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3−1

明日と明後日にも同じ時間に投稿する予定です!

 一時間目の授業の後、筆記の授業が二時間あってお昼休みになった。

 魔法学園は午前三時間、午後二時間の一日計五時間授業があり、今日の午後からは各クラスでオリエンテーションが企画されているらしい。

 貴族の子息女は元から交流があった人も多いようだが(午前中の授業の様子を見るに)、この学園は貴族も平民も関係なく通っている。

 そのため、初めましての人がほとんどを占める平民組に配慮して交流する機会を儲けるのだとか。

 まあ、そんなことしなくても身分関係なく話す人は話すし、話さない人は話さないので形だけだよなぁと思ってしまう…。


「アイリス?どうしたの、ぼ〜っとして」


 何故こんな回想をしてしまうのかといえば、原因は目の前に座って食事をしている殿下のせいだろう。

 珍しいからなのか話しやすいからなのか、なぜか殿下は私に付き纏ってくる。

 最初の授業の後の二時間、席が隣だったこともあり距離が近くなるのはわかる。

 だが、何もクラス全体の意見交換の時まで一緒にいる必要はないだろう。

 正直、鬱陶しいし周りからの視線が痛いからやめてほしいのだが、もしそう言った時に「仲良くなりたかっただけなんだ」なんて言われたら恥ずかしい。

 それに、殿下が付き纏ってくるということはルイスもついてくるということで…さっき助けてもらった恩はあるが口数が少なく、表情もあまり変わらないため何を考えているのかわからず少し苦手なんだよね…。

 メリーはメリーで最初こそびっくりして逃げていたが、今はもう完全に受け入れ始めている。

 こらそこ!村にいた頃の話を広めるんじゃない!


「メリー、その話はやめてよ〜!普通に恥ずかしい!!」


「え〜ここからが一番面白いとこらだったのに〜」


 そんなふうに拗ねてもダメだからね!

 殿下も面白いって聞いて目を光らせない!

 ここで怖いのは、感情を表に出している二人の話に入っていた真顔のルイスだ。

 興味津々になってほしいわけじゃないけど、ここまで無反応もなんかモヤッとする。


 ちなみに、メリーが話していたのは村にいた頃私たちに勉強を教えてくれていた女の先生が旦那さんと妊娠したという話を聞いて、母やよくお世話になっているお店のおばさんに話していた話だ。

 ここまでだと何も面白味はないのだが、どうやら事実は違ったようで…。

 実は先生は妊娠をしていなかった。じゃあ誰が妊娠したのかって?

 先生が飼っている犬だ。

 そうとも知らずに私はひたすら先生は妊娠しているのだから手助けしなくては…!と思って「先生一人の体じゃないんだから!」と言って率先して荷物持ちをしてたっけ…。

 母やおばさんはもちろん村のみんなは私の勘違いを知っていて、面白半分に黙っていたし…!

 先生もわかりやすい私の態度に勘違いしていることに気づいていたのにそのままにさせておいて、最終的にはある日「実はね、出産したのよ……うちの犬が!!」ってドッキリ風にネタバラシするし…!

 村全体で私を騙していたわけだ。ああ恥ずかしい。


 というわけで、私にとってあれはなかなか広められたくない話なので強制ストップをかける。

 殿下は残念そうにしているが、全く表情の変わらないルイスになんだか微妙な気持ちになる…。

 大袈裟に興味を示されるのも恥ずかしいが、無反応の人を前に恥ずかしがって話を遮るのも勘違いしているようでこれもまた恥ずかしい。

 いっそもう思い切って話題を変えてみるか…。


「そ、そういえばここのご飯美味しいね!」


「ああ、確かここの料理人は王宮の料理番長のご子息だったね。わかるかい?ルイス」


「…もりろん、ジェイドでしょ?」


「知り合いなの?」


 何やら知っているような口ぶりなので思わず聞いてみる。

 なんだかザ・貴族様って感じがするなぁ〜王宮の料理番…そんなすごい人の息子さんがこの学園の料理を作っているなんて…。

 食べている料理が一気に高級料理になった気がしてくる…!

 こ、これがプラシーボ効果!?


「君、今失礼なこと考えてない?」


「え!?」


 あの無表情ルイスが話しかけてきた…!

 しかも考えてることまで当ててくるとは…!?

 もしかして魔法で心を読んでるの…!?


「違う。君、思ってることが全部顔に出てるよ」


「ええ!?」


 っぱっと顔に手を当て、ペタペタと触って確かめてしまう。

 私、そんなに顔にでてるのかな…?

 ってそれより!!


「料理人の人と知り合いなの!?」


「うるさっ…。急に大声出さないでよ…」


「あっ、ごめん…。それで、どうなの?」


「まあ、知り合いではあるよ。最後に話したの結構前だからそれほど親しいわけじゃないけど」


「そうなの?」


「ああ。で、それがどうしたの?」


「あのね、私料理習ってみたいの!」


「「え?」」


 私の突然の思いつきにメリーと笑いっぱなしだった殿下が目を丸くする。

 そしてずっと無表情だったルイスでさえ目を丸くした。

 ついにその鉄仮面崩してやったぞ!


「ちょっと、アイリス!なんで急に料理を習いたいだなんて言い出すのよ!あなた、料理なんてしたことないでしょう!?」


 メリーがそう指摘する。

 そう、私は料理なんてしたことないのだ。

 でもやってみたい。私はこの学園に来たからには必ず人間として立派になってお母さんをびっくりさせるって決めてるんだから!


「ねえ、そのジェイドって人に私を紹介してくれないかな?」


 だからその第一歩を料理にしてやる!

 期待を込めて目を丸くしていたまま固まっているルイスを見つめる。

 …にしても、殿下といい、ルイスも綺麗な顔してるな〜。

 貴族の人ってみんなこう綺麗なのかな?それともこの二人がすごいだけ?

 まつ毛長いし、肌も白くてスベスベしているように見える。こんなに近くから見ても毛穴が見つからない。

 …近く?


「ねえ、近い」


 ルイスの声にはっとして改めて目の前のものに意識を向ける。

 ってめっちゃ近い!!!あとちょっとで鼻の先が触れ合いそうな距離にいるんだけど!?


「〜〜っ!ごめんっっ!!」


 慌ててルイスから離れるが、やってしまったことは取り消せない。

 会ったばかりの人に私はなんてことを…!絶対嫌われたよ…。普通に失礼すぎる。

 さっき決意したばっかりだけど、料理は無理かな…。


「ねえ、アイリス。ジェイドなら僕が…「いいよ」」


「え?」


「だから、ジェイドの紹介だろ?それぐらい別に構わない」


 諦めかけていたジェイドさんの紹介をやってくれるだと!?あのルイスが!?


「本当!?ってごめん!」


 思わす両手を握ってしまう。さっきやらかしたばかりだというのに…。

 ところで、殿下が何かを言いかけていたような…?まあいっか!


「じゃあ、今日の放課後一緒にジェイドのところに行くよ」


「うん!ありがとう!」


 こうして、私の「目指せ!自律した人間」への第一歩が決まったわけである。

 ちなみに何かを言いかけて固まった殿下と、それを見てびっくりしているメリーも一緒に行くことになった。

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