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ついでに王子様の側近も登場

シクシクと大粒の涙を流す渚によって、通りすがりの生徒たちからの視線を浴びるようになってきた。


こういうの、前世でもあったなぁ。泣いている女の子に群がってくる人達の視線に、居た堪れない気持ちになるのよね。泣いた者勝ちみたいなの、本当に辞めて欲しいって思うよね、こういう時。


面倒だなぁー。用は済んだし、もう帰っても良いと思う。


「クレアさ」

クレア様、帰りましょう?


と言うつもりだったのに



「おや、どうなさったのですか? 公爵令嬢のお二人がナギサ嬢に詰め寄って」



面倒な奴がもう一人来たぁああ!!


にこり。と、目が一切笑っていない笑顔を浮かべる男性は、シリス・アース。第一王子の側近であり、一部の方々から第一王子の右腕とも呼ばれている。


容姿は端麗で、涼しげな目元からは知的な印象を受ける。銀縁眼鏡から覗く瞳は海のような綺麗な碧色。髪色もまたその瞳と同色で、全体的に涼しげな人だ。夏場に見たら、視覚的には涼を取れるんじゃないだろうか。


そして私は、シリスが誰よりも嫌いだ。美人さんを眺めるのが趣味な私が、唯一受け入れられない麗人。それが、シリスである。



「……よもや、ナギサ嬢に嫌がらせをしているワケではありませんよね?クレア嬢」




ほらぁああ。こういうトコ。一見冷静に見えるのに、その実思い込みの激しいタイプ。嫌だわ〜。こういう人って面倒だよね。


というか、嫌がらせ!?しかも今、クレア様に言ったよね!? 心優しいクレア様がそんなことする筈ないでしょうが!!


昔からそうだった。どういうワケか、シリスという男はクレア様に対して異常なくらい当たりが強い。半周回ってクレア様のこと好きなの?と言ったら、絶対零度の眼差しを向けられたことがある。



「シリス様。お言葉を謹んで頂きたいわ。クレア様が、嫌がらせ? そんなくだらないことを、海のように広い御心を持つ彼女がするわけがありません。今のお言葉、撤回して頂きたいものね」



何回も言うが、私はこれでも公爵令嬢。幼少の頃より社交界の荒波に揉まれた経験を持つ私にとって、威圧をかけることなんて朝飯前である。内面に伴わない整った容姿で、にっこりと笑ってやるだけでいいのだ。それだけで、圧をかけることが出来る。


……とまぁ。得意げに言ってみたけれど。実際は、普段、笑わない子が不快感を顕にしながら笑ったらすっごい怖いよね。というだけの話だ。



「……失礼しました。クレア様、先程の発言を撤回させて頂きます」


恭しく頭を下げるシリスから視線を逸らし、空気と化した渚を見ると、不満そうな表情だ。大方、『こんな筈じゃなかったのに』とでも言いたそうだ。



「構いません。そう思われるようなことをしてしまったようだし、今の私の立場上、そう思われても仕方ないということも理解してますもの」




是非とも彼女には私の親友を見習って欲しいものだ。シリスの無神経かつ愚かで万死に値する発言に対して許すという決めたクレア様の懐の深さたるや!!海のように広く!一点の曇りもない澄んだ御心!!


私の親友、容姿だけじゃなく御心も麗しい!!もうずっとそのままでいて!!


……ゲフンゲフン。最後の仕上げは必要よね。クレア様が渚に嫌がらせで絡んだワケではないと周囲に認知させる為の大事な仕上げ。



「……重ねて申しておきますわ」


「なんだか大事になってしまったけれど、此度のナギサ様への諫言は、複数の女子生徒の言葉をクレア様が代弁したに過ぎないということ。


もしも、クレア様が嫌がらせを働いたなどと言ってご覧なさい? 私、絶対許しはしなくてよ」



先程から鋭い視線を向けてくる者に、私からも同じ視線をくれてやる。


私の親友は、あんたなんかに潰させないわ。



「さぁ、参りましょう。クレア様」



転生者同士の闘いのゴングが鳴った……そんな気がした。





そういえば渚、転んでないな。良かったね、痛い思いしなくて済んで。




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