研究塔とデュラハンの意外な関係
俺を殴って?
しょうもないことを考えて疑ってごめんなさーい!
「では、このまま研究塔へ?」
「デュラハンは研究塔の入り方知らないと思うし、学院の前で待ち合わせの予定だ」
あの人なら研究塔に入れても大丈夫だろう。
父上と母上も研究塔に入れるようにしようかと思ったが、「行く暇がないから大丈夫」と断られてしまった。
確かに母校とはいえ、視察する場所でもないしな。
「なんだか学院に行くのが久しぶりですね」
「俺は割と毎日来てるんだけど、授業には全然出られてないんだよな……なんかもうただ寝に寮部屋使ってるみたいな」
「ヒューバート様もお忙しいんですね……」
あれ?
レナの顔が微妙に引いてる!?
な、なんで!?
「お二人とも学生なんですから、勉強はきちんとなさってください? 年末には進級試験があるのをお忘れなく!」
「わ、忘れてた!」
「ああああああっ」
パティが腰に手を当てて俺とレナに突きつけた現実。
レナは思い出した瞬間絶望に打ちひしがれて、崩れ落ちてしまった。
しかし、俺もレナのこと言えない。
いくら前世で教わった範囲もあるとはいえ、俺は前世で勉強大嫌いっ子。
今世で王子として恥ずかしくないよう……父上やレナにガッカリされないように頑張って勉強はしたけど、最近は勉強時間がほとんど取れていない。
つまり、ヤバい。
「ジェラルドも、好きな教科以外はヤバい」
パティが死んだ目で呟く。
ジェラルドは基本、天才だ。
なんでもサラッとやり遂げる。
だが、興味のないことにはとことん興味がない。
ごくりと息を呑んだのはランディである。
「というわけでランディ! 弟の勉強を見てあげてほしいの! あなた四年連続学年首席でしょう!?」
「え、あ、い、いや、だが、あいつは……」
「お願い! このままだと留年するわ!」
「ランディ、俺とレナも頼む!」
「お願いします、ランディさん!」
「え、ええ……!?」
もはや頼みの綱はランディだけだ!
パティの言う通り、ランディは入学以来首席の座から落ちたことが一度もない。
いったいいつ勉強しているのか気になるが、もはやランディに勉強を教わるしか活路が見出せないのだ。
ランディはかなり困惑していたが、顔がわずかに嬉しそうに引き攣っている。
笑顔になるのを、頑張って抑えているかのような顔だ。
「も、もちろんです。自分にお手伝いできることでしたら、喜んで!」
「ありがとうございます!」
「ありがとう、ランディ! 必ず時間を作るから!」
午前中にリストアップした貴族の皆さんに引き継ぎが終わったら、絶対に勉強時間を作らなければ!
「あ」
と、いう感じで勉強会の予定も立てつつ学院にたどり着く。
そこにはトニスのおっさんとデュラハンが立って待っていた。
門の横にある守衛室からお茶が出てきて、それを受け取っている。
「中で待っていてくださってよかったのに!」
「問題ない。うん、なかなかいい茶葉を使っているな」
「え、で、殿下ぁ!?」
俺が馬車から降りて叫ぶと、デュラハンはお茶を一口飲みながら俺に答える。
しかし、まさか俺の知り合いとは思わなかったのか、看守が顔を出して悲鳴を上げた。
な、なんて可哀想な。
「と、とにかく寒いので中へ」
「ではお邪魔しよう」
「研究塔はあちらなんですが……」
「知っている。だいぶ周りは変わったが、来たことがあるのでな」
「え?」
トニスのおっさんもお茶を飲み干してからついてくる。
学院の通路を通り、校舎の裏のさらに奥の森の中。
佇む巨大な塔。
その入り口で、俺はまずデュラハンを登録しようとしたが……。
「久しぶりだ、ノザクラ。問題なく稼働しているか?」
『お久しぶりです、ミスターロス。五十八年三ヶ月八日ぶりですね』
「研究塔入り口が流暢に喋った!?」
え? ん?
というか、五十八年三ヶ月八日ぶり?
「来たことあるって……」
「彷徨っていた頃にここ……研究塔を見つけて再起動させたのは俺だな」
「えーーーっ!?」
そういえばギギが言ってたな。
ここに最初の研究者が現れ、研究塔を再起動させた、と。
それがデュラハン!?
「そうか、ヒューバートたちがここを活用して石晶巨兵を創り上げたと思えば、無駄ではなかったのだな」
「え、あ、そ、そうですけど……」
『本日はどのようなご用件でしょうか』
「ヒューバートの研究成果を見に来た。だがまずはスキャンを頼む」
『かしこまりました。────スキャン、異常なし』
すごく使いこなしてる〜!
「デュラハンも魔法で結晶化した大地を大地に戻す研究をしてましたよね? どうして研究塔を使わなかったんですか?」
「俺はこの国の民ではないから、長く居座るのは無理だった。村の維持がある」
「あ、あぁ……」
それもそうか。
今日もミドレ公国にあった[魔力貯蔵]の魔法を使ってここまで来ている。
かなり長時間離れられるようになったと言っていたが、それでも一週間程度。
ここで長期間研究するのは不可能だろう。
「それに──」
そう言って指先を首に添える。
くっきりと亀裂が走った、デュラハンの謂れ。
「さて、では見せてもらおうか。その量産型とやらを」
「あ、は、はい! 九階です」
ストーリーそろそろ分岐なんですけど主人公の機体どうしようかな、ってなってるんですよ。
個人的にこのまま一号機にしたい(恩人が死ぬ)orライバルの因縁の四号機もエモい(恩人が死ぬ)
恩人は死ぬ。
感想欄で教えてくださ~い。
(6/30まで)