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絵を描いてみたい
次の日、ミオは休憩時間になると自由帳を広げた。ミヅキはほっとした。
そして相変わらず横でそれを見ていた。ただ、以前のように「すごい」と声に出したりリクエストを出したりはしなかった。黙って眺めていた。
「田中さんも描いてみたら?」
黙って見られることが気づまりだったのかミオが言った。ミヅキはヘヘッと笑った。
「いいよー。わたし、下手なんだよ」
「絵なんて、誰でも描けるんだって。別に線の入ったノートでもいいんだし」
ミオは次の授業のために机の上に置いてあった国語のノートに流れ星を描いた。
「わっ、かわいい」
ミヅキは歓声をあげてしまった。
「でも、やっぱり授業のノートに描くのはダメだよね」
ミオは笑って、消しゴムで流れ星を消した。
その日の夜、ミヅキは家に母親が家計簿用に買い置きしてあった大学ノートを一冊もらった。
登場人物フルネーム 田中 ミヅキ