悪神「ディスタン」と死神「ディザースト」
前回のあらすじ。
闇の落ちた天使が獄都に到着した。
はい、このまま読みたい人だけゆっくりと読んでいってくださいね…?
獄都の地に足を踏み出した少女こと、神鳴璃遊。
その荒れ果てた獄都のへき地を眺めている少女の目に映っているのは、至る所にアンデットやらゾンビの下級モンスターの他にもスケルトンが立ち塞がってしまっている。
だが、その先に見える禍々しい城門があと少しの距離だというのに、スケルトンが剣や弓を構えてこっちを様子見をしている。
迂闊に動けばあっちからの先制攻撃によって致命傷まではいかないが手傷を負ってしまうと逃げることもできない。
どうしようかと考えれば考えるほど時間は許してくれなかった。
ギチギチと弓の弦を鳴らす効果音。
ジャキンッと剣の取っ手となる部分の持ち方に力を込める重量音。
ジリジリと近寄るそのスケルトンの元々が冒険者らしき動きに璃遊は、はっとあることに気づいた。
それは、冒険者としての生前までの記憶が体に覚えているはずの動きだった。
「…いちかばちか…やってみるほかない、よね。こういうのは、ゲーム感覚を忘れないと。」
璃遊は、多数と対立している距離と自分の立ち位置の距離に城門までの距離を頭の中で計算し始める。
相手の動きが冒険者としての感覚が覚えているのだとするならばと、後退する。
剣を持っているスケルトンの一人が、少女の目の前にまで距離を詰めたその瞬間だった。
璃遊は、剣の刃の横一線に斬りつける動きと合わせて同じ方向へと…左に向かって走り出した。
剣を持っているスケルトンは、その一瞬に動きが鈍ってしまったのを見るに、拍子を突かれたのだと理解するまで3秒もかからなかった。
だが、少女の動きは、それよりも2秒先を進んでいた。
璃遊は、左へと躱した時には、すでに剣を持っているスケルトンの背後を取ってそのまま直進するように走っているのだ。
その動きに弓を持っているスケルトンは、仲間のスケルトンと直進状態にいる璃遊へ標準を定めるも撃てずにいたのだ。
なぜなら、弓の射出速度と璃遊との距離には、4秒ほどのラグ(距離と速度による時間の差)があるからだ。
もし、4秒ほどのラグで放ってしまったら、璃遊の身長差と合わせて避けられてしまう可能性があるのと、仲間のスケルトンの避ける時間差が間に合わないからだ。
とてつもなく少女の戦闘による考えは、天才的な発想だとほかのスケルトンたちも驚きを見せていた。
それと同時に、弓を持っているスケルトンたちの動きも鈍っているのか仲間撃ちなんてしたら元々の冒険者としての実力もそうだし、後味が悪いと考えてしまっているためオドオドし始めている。
「…やっぱり。こいつら、元は人間としての良心が存在している。このまま、城門まで行けるには、あと一歩足りないけど…これなら、どうだぁぁぁぁ!!!!」
そのあと一歩足りないのを補うために両手いっぱいに握っているのを弓を持っているスケルトンたちは、そっちに目を向けてしまっている。
これぞ、璃遊の子供らしい発想の技。
「必殺…殺しはしないけど、目くらまし!!!」
両手いっぱいに握っている手を左右に投げるように開いた。
剣を持っているスケルトンから避けた時に両手で拾っておいた砂を弓を持っているスケルトンたちの目に向かって投げつけたのだ。
それに怯んでしまった弓を持ったスケルトンたちは、つい人間だった時の癖が出てしまった。
そう、目に砂が入ってしまうと人間は、目を閉じるか片手で目のところを覆い隠したりする。
元々の人間の癖を利用した璃遊の突発的な動きに剣を持ったスケルトンは、棒立ちになりながら感心するように眺めている。
スケルトンたちとの戦い方に慣れてないとはいえ、避ける動きに距離感を計算した発想力、突発的に思いつきの身近にあるものを利用する力。
理遊の一連の動きにほかのスケルトンたちは、弓の構えを解いてあることに気づいたようだ。
『…人間とは思えないあの動きと発想力…異世界の勇者と戦った時のことを、思い出すな。同胞たちよ。』
『あぁ。久しい感じだった。』
『あの少女の名を聞きたかったな。』
『あの少女。ゲームがうんたらとか言ってたぞ。もしかしたら、かもな。』
スケルトンたちの身体が、光に包まれるかのように枯渇した大地に潤いを与えてくれたかのように成仏をし始める者たちが理遊に感謝の言葉を大声で叫んだ。
「感謝するぞ、少女よ。せめて、名を教えてくれないか!?」
「…私の名前は、神鳴璃遊!!絶対に此処に縛られているみんなを助けてあげるからね!!!!」
少女も大声でその返事に答えてくれたことにスケルトンたちは、歓喜に満ち溢れていた。
そうこうしているうちに城門前に着いた少女は、スケルトンたちの歓喜なる声に若干、罪悪感を抱いてしまっていた。
何故なら、成仏させる気はなかったのだ。
先ほども璃遊の言い放っていた言葉を読者は理解しているだろうか?
