1ー2
「………ス、……て。……リス……」
声が聞こえる。とっても聞き覚えのある声。
声の主はどうやら私に話しかけているようで、なかなか返事をしないからイライラしてきたみたい。
いい加減反応しないと実力行使に出そうだ。
それはとっても危ない。
永遠に眠ることになる、冗談抜きで。
「アイリス、起きて!!」
「はいーー!!」
耳元で怒鳴られた。
驚いて目を開ける。
目の前には怒った顔のメリー。
どうやら寝すぎたみたいだ。
馬車の窓から外を見ると、そこは一度だけ訪れたことのある場所だった。
馬車が止まっているのは広場の噴水と大きな建物の間。
建物とは反対の向きの、噴水の向こうには私の2倍くらいの高さがありそうな塀がある。
以前私が来たことのある王都の広場も似たようなところだったが、そこではない。
そう、ここは目的地の魔法学園の中だ。
ちなみに、一度と言うのは入学試験を受けた時だ。
おっと、鋭い視線を感じる。
慌ててメリーに目線を戻す。
火に油を注いだみたいでさっきよりも怒ってる。
眉間によったしわがとても深い。
「アイリス、貴方一度寝たらなかなか起きないから馬車の中では寝ないでって私言ったでしょ?」
初耳だ。
「まったく、魔法学園に付いたのに全然起きないし!15分も起こそうと喋り続けたせいで喉が痛い!」
それは……申し訳ないことをした。
だが、喋り続けたのではなく怒鳴り続けただと思う。
さらに怒ることになるから言わないけど。
「ちょっと、いつまで寝ぼけてるの!早く荷物持って!降りるよ!」
はい………すいませんでした。
ぷんぷんと怒るメリーはさっさと馬車を降りてしまい、もたもたと荷物をまとめる私は置いていかれそうになっている。
普段は大人しいメリーだが、怒ると怖い。
凄く怖い。
(普段とのギャップもあると思うが)かなり怖いので村ではメリーを怒らせてはいけないという暗黙の了解があったほどだ。
馬車を降りてメリーの元へ向かう。
メリーは受付の所(恐らく玄関だろう)にいた。
周りには人がいないので私達が最後なのだろう。
そりゃ怒るわけだ。
私を起こそうとしている間に広場にいた人達はどんどん学園内に入っていくのだから。
受付では名前と魔法型を確認される。
まずは先に着いていたメリーからだ
「メリー・フライです。魔法型は炎です。」
「では、魔法を見せてください。」
メリーは手から炎を出した。
とは言ってもそれほど大きな炎ではない。
手のひらから約10センチぐらいの高さまでしかない慎ましい炎だ。
受付は基本それで終わり、胸元につけるバッチをつけて中に入る。
例外は知らない。
メリーはバッチを貰ったので中に入る。
まあ、中と言っても一歩分だけだ。
メリーが終わったので次は私の番だ
「アイリス・ウェルです。魔法型は光です。」
魔法型を言うと、受付の人はとても驚いたようでぱっと顔を上げた。
そしてまた驚いた顔をした。
何に驚いたのかはだいたい予想がつく。
一つ目は魔法型。
私の魔法型の光はとても希少で、この国でも使う人は50人よりも少ないと聞く。
めったに出会えないためあった人は大体驚くのだ。
もう一つは容姿だろう。
私の髪色は周りとはかなり違う。
この国に暮らす大体の人達は髪の毛に色があり、薄い色でも銀色や灰色で必ず何色かに染っている。
しかし、私の髪色は白だ。
肩まで伸びている、何色にも染まっていない白。
ここまで色が無い人は国中探しても私の他にはいないだろう。
受付の人も見たことが無かったのか、魔法型を聞いたときよりも驚いている。
取り合えず、何時までもここに居るわけにはいかない。
さっさと受付を済ましてしまわないと。
私は手のひらサイズの光の球を出した。
光の強さも調節出来るが、強くしすぎると目が痛くなるので基本弱めに出している。
受付の人は驚きながらも魔法を確認したのでバッチをくれた。
私はさっと受け取り、中に入る。
受付の人に構う余裕は無い。
入学式はあと10分で始まる。
急がなければ入学初日から遅刻だ。
それは勘弁してほしい。
誰が好き好んで遅刻なんかしたがるか。
メリーと一緒に学園の廊下を走る。
頑張れ私、学園内はとても広い。
◇◆◇◆◇◆◇◆
入学式は学園内の講堂で行われる。
ここで質問。
二度目に来た学園で迷わずに目的地にたどり着けるか……答えは否だ。
