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俺にラブコメを仕掛ける強襲型幼馴染  作者: 一葉司
第2章 新たな日常と変わらないもの
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ルピナス(3)

お待たせしました、後編です。

 俺が倖楓に出すためのお冷とおしぼりの準備を始めると姉ちゃんが話しかけてきた。


「さっちゃん来たねー」

「どうせ場所を教えたの姉ちゃんでしょ」

「バレたか」

「他に誰がいるんだよ…」

「だって昨日寝かせてくれる条件に場所を教えるのが入ってたんだもん」


 それは仕方ないと思わず言いそうになったが、それを許したら何でも許容しないといけなくなる気がしたので絶対に言わない。


「とりあえず行ってくる」

「しっかりねー」


 姉ちゃんの応援を背に再び倖楓のテーブルへ向かう。


「お冷お持ちしました」

「ありがとうございます」

「ご注文お決まりでしたらお伺いします」

「ゆーくんを1つ、テイクアウトでも可です」

「当店でそのような商品は取り扱っておりませんので、お客様はお店を間違われたのかもしれませんね。お帰りはあちらからどうぞ」

「冗談だよ冗談!」


 店員で遊ぶな。クレーマーじゃなくて悪質クレーマーだったか。今度こそ注文をする気なのだろう、メニューを見て真剣に悩んでいた。


「まだでしたら、お決まりになりましたらまたお呼び下さい」

「あ、待って!店員さんのおススメは?」


 ちゃんとお客さんをし始めたので、こちらもちゃんと接客をしなければならないだろう。とはいえ、俺もこのお店の料理をほとんど食べたことがないので、無責任におススメできない。なので自然と選択肢が2つしかなくなった。


「ビーフシチューかピカタが個人的にはおススメです」

「それじゃあピカタで」


 あまり迷わず選んだということは、倖楓はピカタを知っていたのだろうか。本当に料理に詳しくなったのだなと感心する。


 俺はテーブルを後にし、そのまま洋介さんにオーダーを伝えて配膳するまで待機する。


 すごく視線を感じる。主に1人から。最初はメニューに顔を隠しながらだったのが、もうすでにガン見している。すごく居心地が悪い。すると、さっきまで裏に入っていた海晴さんが声をかけてきた。


「悠斗くんお疲れ様。もしかしてあのお客さんが悠斗くんの幼馴染?」

「まあ、そうですね」


 なんでわかるんだ。女の勘というやつだろうか。


「よし!悠斗くんの接客はこれでおしまい!裏で着替えてらっしゃい!」

「え?でもまだお客さんいますし」

「今日はいいよ、明日香ちゃんもいるし。その代わり、あの子の席で晩御飯を食べること。それが閉店の片付けが始まるまでのお仕事です」

「はい?それ仕事じゃ…」

「ほら、行った行ったー!」


 反論しようとしたら背中を押されて裏に追いやられてしまった。これでまた戻ったら怒られそうなので大人しく従うことにする。


 着替えてから表に戻ると、倖楓と目があった。私服に戻ったのを見て不思議そうな顔をしている。自分は今からあの席に行くのかと考えたら足が止まってしまった。すぐ近くにいる海晴さんを見ると倖楓のいるテーブルを勢いよく指さしてきた。「早く行け」ということらしい。


