギア・フィーネの強さは別物になっていく。

 同じギア・フィーネ同士でも、ギアの上がり具合で相手を圧倒することが可能となるのだ。



裏設定


ラウトはあまりにも協調性がなく、なおかつ変態に狙われやすい体質だったのでストレスが多く拒食症気味でした。

デュラハンもといディアスは当時別の軍事都市所属でしたが上司が15歳以下の少年少女が性対象と公言する変態野郎だったので、お目付役として同行し、ラウトがあまりに不健康な生活を送っていたのを気にかけて点滴(栄養剤)を打ったり、食事を(結構無理矢理)食べさせたりと世話を焼いています。

これはディアスが歳の離れた弟と妹がいて、長男力がめちゃくちゃ発揮されたためです。

ラウトは直前に親しく(一方的に懐かれていた)していた同期が戦死しており、「親しい相手を失うのはつらいから」とディアスのことも鬱陶しく思っていたのですが、彼が変態上司からもしっかり守ってくれるのでそれなりに心を開いている方でした。

その直後に五号機を持ち逃げしてきたミシアの逃走兵で、二号機の登録者の兄が寿命を迎え、死亡したことと、その死亡した実兄を二号機の登録者が死体を回収することなく海に沈めたことを許すことができず再び暴走。

幸い、二号機も同様の暴走状態でギア・フィーネ同士がぶつかり合ったため被害は少なかったですが、登録者の管理を専門部署が行うことになったためディアスは変態上司とともにベイギルートに戻ることになり二人は別れました。

次に会うことになったのは敵同士ですが、ディアスもラウトもお互いの事情はある程度知っていたので複雑な再会と別れ方をしてしまいました。


『彩瞳のギア・フィーネ〜暁〜』の方が詳しく書いていますが、同じ世界線ではないのであれが正史というわけではありません。

二号機の登録者の側に理解者がいない世界線です。

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