いまさら
ミヅキはヨウコ達と一緒にいる他なくなった。
ヨウコが機嫌のよい日が続いた。
クラスには気の抜けた白々とした生ぬるい空気が充満した。
あわただしくなったのは担任だった。
顔に笑みを張り付けてミヅキを呼び止めた。
「田中さん、吉沢さんと仲良かったわよね」
ミヅキはもちろんミオが心配だった。だからといってこの担任の指示で何かさせられるのは嫌だった。ミヅキにとっては担任もミオを追い詰めた一人だった。ミヅキが相談に行ったとき、ミヅキに無茶振りをしただけで何もしてくれなかった。先生なのに。大人なのに。先生が何か言えば、クラスの女子も少しは考えてくれたかもしれないのに。
それでも担任が、「先生の言うことが聞けないのか」と命令してきたら行かなきゃいけないんだろうなあと思ってうつむいていた。
「田中さん、近いうちに先生を吉沢さんの家に行ってくれるかしら」
ミオちゃんは心配だけど先生と行くのは嫌。嫌と言いたくても嫌とは言えない。言ったらいけない。先生に逆らったりしたら大変なことになる。それでも「行く」とは言えずにじっと下を向いたまま顔をあげられなかった。
「先生、ミヅキちゃんの家は吉沢さんの家とは逆方向ですよ。わたし達一緒に帰ってるんで、帰りに寄るならわたしもついていっていいですか」
担任はのけぞった。
「あんまり、にぎやかに大勢で行くのは、ね」
学校に来なくなった子の家にクラスの人気者を連れて行くのはいけないことなのだろうか。とミヅキは不思議に思った。
担任はミヅキをミオの家に同行させることをあきらめたようだった。
ヨウコが助けてくれたことにミヅキは感謝した。なぜか、ヨウコはミオのことは心配しないが、ミヅキとは友達でいてくれる。