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親友不足

クレア様からのランチのお誘いを断腸の思いで断ったあの日から、一週間が経った。



ぐぅーっと伸びをして、凝り固まった筋肉をほぐす。肩を回すとボキボキィという音がして、老いを感じる。といっても、現世ではまだ15歳なのだけれど。あー。癒しが欲しい。



「クレア様が……足りない」



あの麗しい顔を1時間くらい眺めていたい。鈴のような凛とした声で、名前を呼んで貰いたい。変態チックな思考をしていると


「貴女にはクレア嬢しか友人がいらっしゃらないのですね。貴女の人望の無さが伺えますよ」



「……(イラっ)」



癒しをくれぇえええ!!! 今!此処に!!クレア様を連れてきてえええ!!


私の呟きを拾い素早く毒を吐き散らした男、シリスとは今日も今日とて犬猿の仲である。



この一週間、私は学園内の空き教室に一部の時間を除いて籠りきりで王子様から受けた命令をこなしていた。……この男と共に。


最初はお互いに拒否したんだよ。特に、シリスが頑なでさ、この女と一緒なら絶対やらない!ということを必死に王子様に訴えていたっけ。まぁ最終的には、王子様に「いいかげんにしろ」と拳骨されて収束したけれど。良い音がなってたよ。あれは絶対に痛いやつだった。



「……二人とも、ご苦労だった」



噂をすればなんとやら。王子様の登場である。いやぁ、本当に大変でしたよ〜。と言いたいところではあるが、これでも公爵令嬢。人に弱味を見せるのはよろしくないので、優雅に微笑みでも浮かべておく。



「これで、なんとか出来る」



私とシリスはその言葉に、ほっと息を吐いた。やっと解放されるのだ。この、互いに嫌い合っている二人きりの空間という地獄から。


そして何より!

クレア様に会うことが出来る!! とりあえず、あの麗しい姿をジッと眺めていたい。それに、あの凛とした声で私の名前を呼んでもらいたい。



「セーラ。此度の件、本当に感謝する」



やっぱり無表情なのね。せめて微笑みくらい浮かべていて貰いたいが、無理な注文というやつだろうか。殿下と知り合って9年経つが、真顔以外の表情を見た事がないものね。……私と居るのがつまらないだけかもしれないけどさ。


「……約束、しっかり守って下さいね」



「勿論だ」



王子様が頷いたのを見て、そそくさと荷物を纏める。表情筋は仕事を放棄しているけれど、彼自身は仕事の出来る男であるし、約束は果たす人なので反故にされる心配はないだろう。これ以上話すこともないし。


それになりより!今から教室行けば、もしかしたらクレア様と会えるかもしれない!



「では、私はこれで失礼します」




そして私は、廊下を優雅に歩いていたクレア様を発見し、一週間分の親友ロスを解消したのだった。



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