だがしかし、こんな時の為ののバッチだ。
このバッチには魔法がかかっており、講堂まで案内してくれる。
走り出したとき、急にバッチから声が聞こえてとても驚いた。
しかも、いい声だった。高すぎず、低すぎず。そして艶があり、言葉の一つ一つに重みがあり……。
……話しを戻そう。
バッチの案内に従って無事、講堂にたどり着いた。
どうやらまだ始まっていないようだ。
よかった。
そっと講堂のドアを開ける。
入学式といっても堅苦しいものではないので、みんなバラけている。
今入っても誰も見ないだろう。
メリーと一緒に中へ入る。
私達が入った瞬間、辺りがざわっとした。
何故?いや、原因は私しかいないが。
メリーは栗色の髪の毛を耳の横で2つに縛っている。
顔には大きな丸メガネ。
少々地味なところはあるが、おかしなところはない。(むしろ、髪型を変え、メガネを取ったら凄く可愛い)
そのため、メリーが騒がれるのは滅多にない。
一方私は受付でもあったとおり、一般的とは言い難い。
周りも同じ反応で、真っ白い髪に驚いている。
これは確かに目立つよな……。
講堂に入ったのはギリギリだったようで、私がうんざりている間に入学式の開会の言葉を言われた。
よかった、私への注目が消えた。
入学式では学園長の挨拶とクラスの発表。
それだけだ。
他に何かないのかと言われても、ない。
何故ならこのあとすぐにテストが行われるからだ。
ちょっと遠慮したいものだが、受けなかったら入学が無かったことに……。
その時急に辺りが騒がしくなった。
隣に立っているメリーの視線の先を見る。
一人の男の人がいた。
男の人はステージに上がる。
今、このタイミングでステージに上がるのは学園長しかいないため、あの人が学園長だとわかる。
青い髪に碧い瞳。
周りがうるさくなるのも分かる、透明感があり美しい人だ。
学園長は礼をして話し始める。
「新入生の皆さん、入学おめでとうございます。私はこの学園の学園長をしています、クロウディ・ノーラ・モルメットです。この学園で多くのことを学び、吸収し、充実した学園生活を送ってください。では」
挨拶と言いながら長々と話し続けるのかと思いきや、ここの学園長は本当に挨拶だけしてステージから降りた。
それはそれで心配になる……。
もっと他に何かないのか。
こう、あまりにも話が長すぎて聞き飽きてくるような感じの……。
まあ、こちらとしては有りがたいので深く突っ込まない事にする。
学園長の挨拶が終われば次はクラスの発表だ。
このクラスの発表で私の学園生活が決まる。
理由は簡単、友達がいないのだ。
同じ村出身であるメリーしか話せる相手がいないので、メリーとクラスが離れてしまったらやっていける気がしない。
勿論新しく友達を作るつもりだが、周りは貴族ばかり。
不安しかない。
ステージの上に大きな紙が張り出される。
いざ、クラスの発表だ!
大量に並んでいる文字の中から私の名前を見逃さないよう、目で追う。
クラスはAからFまであるため、全て見るだけで一苦労だ。
Aクラスから順番に確認する。
私の名前はCクラスの所にあった。
メリーは何処だろう……?
「アイリス、何クラスだった?」
「Cクラス……。メリーは?」
「同じだよ」
神様、私生まれてはじめて貴方の存在を信じることができました。
メリーと同じクラスだと言うことに安堵しつつ、周りの様子を確認する。
講堂に入った時のように注目されているなんて、まっぴらごめんだ。
自分に視線が向いていないかの確認をするが、心配は要らなかったようだ。
私とは別の人に注目が集まっていて、周りの人達(特に女の子)はキラキラした目を向けている。
一体誰に視線が向いているのか。
注目が集まっている場所の中心には、黒髪の男の子と金髪の男の子がいた。
二人ともとてもきれいな顔をしている。
「皆さん、自分のクラスを確認したら、クラスの教室まで行ってください。」
女の先生が大声で呼びかけているが、女の子達には届いていないようだ。
同じく二人の男の子を見ていた男の子達はさっさと移動を始めているのだから、きっと中心の二人も移動するだろう。
私はメリーと共に講堂から出て、教室に向かった。
ちなみに、案内は入るとき同様バッチのいい声だった。




