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独白 1

 彼女は俺を知らない。

 俺は彼女を知っている。

 それだけの関係だった。


 ある日、仕事終わりの父が珍しくその日の出来事について話していた。

 なんでも誤って転移魔法についてきた子供がいたというのだ。

 それだけなら特に気にすることもないのだが、その子供が問題だった。

 母と同じ髪色をしていたらしい。

 母はこの国では珍しい白色を纏っていた。

 とても美しい人で、社交界からも評判だったと父が誇らしげに語っていたのを聞いたことがある。

 そんな母は短命だった。

 俺を産んで数年でこの世を旅立った人、特に何か病気があったわけでもないが体が弱かったらしい。


 父は母のことが大好きで、母が亡くなってからはずっと無気力だったが仕事だけはしっかりとこなす人だった。

 一年前にやっと元の生活ができるまで取り戻せたが、それでも母を忘れるなんてできないようだった。

 そんな父が言ってきたのだ。


「白い髪色をした子供と会った」


 もしかしたら父はその子に母の面影を見たのかもしれない。

 俺もその子に会ってみたい、なんて思ってしまったのもしょうがないだろう。

 俺も優しくて美しい母が大好きだったから。

 父の仕事仲間の中に父とその子の写真をこっそりと撮っていたという人物がいた。

 父に俺がその子に興味を持っていることを知られたら面倒なので、父には内緒で見せてもらった。


 白くて、小さくて、明るい子だった。

 母の面影を見ることはなかったけれど、とても記憶に残る子だった。

 でもただそれだけ。

 それ以上のことを知りたいとは思わないし、話してみたいとも思わない。

 俺の彼女に対する興味はそこで終わるはずだった。


 魔法学園の入学式。

 たくさんの新入生がいる中でも彼女は目立っていた。

 写真でしか見たことがなかったけれど、なぜか彼女だという確信があった。

 前に見た時よりも長くなった白い髪の毛、白くて長いまつ毛に縁取られた大きな目、その奥にある宝石のように透き通った少し黄みがかった白い目、白くて長い腕と脚。

 どこを切り取っても美しいと言える彼女は、俺にもう一度興味を抱かせた。


 どうやら彼女は厄介ごとに巻き込まれやすいようだ。

 入学早々殿下の隣の席になったことで殿下とカーラ嬢の恋愛ごとに巻き込まれてしまった。

 正直殿下はカーラ嬢のことになるとめんどくさいところがあるから御愁傷様としか言いようがない。

 通行の邪魔になっていたから仕方なく間に入ることにしたけれど、正直殿下とカーラ嬢の問題に首を突っ込みたくはないんだよな…。

 あと、カーラ嬢は昔馴染みだから名前で呼ぶのはわかるんだけど、それを殿下に知られたら俺が殿下に睨まれることになるから冷たく思われるけれどしっかりと訂正しておかなければいけない。

 本当にめんどくさい。


 翌日も殿下は相変わらず彼女に興味が尽きないようだった。

 積極的に話しかけては、話を途切らせないように猫をかぶっていたりしている。

 彼女はどうも顔に出やすいようで目を泳がせては、必死に言葉を選んでいる。あ、今ため息をこぼした。

 必死に逃げようと頑張っているところで彼女が呼び出しをくらい、これ幸いと顔を輝かせながら教室を出て行った。

 ああ、きっと僕と同じように特殊な属性を持っているが故の呼び出しなだろうな。


 教室に戻ってきた彼女は真っ先に彼女の友達に助けを求めに行った。

 案の定試験を出されたようだ。

 まあ、この試験普通は気づかないから助け舟を出すぐらいは許されるだろう。

 学園側としても実力を知りたいならまずは魔法を使ってもらうところからだ。

 ヒントをあげると彼女はすぐに魔法を使い、本来のテストの結果を見ることができた。

 初めて彼女の魔法を見たが、あまりにも綺麗だった。

 彼女の使う魔法も、彼女自身も。

 言葉が出なくなった俺を不審に思った彼女が不安そうに聞いてくるが、返事をするだけで手一杯になった。


 彼女が教室に戻ってきたのは除業は始まってから少し経ってからだった。

 多くの令嬢に囲まれている中、殿下は目ざとく彼女を見つけ、さらには呼びかけた。

 そんなことをしたら被害は彼女に行くというのはわかっているはずなのに、殿下は本当に性格が悪い。

 ほら、彼女がすっこい嫌な顔をしているよ。

 まあ、おかげでこの人だかりから脱出できたのだから感謝はする。

 殿下よりも一足先に抜け出して、さっきの結果を確認する。

 殿下も抜け出してきたようで、俺と話していると彼女が離れようとしているのが目に入った。

 彼女がすごく驚いた顔をしている。

 きっと俺も同じ顔をしているのだろう。本当に無意識だったのだ。

 殿下はそんな俺たちが面白くて仕方がないようで笑いを堪えきれていない。

 これ以上揶揄われるのは嫌だし、一旦離れたところまた令嬢たちに囲まれた。


 お昼の時間になり、早速殿下は彼女に絡みに行っていた。

 なんだかぼーっとしている彼女はどうやら料理を習ってみたいようだ。

 もちろん料理人を紹介するのは構わないが、嬉しいからといって距離が近すぎないだろうか。

 流石の殿下でもこの距離をとってすぐ普通に接するのは気まづいと思ったのか、気を利かせてくれて代わりに行こうかと提案してきた。

 今更そんな気を利かせてもらわなくてもいいんだけど…あと、学園の厨房に殿下が女子生徒と二人で行くと混乱を招くんだから行かせられるわけないだろ。


 カーラ嬢がまた彼女に絡んでいった。

 これも全て殿下が一方的に彼女に絡んでいったが故に起きたことだが、殿下はカーラ嬢の嫉妬が嬉しくてわざとそうなるように仕向けているところがあるから彼女には災難だったとしか言えない。

 だか、彼女は殿下から離れる口実を得てラッキーだとでもいうように殿下をせかしている。

 カーラ嬢からしたら想定外だったようで驚いているのが見える。

 殿下はカーラ嬢が自信を気にかけてくれたことが嬉しいのか、それとも嫉妬してくれたとでも思ったのか締まりのない顔をしている。

 これは当分二人とも動かないな。

 今のうちに彼女の誤解を解いて、この場から脱出しないと復活した二人の痴話喧嘩にまた巻き込まれてしまうだろう。

 別れた後、彼女が他の生徒に怖がられていたのは見ていない。そう、見ていないのだ。


 放課後になり、彼女と合流してジェイドに会いに行った。

 彼女はジェイドの容姿と言動が結びつかないのか目を瞬かせている。

 まあ、初めて見たらそうゆう反応になるとは思うので助け舟を出すことにした。

 ジェイドと話して料理を教えてもらうことになった彼女は、どうやら明日から明日から本格的に習うことになったらしい。

 彼女とジェイドの相性も悪くないようで、明日以降はついてこなくても大丈夫だろうと思っていたらジェイドから何故か来いと言われた。

 聞いてみるとどうやら試食係が欲しいようで、確かに二人が作ったものを食べる人がいないと練習するにも限度が出てくるだろう。

 とりあえず了承して、この日は別れることにした。

 ジェイドがついているから、多分食べられる料理が出てくるだろう…。

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