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俺にラブコメを仕掛ける強襲型幼馴染  作者: 一葉司
第4.5章 夏の終わり
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予定の変更

 夏休み最後の日曜日であり、花火大会当日の朝を迎えた。

 と言っても、俺達はいつもと変わらずに朝食を一緒に食べていた。


「ゆーくん」

「なに?」

「食べ終わって片付けも済んだら、私1回部屋に戻るね」

「わかった。15時半くらいに下で待ち合わせでいい?」


 花火の打ち上げが19時開始なので、移動時間などを加味して16時の電車に乗れば良いだろう、という話になっていた。


「それなんだけど、出かける時間を早くしたいなって思って」

「まあ、いいけど。何時くらい?」


 何か済ませたい用事か、行きたい場所でもあるだろうか?

 どちらにしても、時間にこだわりがあるわけでもないので、断る理由が無かった。


「…10時くらい」

「早っ!?」


 今が8時くらいなので、食べ終えて片付けたらすぐに家を出ることになるだろう。

 いくらこだわってないとはいえ、あまりにも予想外の時間を提案されて驚いてしまった。


「だめ…?」


 倖楓本人も、さすがに自分の提案が急だと思っているのだろう。少し申し訳なさそうな顔をしている。


「花火の場所取りしたいとか?」

「ううん。見る場所は正直どこでも」

「じゃあ、何するの?」

「えっとー…」


 俺の疑問に、倖楓は思案顔で数秒だけ答えに迷った様子だった。


「何も聞かずに付いて来てほしいの!」

「えー…」


 怪しいなんてもんじゃなく、100%何かあるやつだ…。

 今まで何度、倖楓の作戦にハメられたことか。


「お願い!」


 しかし、頼み込んでくる倖楓の顔はいつものような悪戯っぽさはなく、純粋にお願いしてきているのが伝わってきた。

 俺も、もっと倖楓を信頼すべきなんだろうし、そうしたいと思えた。


「いいよ」


 返事をするのに、自分で思った以上に迷わなかった。

 しかし、俺のスムーズな返答とは反対に、倖楓は目をパチクリさせてフリーズしていた。

 そして、数秒経ってからようやく正常に動き出す。


「えっ…?…いいの?」


 正常に動き出したとは言っても、まだ状況は飲み込めていなかったらしい。


「いいって言っただろ?」

「ほんとに…?」


 倖楓はまだ信じられないと言った顔をしている。

 こうも驚かれると、逆に心外だ。


「…やっぱり止めとくか」

「あー!ダメです!1回いいって言ったら覆せません!」

「はいはい」


 元々、覆すつもりもなかったので、俺は苦笑いする。


「ゆーくん」


 倖楓が改めて俺の名前を呼ぶ。


「ん?」


 それに合わせるように、俺も改めて倖楓の顔を見た。


「…ありがとう!」


 倖楓は照れたように嬉しそうな顔をしていた。

 それが俺にはとても眩しくて、すぐに目を逸らした。


「べつに、大したことしてないし…」

「もうっ、こういう時は“どういたしまして”でいいんだよ?」

「………」

「ほーら、さんはいっ」

「…どういたしまして」

「うん!」


 この後の俺は、倖楓の顔をまともに見れなくなってしまって食事のペースが上がり、すぐに朝食を食べ終わった。

 ほどなくして倖楓も食べ終わり、片づけをした後に各々出かける準備のために一端別れた。






 約束の10時を迎え、俺はマンションの出入り口の近くで待っていた。

 まだ待ち始めて1分も経っていないのに、すでに暑さにうんざりし始めてしまった。


「今日もあっついなー」


 小さく呟いたのとほぼ同時に、待ち人がやってきた。


「ごめんね、お待たせー」


 謝りつつ出てきた倖楓の格好は、Tシャツにショートパンツと、軽装だった。


「平気だよ。…で、どこ向かうの?」


 疑っているわけではないが、行き先が気になるのは仕方がない。


「とりあえず駅に行って、電車に乗るよ!」

「わかった」


 そこは当初の予定と変わらないのか。


 まっすぐに駅へ向かい、改札の中へ。

 電車に乗って移動し、駅に着いてからバスでさらに移動する。

 そして、倖楓はようやく立ち止まった。


「目的地到着です!」

「まあ、乗った電車が花火大会とは()()()な時点で、なんとなくそんな気がしてたけどさ…」


 ―――そこは、ついこの間まで戻っていた、俺達の実家の前だった。

次回は火曜日に更新予定です、よろしくお願いします。

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