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俺にラブコメを仕掛ける強襲型幼馴染  作者: 一葉司
終章 悠斗と倖楓
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胸のモヤモヤ

 選挙期間に入ってから数日が経過した。

 ここのところ、倖楓とはバラバラに過ごすことが多かった。

 朝は校舎前の演説のために俺よりも早く学校へ行き、昼休みも何か話すことがあるとかで茉梨奈さんのところへ。そして放課後も、もちろん茉梨奈さんのところへ行っている。

 相変わらず夕食は一緒に取っているので、全く一緒にいる時間が無いわけではないが、翌朝が早いので、倖楓が自分の部屋に戻るのも早い。


 それが連日続き、俺の心は変にモヤモヤとしていた。

 苛立ちに似たこの不快な感覚が何なのかはよくわかっていないが、思い当たる理由が無いわけではない。


 昼休みや放課後に倖楓が手伝いへ行く時、決まって迎えに来ている男子生徒がいた。

 眼鏡をかけた2年生の先輩で、倖楓と同じく茉梨奈さんを手伝っているらしい。


 そして、今日も放課後を迎える。

 一応、今日で選挙期間は最終日だ。

 週明けの月曜日が生徒会選挙当日ということになっている。

 倖楓の手伝いも、今日で終わりだ。


「それじゃあ私、行くね」


 一言だけ俺に伝えてから行こうとする倖楓。

 その先には、やはり先輩が立っている。


「ゆーくん?」


 不意に、倖楓の少し驚いたような声で呼ばれた。

 気が付くと、倖楓の手を俺がつかんでいた。

 完全に無意識の行動に、自分でも驚く。


「あ、えっと…」


 何か用事があったわけでもないので、引き留めた理由は出てこない。

 だから、誤魔化すのにも大した言い訳は出てこなかった。


「ほら、今日は俺だけバイトだけど、夕飯は一緒に食べれるかなって」


 倖楓は数秒無反応だったが、すぐに満面の笑みに変わる。


「うん、もちろん!バイトが終わるの、待ってるね」

「わかった」


 ゆっくりと倖楓の手を離す。


「じゃあ、後でね」


 そう言って教室を出ようとする倖楓の背を、俺は見送ることしか出来ない。


 倖楓と合流した先輩が、チラッと俺の目を見た。

 特に表情を変えないその先輩が、何を思って俺のことを見たのか、眼鏡の奥にある瞳からは読み取ることは出来ない。

 とりあえず会釈をしておくと、相手も会釈を返した。


 すると、すぐに二人で歩いて行ってしまった。

 また不快な感覚が身体に巡る。

 俺はそれを振り払うように頭を振って、バイトへ向かうために教室を後にした。




 バイト中、あの妙な不快感を意識することはなかった。

 やはり手を動かすと気が紛れるのだろう。


 ラストオーダーの1時間前になると入ってくるお客さんもおらず、やれる範囲で閉店の準備を始めた。


「悠斗くん」

「はい」


 海晴(みはる)さんに呼ばれて、俺は振り返る。


「疲れてない?平気?」


 突然心配されてしまった。

 俺は理由がわからず、少し困惑する。


「えっと、大丈夫ですけど?」

「そう?なんだか今日は、心ここにあらずな感じだったから」

「そうですか…?」

「ミスとかはしてないんだけど、なんだか反応も鈍かったし…」

「…すみません」

「いやいや、責めてるわけじゃなんだよ?ただ、心配になっただけで」


 たしかに今日のバイトは気が付いたら時間が経ってる感覚ではあったのだが、そんな風に見えていたとは思わなかった。


「ありがとうございます。でも、本当に疲れてるとかではないです」

「それじゃあ、倖楓ちゃんと何かあった?」

「………」

「図星なんだ」


 海晴さんは「やっぱり」と言いたげに苦笑する。

 きっと、また“女の勘”というやつだろう。もう驚きはしない。


「何でも相談に乗るよ?伊達に大人やってないからね!」


 この人がドヤ顔をしても嫌な感じがしないのは、最早才能だと思う。


 きっと、普段の俺だったら「何でもないですから」とでも言って誤魔化しただろう。

 だが、今の俺には取り繕うだけの気力が無かった。


「それじゃあ、聞いて貰っても良いですか?」

「え!?」


 俺が素直にお願いしたことが、かなり意外だったのだろう。

 不本意ではあるが、仕方が無いと思う。


「ダメですか?」

「そんなことない!聞かせて!」


 海晴さんはとても張り切った様子で胸を叩く。


 明希と槙野に続き、今度は海晴さんに相談することになった。

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