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キャラ崩壊の激しさよ

ヒュォオオオ……。自身の黒い髪が風に靡くのを手で押さえる。


目の前で対峙するのは、可愛らしい顔立ちを般若の如く怒りで歪めた女の子──渚だ。渚の怒りに染まった顔と、強風のせいで修羅場感が否めない。



「……どうして邪魔するんですか!!」



訂正する。やはり修羅場だった。渚のくりっとした少し垂れた瞳が鋭く釣り上がっていて、本当に怒っていることが分かる。


ごめんて〜。でもさ、仕方なかったんだよ。



「どうしてと仰られても……私は、クレア様の親友ですもの。親友を傷付けようとしている方がいれば、警

戒するのは当然ですわ」



そう言って、オホホホ〜と口を手で押さえて控えめに笑えば、分かりやすく顔を顰めた渚。彼女は割と顔に出るタイプの人みたいだ。この世界ってそういう子が少ないから、なんか親しみを覚えてしまう。



「……まずは、その言葉遣いを直してもらいましょうか。ねぇ、転生者さん」



あ、その顔好き。ちょっと得意げなの、可愛い。そんでもって、やっぱり互いが転生者ということは分かり合っていたらしい。



「なら、普通に話させてもらいますね〜」



久しぶりの砕けた話し方になんだか解放感。こっちの話し方の方が楽で良いわぁ。貴族の口調とか独特のテンポの会話とか全然慣れないんだもの。



「……貴女、随分原作を無視して好き勝手にやってくれたのね」



解放感で晴れ晴れとした私とは裏腹の、怒気を含んだ渚の声に内心ガクブルである。だって怖い。




「私が此処に来て、アーサーに最初に言われた言葉、分かる?『……天井、壊れてないか? 壊れてたら修理しろよ』よ!? 原作だったら、『美しいお嬢さん、どうか俺と結婚してくれ』って、麗しい笑顔で口説いてくれるのに! というかなんであんな真顔なのよ!? 見た目が良い人の真顔って威圧感半端ないのよ馬鹿野郎!!」



……お、おう……。怒涛の勢いに完全に押されてしまっているが、なんか、凄い……ね。この勢いに乗れる気がしないんだよ。


というか王子、真っ先に天井の心配したんだね……。普通、見知らぬ女が天井から落ちてくるっていう奇天烈な登場で寝室に入って来たんだから何者か気にならなるもんじゃないの? 勿論天井の破損の有無も大事だけどさ……。

原作の王子も中々ぶっ壊れている気がするのだが。明らかに怪しい登場の女を口説くって相当ヤバイと思うのだけれど。

どちらにしても、アレだね。危機感足りなさ過ぎると思うの。


あ、あと。王子の真顔については分かりかねる。言われてみれば原作だと笑顔だったなーって感じだけど、もうなんか……家柄的にも立ち位置的にも近い距離にいた9年間、ずっと王子は真顔だったのよ。麗しい笑顔? 全く想像出来ないわ。



「それにシリスもよ! 優しい紳士キャラだったのになんかよく分かんないくらい毒舌だしさ! 私が転びかけて、彼の胸にダイブした時『おや、猪かと思いました』って言ったからね!しかも服を軽く払ってさ!私は埃がなんかか!あぁ猪でしたねコンニャロウ!言っちゃ悪いけど、私は美少女だわ!この世界のヒロインやってんのこっちは!中身は三十路だけどね!!たかだか15歳の青年に馬鹿にされんのマジムカつく!!」



えっと、シリスが優しい紳士キャラってことに気を取られてて話が全然入って来なかったんだけど……。本当に言ってる?シリスともかれこれ9年の付き合いだけど、優しさなんて皆無でしたよ??目が合えば鼻で笑われ、会話をしたら嘲笑されますけど??人として退化し過ぎてない?



「クレアも大分キャラが崩壊しているけど……何より!アンタよ!セーラ・フォード!!」



効果音があれば、ビシィッと音がなってるだろうピンと伸ばされた人差し指はしっかりと私を指している。自分の肩が大きく跳ね上がったのは……ビビった訳じゃない。ということにしておいて。



「セーラはもっと穏やかでおっとりしたふわふわ系女子なのよ!語尾は『〜ですよぉ』よ!よくすっ転ぶドジっ娘で萌えキャラだったのに!!」



無理だぁああ!!

そんなふわふわした女の子私にはなれませんんん!!だって、元来の性格とあまりにもかけ離れ過ぎてる。というか萌えキャラだったのね私……そりゃキャラ崩壊も著しくなるわ。


一度自分が、ドジっ娘なふわふわ系女子になった姿を想像したけれど……なんか腹が立ったのでやめた。やっぱり私には私が一番しっくりくるものね。



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