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3-7

「え?」

「君はさっき、コレと直接目を合わせただろう?しかも思いっきり」

「は?」

「え、まさかシュウさんが怒ってる理由って…」

…それだけ?

まさかそこのカップルの彼氏と私の目が合ったように見えたから(シュウさん目線で)、こんなに怒ってるのこの()

「えっくだらな…

「はあ?」

「アッイエナンデモナイデス」

「…君はたまに僕の気を引くために嫉妬させようとするみたいだけど、二度とこんな真似はしないでくれるかな、先に言っておくけど次は許さないから」

「なんか壮大な勘違いが入ってる気が…」

と、私が口答えした瞬間にズドン!と落雷のような轟音が響く。ぎょっとして真横の音源を見ると、先ほどシュウさんと隠れようとしていた教室の廊下側の壁が丸々一面分、扉もろとも粉々に砕け散っていた。

「返事は?」

「…はい」

「なにそれ?聞こえないんだけど君本当にわかって

「わかりました!わかりましたから!もうしませんって!だからもう機嫌なおしてくださいってば!」

ノーモーションで破壊活動すんな!いやモーションあってもダメだけどな!?

「わかってくれたなら僕の前から引いてもらえる?狙いが外れるといけないからね」

「えーっとえーっとつまりそれはカップル(彼ら)に呪いをかける的な…?」

「当たり前だろう、他に誰がいるの?」

「いやまあシュウさんのお気持ちはよーくお察ししますよ?しますけどあれは他意のない事故というかなんというか

「いいからどいて」

「いやちょっとまって

「どかないと校舎ごと燃やすよ?」

「ノオオオオオオオ!?」

もれなく全員巻き添えパターンかよ!?ガチでこの学校をいわくつき物件にする気かよ!?

さすがに学校で本能寺の変を起こされてはかなわないので、私は恐る恐るシュウさんの前から移動する。この神様ほんとおっかねえな…シュウさんの恐ろしさには十分慣れたつもりだったけど、どうやら私の認識もまだまだ甘かったようだ。

…いやそんなこと言ってる場合じゃなかった、早くあのカップルを逃すかシュウさんを止めるかしないと本当に取り返しのつかないことになってしまう。

ちなみにそのカップルは、二人とも先ほどから完全に固まったままシュウさんを凍りついた表情で見ている。たぶんさっきシュウさんが教室の壁を破壊したのを見て絶句しているんだろう。そりゃそうなるよね!

とりあえずシュウさんの後ろに移動した私を見て満足したのか、シュウさんは私と視線を合わせてにっこりと笑った。

「…満足、ですか?」

「とりあえずはね。懸念事項が一つ減ったから」

「懸念事項?」

こんなときになんだろう?

「ラビが僕の前にいてくれるのは嬉しいんだけど、この状況でそこに立たれる限りずっとそこの男(ソレ)の視界に入り続けるだろう?」

「えっと…つまり?」

「…君が他の男の視線で穢され続けるのは我慢ならない」

「過激派!!!」

いくらなんでも気にしすぎだと言おうかと思ったけどそういえばそういう男でしたねあなたは!そしてそこだけ真顔で言うのやめてほんとこわい!

しかしこれからどうしたものか…カップルを犠牲にすれば他の生徒は助かるけどそれはダメだろう色々と。倫理的な意味でも私の新たなトラウマな記憶更新の意味でも。犠牲者の数という意味では少数で済むかもしれないけど、そもそもこれはトロッコ問題ではない。かといって学校がまるごと炎上しても困るし…自称古き良き時代から存在する、かろうじてコンクリート造りのうちの学校にスプリンクラーなどという親切なシロモノは当然設置されておらず、せいぜい廊下のところどころに消火器が置いてある程度だ。消火器じゃ校舎の丸焼きは消せないよな…

「ラビは後ろを向いておいてね?トラウマになるといけないから」

「トラウマになるのがわかってるならやめてほしいんですが」

「最初は脊椎あたりから始めてだんだん侵食させればいいかなぁ」

「具体的にグロテスクなひとりごとを言わない!あと人の話はちゃんと聞いて!?」

「さて君たち、呪いの進行だけど一瞬で全身に回るのとじわじわ時間をかけるのどっちがいい?そのくらいは選ばせてあげるよ?」

「…」

「…」

そう問われたカップルは完全にフリーズしている。このままでは逃がすのは無理そうだ。

「…何も指定がないみたいだから、速効性のと遅効性、一人ずつにするか。じゃあとりあえず

「やめんかー!!!」

「ぶっ!?」

とにかくこの()を止めなければという一心で、私は照準をシュウさんの頭に向け、手元のレバーを思いっきり握りつぶした。

そう、廊下に転がっていた消火器のレバーを。

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