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カウント.1

 3人で1年1組の教室到着後、まずは黒板に張り出されている自分の席を確認する。


 席は名字を基準とした出席番号順で、俺の席は窓際2列目の後ろから2番目という良席。どうせすぐ席替えになると思うけど。


 俺の前の席に槙野、右側の席に明希が座って、つくづく3人集まる流れなのだなと笑ってしまう。




 入学式の会場である体育館に向かうための声がかかるまで2人と会話して時間をつぶしていると、女性教員がやってきた。


「体育館に移動するために廊下に出席番号順の2列で並んでー、貴重品は持って行ってね」


 やっとか。と思いながら俺たちは廊下に出て整列し体育館に向かう。


 体育館の入り口に続く渡り廊下で合図があるまで待機になった。教員の式中の注意事項なんかを聞きながら傍にある桜の樹を眺めていると、隣の槙野が急に声を出す。


「今通った子、新入生代表かな。すごく綺麗だった」

「全然見てなかった」

「教室であんたの左隣の席座ってなかったでしょ。その子みたいよ」

「へぇ、よく知ってるな」

「教室で話してる人がいたのよ、たぶん早い時間に来た人は会ったんじゃない?」

「なるほど」


 新入生代表は入学式で答辞を読むらしい。今までいなかったのは式の準備のためだろう。入試でトップを取ったら大勢の前で堅苦しい文章を読まされることになるとは同情したくなる。


「水本、今失礼なこと考えてるでしょ」

「まさか」


 槙野レーダー恐るべし。このレーダーに引っかからないようにまた1年頑張らないといけない。




 新入生代表は列の先頭に並んだらしい。自分の位置からだとよく見えなかったが、答辞の時に見えるしいいかと、俺は興味を後回しにした。


 扉の向こうから拍手が聞こえ始めた。いよいよ入場らしい。


 扉が開いて列が進む。自分だけに視線が集まっているわけではないとわかっていても入場は緊張する。たぶん、見慣れない体育館の景色の所為もあるのだろう。


 並べられた席へ向かい、自分の座る席の前で待機。拍手が止むのを待って、司会を務める男性教員のマイク越しの掛け声に合わせ座る。


『着席』




 退屈な入学式の時間の始まりだ。






 なぜこんなにも式典や集会というのは眠くなるのか。今日は朝から眠いのも相まってすでに目は閉じかけ、頭が揺れ始めている。


 突然、左の太ももに痛みが走り思わず声が出る。


「い゛っ」


 大きな声ではなかったので周りに不審に思われることはなかったが、左隣にいる犯人の目が怖い。槙野だ。ごめんなさい。


 さすがにもう抓られたくないので今日この後の事を考えて意識を保つことにする。


(今日学校終わったらどうしようか。明希と香菜は2人とも親が見に来てるって言ってたし)


 2人の親御さんとは面識があって何度かお世話になっている。もしかしたら一緒に食事にと誘われるかもしれないけれど、そのつもりでいるのは図々しいと思うので選択肢に入れない。


(まあ、行き当たりばったりでいいか)


 結局、大した結論も出さずに方針を決める。



『続いては新入生答辞』



 司会のプログラムを進行する声で、意識が入学式に引き戻される。


(そういえば、新入生代表の顔見なかったな)


 前列に座っているであろう、新入生代表の後ろ姿を探す。


 ―――――その瞬間、心臓が止まるかと思った。実際、呼吸をする事を忘れてしまった。


(いや、まさか。でも―――)


 後姿だけでも感じている衝撃と疑惑。司会がその人物の名前を言うことで晴らす。


『新入生代表、遊佐倖楓(ゆさ さちか)


「はい」


 後ろ姿のその人物は、よく通る鈴の音のようなその声で返事をして檀上に上がる。背中まで伸びた艶のある黒髪が1歩1歩進む度に揺れる。周囲の生徒はその容姿と佇まいを見て小声で感想を言い合っている。


「ほら、綺麗な子でしょ?」


「水本…?」


 隣で槙野が何か言っていたが、全く入ってこなかった。




 ただ彼女の声だけが頭に響いていた。




 俺の悪夢の理由である幼馴染、―――――遊佐倖楓が再び目の前に現れた。

プロローグは以上となります。

次回から本編です、よろしくお願いします。

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