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教室に着くと約束どうり、入学してすぐのテストが始まる。
……の前に、一つ問題が発生した。
私のクラス内の席は一番右側の列の一番前。
右側には人がいないので、必然的に左側の席の人こと、隣の席の人と喋ることが多くなる。
ここまでは別に問題は無いのだが、その隣の席の人が問題だった。
私の隣の席の人はなんと、先程講堂で注目されていた二人のうちの一人で、この国の王太子殿下、レオン・ムル・アルティス殿下だったのだ。
だからあんなに注目されていたわけだと心の中で納得した。
そう、あくまで心の中で。
堂々と「だからか〜!」などと本人を目の前にして言える勇気は私には無い。
アルティス殿下は黒髪と金髪の二人のうちの金髪のほうで、遠くで見てもとても美丈夫だが、近くで見るともっと美しく見える。
何より目が綺麗だ。
王族のみ持つことを許される緑色の瞳。
アルティス殿下の瞳は濃い緑色で、金色の髪とよく合っていた。
まるで一つの芸樹作品のような美しさに思わず見惚れてしまい、授業に集中出来そうにない……という訳ではない。
アルティス殿下は王族で、時期国王候補だ。
そして美男子。
頭もよく、社交的。
そんな存在を貴族のお嬢様方が放っておく訳が無い。
むしろ気に入ってもらおうと必死になるだろう。
皆して権力に目がない。
そのため教室に入った瞬間から殿下の周りには、たくさんの女の子がいて、私の席が殿下の隣だとわかった瞬間に物凄い顔で睨まれた。
貴族のお嬢様怖い……。
私は無害だ、何もしないぞ。
お陰様で、テストが始まる前だというのに呼び出されては文句を言われ続けるというとても面倒くさい事になっているのだ。
全く持って迷惑な話だ。
私のことは空気だとでも思ってほしい。
私は殿下に気に入られようとはしない、本当に。
権力には興味がない。
それよりも立派な魔導師にならなければいけないのだから、色恋ごとにうつつを抜かしている暇など無いのだ。
「ちょっと!」
対して、アルティス殿下はとても気さくな方で平民の私にも変わらず接してくれる貴重な存在だ。
貴族の多いこの学園では珍しく、やはり王族の格の違いを見せてもらった感じ。
挨拶されてあたふたしていた私を笑って流してくれたのだ、凄いお方だ。
私だったら冷たい視線を浴びせていたことだろう。(周りのお嬢様方がそうだった)
「ちょっと!聞いているの!?」
おっと忘れてた……。
テストが始まる前に発生した問題。
先程も言ったと思うがそう、私は今貴族のお嬢様方に囲まれているのだ。
殿下の隣の席が平民の私だったことに気に入らない方がいるのわ予想がつくし何かしてくるだろうと思っていたけど……。
行動に移すのが早すぎない?
陰で文句を言うのならまだいいが、こうして直接言ってくる人も一定層いるわけで……。
しかも、話がかな〜り長いし。
同じことばっかり繰り返していて、聞いてるこっちが飽きてくるっていう……。
取り合えず面倒くさい。
いいから教室に戻らせてくれ。
お嬢様方はわざわざ人通りの悪い裏庭を選んで連れてくるあたりがプロだ。
なんのプロかはまあ、いじめっ子の……?だと思う。
「ちょっと貴方!この私が話しているのに聞いていないなんてどうゆうおつもりでいらっしゃるの!?」
さっきからキャンキャンと吠えているのはカーラ・エル・セルビット嬢といい、アルティス殿下の婚約者の第一候補だ。
そう、第一候補。
正式な婚約者ではない。
だから私がこうして呼び出されるのはおかしいと思うのだが……。
きっと彼女はそのへん、気づいていないのだろう。
私は殿下に興味がない、カーラ嬢は殿下の婚約者でもない。
どこに問題があるというのだ?
とゆうか、めっちゃ丁寧な言葉で話しているけど所詮は相手を侮辱する言葉だからね?
いくら丁寧に喋っても話してる内容は変わらないからね?
もうそろそろテストも始まりそうだし、教室に戻りたいんだけど……。
私が耐えきれなくなって文句を言おうと口を開けたとき、私とお嬢様方の間に影が出来た。
「何してんの?」
一体誰なんだ?と思い、顔を上げる。
目の前の令嬢達は顔が真っ青になってる。
大丈夫なのかな?
さっきまで罵られていたことも忘れて心配するぐらい酷い顔色だ。
影の正体は一人の少年だった。
そう、一人の少年。
だがしかし、この少年見覚えがある。どこで見たっけ?
う〜ん………。
……あ、思い出した!確か講堂で殿下と一緒に囲まれていた黒髪の人だ!
なるほどね、だから令嬢達は顔が青くなったんだ。
殿下と一緒に居たってことはかなり高貴なお方だろうし!
とゆうか、こっちもすっごい美形!
サラサラの長い黒髪を首の後ろで緩く結び、長い前髪は少し耳にかけている。
瞳の色は……紫色?黒っぽい紫だ……。
珍しい…アルティス王国では黒っぽい色の瞳はほとんど無いのに。
カーラ嬢は私をいじめている場面を見られたのを不味いと思ったのか、急いで言い訳を探している。
「あ、あの、ルイス様!こっこれは……」
「邪魔」
そう一言、黒髪の少年が言った。
口を開いて言い訳を始めたカーラ嬢を見事にバッサリ、切り捨てた。
「あと、ルイス様って呼ばないでくれる?許した覚え、無いんだけど」
絶対零度の視線でカーラ嬢を見る。
そばに立っている私ですら恐ろしくて動けないのだ。
直接見られているカーラ嬢はもっと恐ろしいのだろう。
少年、もといルイスは言うだけ言って直ぐに去っていった。
何だったんだろう?
邪魔って言っていたけど、この学園廊下が広いから余裕で横を通れたはずなのに。
まあいいや、令嬢達が固まっている間に私も教室に戻ろっと!
放心するカーラ嬢達を置いて、私は一人の教室に戻った。




