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俺にラブコメを仕掛ける強襲型幼馴染  作者: 一葉司
終章 悠斗と倖楓
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校内の変化

「つ、着いたな…」

「私、もう歩けない…」


 現在時刻は8時25分。

 予鈴が鳴る5分前になんとか教室に到着した俺と倖楓は、肩を大きく上下させながら自分の机に覆い被さるよう倒れ込んだ。


 俺はともかく、倖楓が学校でこんな姿を見せたことは無かった。

 そのためか、クラスメイトから物珍しげな視線を多く集めていた。


 そんな中でもいつものトーンで声をかけてきたのは槙野(まきの)だった。


「2人してどうしたのよ?」


 パックのイチゴミルクを片手に、少し呆れた目をしている。


「俺が…いや、サチか?とりあえず寝坊した」

「ゆーくんがいつまでも起きないのが悪いもん」

「あの状況で寝たサチだって悪いだろ」

「だって、なんか寝心地良かったから…」


 普段ならもう少しヒートアップしていたであろう言い合いも、あまりの疲労感に覇気が無い。


「あー、はいはい。2人が仲良しなことはよくわかったから」


 俺と倖楓のぐだぐだな会話に対してか、寝坊の方に対してなのかはわからなかったが、槙野は声まで呆れた様子だった。

 今の俺はそれに文句を言う気力も無いので、甘んじて受け入れる。


 すると、少し離れたところから明希(はるき)の声が聞こえてきた。


「お、悠斗(ゆうと)来たんだな」


 机に突っ伏していた顔を上げると、明希が槙野の隣に立っていた。

 こっちはパックのカフェオレを飲んでいる。

 槙野と一緒に買ったのかは知らないが、仲のよろしいことで何よりだ。


 花火大会の後も明希と槙野の付き合いは順調のようだ。

 二学期が始まってからの様子で2人が付き合い始めたことが周囲にも伝わり、一時はショックを受けた女子や、密かに槙野を狙っていた男子の悲鳴に似た騒ぎが起こっていたが、一先ずは落ち着いている。

 部活の方も今のところ問題ないらしい。

 少なくともクラス内では初のカップル誕生に祝福の声が多かった。


 ようやく少し息が整ってきた俺は、椅子の背にもたれかかって明希に挨拶を返す。


「おはよう、明希」

「おう、おはよ。…なんか、お前も遊佐さんも朝からやつれ過ぎじゃないか?」

「まあ、いろいろあったんだよ」


 もう一度説明するにはもう少し気力が回復しないと出来そうにない。

 しかし、その手間は槙野に省かれる。


「2人揃って寝坊したんだって」

「悠斗はまだわかるけど、遊佐さんもなんて意外だな」

「仲良く一緒に寝てたらしいわよ」

「なんだそれ、遅刻すれば良かったのに」


 理由を聞いた途端、明希まで呆れたようだった。

 なんとも酷い言われようである。


 ここまで明希と槙野に好き放題言われているのだが、さっきから倖楓が無反応だ。

 様子が気になった俺は後ろの席へ振り返った。

 そこには突っ伏したまま微動にしない倖楓がいる。


 二学期に入ってまた席替えをしたが、結果はご覧の通り。

 席の位置は変わったが、俺と倖楓の位置関係は前後を入れ替えただけだ。

 さすがに俺も何か陰謀を感じたが、榊先生も驚いていたし、俺の

 後にくじを引いた倖楓がガッツポーズで喜んでいるのを生暖かい目で見守るクラスメイトの様子に苦笑いしか出来なかった。


 周りの明希と槙野に対する扱いとは別に、変わったことがもう一つあった。


 それは、俺と倖楓のことだ。

 どうやら花火大会で2人一緒のところを度々目撃されていたらしく、その様子も相まって付き合っている、ないしそれに近しい関係だという話が広まっていた。

 新学期早々、学年問わず確認しにきた男子の対応と噂好きの女子からの質問攻めに対応するので大変だった。

 特に男子は圧が強く、俺から倖楓との関係を否定する言葉を引き出そうとしてきていた。

 だが、それを見かねた倖楓がやってきて――――、


「私が悠斗と付き合ってても、あなた方に何も関係ないですよね?」


 と、冷たい笑みと声音で男子達をバッサリと一刀両断した。

 今まで俺の名前を呼び捨てにしたことなんて記憶になかったので、そっちに驚いてしまった。

 その後は女子達が倖楓に質問攻めを始めたのだが、「さっきの言い方だと、本当に2人は付き合ってるってこと?」と聞かれた倖楓が「どうなのかな?」と俺に振ってきた時は頭を抱えた。

 結局、俺はその場で女子達の質問に答えることはせず、今では誰か尋ねにくることも無くなった。

 それに合わせてか、最近は俺と倖楓が一緒にいたり話したりしていると生暖かい視線を感じることが増えたように思う。

 質問攻めに遭うよりは間違いなくマシなのだが、これが良かったのかと聞かれると微妙な心持ちだ。




「おーい。サチ、生きてる?」

「…死んじゃう。扇いで」

「はいはい」


 暦の上では秋だが、まだまだ残暑が厳しい。

 俺もまだ汗が完全には引いていないのだが、下敷きを取り出して倖楓を頭から扇ぎ始めた。


「これでいい?」

「…いい、もっとー」

「はいはい」


 この様子を見て肩をすくめた明希と槙野は自分の席へ戻っていった。


 その後、予鈴が鳴るまで俺は倖楓を扇ぎ続けたのだった。

次回更新は金曜日の予定です。

時間は未定ですが、恐らく20時になると思います。

明日には告知すると思いますので、活動報告を確認していただければありがたいです。

よろしくお願いします。

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