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カウント.2

 まだ眠気が取りきれない俺の目に、朝の日差しが刺さる。


 日光に目を細めながら、まだ履き慣れないローファーでまだ慣れない駅までの道を歩く。


 普段ならイヤホンで音楽を聴きながら歩くところを、初日くらい周りの音を聴きながら歩こうかと考えてしまうなんて、浮かれているのかもしれない。


 学校の最寄り駅周辺に住んでいる俺がなぜ駅に向かって歩いているのかというと、中学時代からの友人2人と待ち合わせをしているからだ。2人は実家から電車通学。それに合わせて学校の最寄り駅である雛ノ川駅前に集合ということになっている。


 マンションからそう時間はかからず、待ち合わせ場所である雛ノ川駅前に着いた。


 改札から出てくるのがわかりやすく、待機していても邪魔にならない場所で待つことにした。スマホを取り出して、メッセージアプリで待ち合わせ場所に到着したことを伝える。


『おはよ。改札出たら分かるとこにいるからホーム着いたら教えて』


 アプリを閉じようとすると既読の表示が付いたので、そのまま返信を待つ。


『おっす。27分に到着予定だからあんまり待たないと思うぞー』


 まだ車内であるだろうに返信が来ると言う事は、意外と朝のラッシュにしては余裕があるのかもしれない。



 時計を見ると今は22分だったので、たしかにすぐ来るなと納得した。


『了解』


 さすがに暇だし音楽でも聴くことにする。鞄から音楽プレイヤーを出してイヤホンをつける。プレイリストを選んで、一息吐くのと同時に目を瞑り壁に背を預けて音楽に集中する。






 目を瞑って音楽を聴いていたからか、いつのまにか時間が来ていたのだろう。俺のおでこに軽い衝撃が来た。驚いてイヤホンを外して目を開けると、そこに見慣れた男女2人が呆れた顔で立っていた。



「お前なぁ、メッセ送ったのついさっきなんだから寝るなよな!」

「ほんと、あんた高校生になったっていうのにマイペースなの変わらないんだから」



 たしかに目を瞑った俺が悪いのだが、言いたい放題である。


 俺は謝罪と朝の挨拶を一気にすませて自分が責められる流れを変えようとする。


「悪かったよ、なんか眠気が取りきれなくてさ。おはよ、明希(はるき)槙野(まきの)


 『久木明希』と『槙野香菜』は中学からの友人だ。


 明希は誰もが認めるイケメン。小学生の頃から今までバスケをしていて、高校1年生としては高いであろう177センチの身長と細身ながらも付いている筋肉、そして学力も普通以上にある。それなのに嫌味なところが無く、情に熱いところもあり信頼できる人間という非の打ちどころがないハイスペック男子だ。正直、ここまで来ると自分と比べるという行為自体に意味を感じなくなるので早々にやめた。


 槙野は明希の幼馴染。吊り目が印象的な顔をしている。少し強気なところがあり発せられる言葉に棘があることもあるが根はやさしく気配りも出来て、快活さを感じさせる笑顔で中学時代は人気があった。彼女も小学生からバスケをしていて、同じスクールに通っていたらしい。その頃から今日まで一緒ということだ。仲のよろしいことで何より。


「おう、悠斗。たしかにすげー不機嫌そうな顔してるな」

「おはよう、水本。不機嫌そうな顔はいつもじゃない?」


 また言いたい放題。幼馴染だとこういうところも息が合うから困る。


「いつもは余計だ。そろそろ行こう」


 分が悪いので逃げるように歩きはじめる。


 歩き始めてすぐ明希が新しい話題を振ってくる。


「ところで悠斗、香菜を見て何か気付かないか?」

「ん?あー、そういえば髪が茶色っぽいな。高校デビューってやつか?」


 中学の頃は髪を染めることは禁止されていたが、これから通う彩天高校ではそのあたりの校則が緩い。金髪などの派手な色でなければ生活指導の教員が指摘しない限り許されるらしい。


「高校デビューって!まるであたしが根暗だったみたいじゃない!」


 怒られた。


「悪かったよ!じゃあ垢ぬけたって言えばいい?似合ってると思うよ」


 なぜか今日は謝ってばっかりだ。


「ははっ、俺も似合ってると思うぞ」

「そう?…ありがとう」


 急にしおらしくなった。朝からほんとに仲がよろしいことでなにより。






 高校入学初日としてはなんてことない会話を続けていると、校舎が視界に入ってきた。


「お!見えて来たな」

「あ、ほんとね。クラス分けがどうなってるか不安」

「たしかに、平穏に過ごせるクラスだといいんだけどな」


 やっと入学初日らしい会話をしながら、クラス分け発表のされている昇降口へと向う。



「「「あ」」」



 クラス一覧を見て3人同時に声が出た。


「まさか3人とも1組だとは思わなかったな」

「またあんた達の世話を焼かないといかないわけね」

「言うほど焼いてこなかっただろ。明希目当ての女子で休み時間は騒がしそうだ」


 槙野の鋭い視線が刺さる。悪かった。


「さすがに休み時間の度に避難しなきゃいけないのは困るな」


 明希が苦笑気味に言う。




「とりあえずまた1年よろしく、明希、槙野」

「だなー」

「よろしく」


 なんだかんだ、また一緒で俺たち3人は嬉しかったのだと思う。


 3人揃って1年1組の教室に向かった。

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