 俺がテーブルに近づくと倖楓が戸惑ったように慌てている。その様子に思わず不安になって俺は恐る恐る声をかける。


「あー、今日は接客もうしなくていいってなったんだけど、夕飯食べてけって言われてさ」

「うん?」

「その、このテーブルで食べろって言われて。サチが嫌じゃなかったらだけど…」

「ほんと!?嬉しい!もちろん良いよ!」


 1人で食事というのもつまらなかったのだろう、嬉しそうだ。その言葉を聞いた俺は、倖楓の向かいの席に座る。


「ウェイターさんの格好、似合ってたよ!」

「まあ、似合ってなかったらお客さん減るかもしれないし良かったよ」

「一緒に写真取ればよかったね」

「だからそういうサービスはしてないっての」

「えー、でもいつか絶対に撮るからね」


 すごく嫌な宣告をされた。これは今後も食べに来そうだなと思ってため息が出る。すると姉ちゃんがやってきた。


「明日香お姉ちゃん、ウェイトレス姿かわいい!」

「いらっしゃい、さっちゃん。ありがとう!ところで悠斗、注文してないでしょ。何にする?」

「あー、ビーフシチューで」

「あんたそれ好きね」

「まあ美味しかったし」


 実際美味しいのだが、今回選んだのはあまり時間がかからないメニューを考えて選んだ結果だ。ビーフシチューならすでに鍋に作られているので他に比べて厨房の負担も少ないかと考えた。姉ちゃんが席から離れると倖楓が俺に話しかけてきた。


「ねぇ、ゆーくん」

「ん?」

「もう1人の店員さんとは仲良しなの?」

「あー、海晴さんな。仲良しってわけじゃないよ、べつに悪いわけでもないけど」


 俺がそう言うと倖楓が不機嫌な顔をし始めた。一体どうしたのか。


「名前で呼んでるんだ」

「そりゃ名字で呼んだら旦那さんと被ってややこしいからね」

「旦那さん!?」

「そうだよ?この店は洋介さんって人と夫婦でやってるんだよ」

「え、でもあの人高校生じゃ…」

「いや、普通に20代半ばだよ。気持ちはわかるけど」

「うそぉ!」


 倖楓も海晴さんの若さに惑わされたようだ。そんな会話をしていると後ろから声がかかる。


「他人の年齢で盛り上がってるのはどこの誰かなー?」


 驚いて振り返ると料理を運んできた海晴さんがすごい顔で見ていた。さすがに失礼なことをしたと自覚しているので素直に謝罪する。


「す、すみません。こいつが海晴さんを高校生と勘違いしたもので…」

「ちょっとゆーくん、私だけのせいにしないでよ!あの、ごめんなさい!」


 2人で慌てていると、料理をテーブルに置いた海晴さんが堪え切れないように笑い出した。


「ふふふっ、嘘だよ!若く見られて怒る人もなかなかいないと思うよ。ありがとう、店主の妻の甲斐海晴です」

「あ、ゆーく…。じゃなかった。悠斗くんの幼馴染の遊佐倖楓です」

「ゆーくんって呼んでるの?素敵!私の前でもそう呼んでいいからね!」

「ほんとですか?ありがとうございます甲斐さん」

「悠斗くんも言ってたけど、私のことは名前で呼んで!その代わりではないけど私も倖楓ちゃんって呼んでいい?」

「はい!それじゃあ私は海晴さんと呼ばせてもらいます!」

「うん、よろしくね倖楓ちゃん!」


 なんか話がどんどん進んでいる。というか勝手に俺をゆーくんと呼べるテリトリーを増やさないでほしい。とはいえ2人が仲良くなっている光景を見て悪い気はしなかった。


 気付いた時には周りのお客さんはみんな帰っていて、テーブルには俺と倖楓しか残ってなかった。料理はもう食べ終わっているが海晴さんと倖楓に姉ちゃんを加えたガールズトークが展開されていて盛り上がっている。すると厨房から洋介さんが出てきたので、俺は席を立って表のプレートを返すか確認をする。


「洋介さん、閉めますか?」

「あぁ、お願いできるかな?悪いね、友達来てたのに海晴が話し込んでて」

「気にしないでください、どうせ普段嫌ってほど話しかけてくるので」


 俺がそう言うと洋介さんが、かわいそうなものを見る目で俺の肩に手を置く。


「悠斗君。君も苦労してるんだな…」

「え?ま、まぁそうかもしれないです」


 すごく深刻そうに心配されて戸惑ってしまった。俺はとりあえず表のプレートを返しに行き、そのまま他の片付けもやり始める。片付けていると女性陣の賑やかな声が収まってきた。テーブルに目をやると倖楓がそろそろ帰るらしい。すると倖楓が俺に声をかけてきた。


「ゆーくん、お会計してもらっていい?」

「あぁ、いいよ」


 そういえばすっかり忘れていた。自然と海晴さんたちと喋っているからお客さん感が無くなっていた。俺はレジで伝票を打っているとあることを思ったので倖楓に言う。


「これ俺が払っとくよ。最近の夕飯のお礼したかったし」

「え、でも悪いよ」

「いいんだよ。俺が料理でお返しできることなんて、こういうことしかないんだから」

「そう…?」


 本心なんだけど倖楓はまだ申し訳なさそうだ。どうしたものかと思ってると海晴さんが助け舟を出してくれた。


「倖楓ちゃん!こういうのは素直に受け取ってあげるのがいいんだよ?」

「そうですね…。わかりました!それじゃあ、ゆーくんにご馳走になります!」

「うんうん、それでよし!それじゃあ悠斗くん、倖楓ちゃんを送って来てね」

「え!?悪いですよ!それに目の前ですし…」

「さっちゃん、それも素直に受け入れるところだよ?」

「俺は何も言ってないけどね。でもまあ、その方がいいかな。それこそ目の前だし、すぐ行って帰って来れるよ」

「…それなら、ゆーくん送ってくれる?」

「ん、わかった」

「ありがとう。明日香お姉ちゃん、海晴さん、今日はありがとうございました!」

「またね、さっちゃん。ゴールデンウィークかお盆にはまた会おうね」

「倖楓ちゃん、これからよろしくね」

「はい!」


「じゃあ、行くか」

「うん」


 店を出た俺と倖楓は2人でマンションに向かい、すぐにエントランスまで着いた。


「ここで大丈夫。今日はご馳走様でした。またすぐに行くからね!」

「いや、毎回は俺も出せないからな?」

「その言い方だと、たまにならいいってこと?」

「まあ、そうかな…」

「ふふっ、それじゃあ私もいっぱい晩御飯作りに行ってあげるね!」

「いやそれも毎回じゃなくていいからな?」

「さ、約束も出来たことだし、ゆーくんもそろそろ戻らないと」

「今ので約束が成立したって考えるのはサチくらいだよ。まあいいや…。じゃあ戻るよ、おやすみサチ」

「うん、おやすみゆーくん」


 俺は倖楓を見送ってから、店に戻ってすぐに閉店作業を終わらせた。


「今日はお疲れ様!悠斗くんはまた明日!明日香ちゃんはまたね!」

「2人ともお疲れ様。悠斗君は明日もよろしくね。明日香ちゃん、いつでも食べに来てね」

「はい!もちろん!お2人に会いに来ます!」

「明日もよろしくお願いします」


 俺と姉ちゃんは甲斐夫妻に見送られて帰る。姉ちゃんはこのまま駅へ向かって電車で帰るので俺は送っていくことにした。




 改札に着くまではあっという間だった。俺は別れの挨拶をする。


「またね、姉ちゃん。気を付けて」

「うん、悠斗もね。あと、明日のバイトも頑張ってねー」


 やけに楽しそうに応援するので意味がわからなかった。わけがわからないまま、姉ちゃんが人混みの中に消えて行った。




 翌日、俺が店に着いてドアを開けると昨晩の姉ちゃんの応援の意味を理解した。まだ準備中のはずの店内にいたのは洋介さんと海晴さん、それから()()()()()()()()()()()()()()1()()


「なんサチがいるんだよ!?」


 思わず大声が出てしまった。すると海晴さんが自分で自分の頭を小突いて――――


「雇っちゃった♪」

「雇われちゃった♪」


 続いて言った倖楓も海晴さんと同じポーズをしていた。洋介さんは額に手をあてて、天を仰いでいる。俺も同じ気持ちですよ…。


 この時、気が付いた。海晴さん誰かに似てると思ってたけど、倖楓だったかと。




 俺のバイト先に、遊佐倖楓が同僚として強襲してきた。

初のパートが分かれた更新でしたが、どうでしょうか?


明日の10時更新はありません。(3連続更新したのでお許しを)

22時の更新はある予定なのでそちらを楽しみにしてもらえればと思います。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 外堀が埋まって行きますね にやにや
[良い点] さっちゃん可愛いけど、身近にいたらイラッ★ってしそうw 可愛いけど。 [気になる点] 閉店間際のそこそこ遅い時間に倖楓を一人で帰してるけど、同じ場所に帰るのに送っていかないの?と思いました…
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