(「絶対に此処に縛られているみんなを助ける」)
つまりは、地縛霊の如く未練のある彷徨える魂によって具現化したものが、アンデットでありスケルトンだったりするわけだ。
そして、その未練のある彷徨える魂を管理しているのと管轄を持つ神を理遊は、知っているのだ。
「もしかしたら、このお城。悪神と死神の居城、だったりするんじゃないかな?」
―まぁ、その通りだったりする。
理由は、聞かないでほしいと懇願するわけじゃないが話が早い人物だとこっちは、やりようによっては話が通しやすい。
だが、此処まで来てしまったのだから城門を開けてあげるのがまずは、通りか。
―城門前で語りをしているのが、その居城の主である悪神こと、ディスタンだったりする。
そして、作者風に書き綴りをしているのが死神様こと、ディザーストだったりもする。
「…自己紹介は、ありがとうございます。私、神鳴璃遊。知っているかもですが。」
話を脱線しているかのような入り方をしているディスタンとディザースト。
城門の呼び鈴を鳴らして『はーい、どちら様ですか?』等と受け答えるような感覚なのだろうが、こっち側(作者側)からしたらはっきり言って迷惑なものだ。
愚痴は、此処までにしておいて。
居城の中へと少女を通すまでは、何事もなく足を進める璃遊。
「何か、メタイ話を聞いてしまったような気がするんだけど。話を進めても良いのかな?」
「何分、人間というところでの執事やメイドを従えていないから失礼するよ。我が、この居城の主である悪神様よ。」
「私めが、ご主人様の忠実なる下僕である死神様である。お客人、紅茶かな?それとも、珈琲というものがよろしかったでしょうか?」
死神様には、紅茶のほうを頼んで悪神様が客間へと通してくれたのでそこまで足を運ぶことにした。
客人として出迎えてくれているということは、璃遊の置かれている状況を把握しているってことで良いのかなと疑問を持っている。
璃遊は、悪神様に自身がこの異世界にどうやって来たのかという経緯を説明しながら話をし始めた。
数分後にして、悪神様は、しばらく考え込んである提言をしてくれた。
それが。
「とりあえず、食事と休む場所は、我が居城で客人として扱わせてもらいましょうか。そして、これからの目的としては、この元獄都の中心部にあるギルドまで行き登録手続きをすると良いでしょう。そこまでは、我から移動手段をも与えましょう。ですが、中心部に行けば行くほど魔物たちが待ち構えているはずです。道中に襲われることもあるかと思いますので、こちらを召してもらいましょうか。幾ばくかの路銀を差し上げます。通貨は、コインが流通しています。銀貨の場合は、シル単位。金貨の場合は、デル単位でございます。登録手続きは、銀貨二シルほど掛かりますがクエスト、依頼によっては、一シルの支払いをして受けられるかと思います。以上が、この異世界の基本的なシステムとお伝えしましょう。」
だと言う。
欲を言えば、登録手続きとクエスト、依頼の支払い料込みで五シルの銀貨を持たされるということだ。
初期の所持金としては、これぐらいが妥当なのだろう。
本来、ゲームシステム上では、所持金なんて初回特典にて銀貨千シルぐらいだし、初期武器も本来持っているはずである。
だが、璃遊のいるこの異世界は、転生しているのか転移しているのかが怪しいところもあるのだが、親切設定など存在しなかった。
むしろ、いきなし戦闘が始まってからまだ、数十分ほど経っているかいないかぐらいで都の中心部から外れている居城の近くに飛ばされてきたものだ。
ある意味では、出現ポイントがお助けキャラのいる親切な悪神様と死神様の登場が早まったぐらいなだけだ。
まだ、ラッキー感があることも頷ける、のか?
とにかく、璃遊の目的を見つけるためにも中心部のギルドまで向かわねば始まらないのだろう。
「はてさて、この先…私、生きていけるのかわからないよ。パパ、ママ…私のことを見守ってね?」
法治者としての話は、まだまだ先の話であるかもしれない。
はい、というわけで始まりました。
法治者という新感覚なジャンルを書くことになりました。
有栖川ソウルでございます。
この度、このラノベを読んでいただき誠にありがとうございます!!
この作品を書いていて初めて気づくことがありました。
「え、異世界の法律だって?知らんわ、そんなん。」
まぁ、とりあえずの話で法律部分はまだ触れていない第二話です。
今回は、戦闘シーンやお助けキャラの登場が早々と出ていますが、これらは、伏線として後々に話の展開が大きく関わる部分に触れていきます。
これからも、神鳴璃遊の活躍をどうぞご期待して読んでくださることを切に願っています。
最後に、あとがきを読んでくださっている方々のためにご報告があります。
毎日の投稿ができない場合もございます。
週に2回のペースで書いていけたらなぁと思っておりますので週に2話ずつ読むことができます。
毎週ですが、22時ごろに投稿をしますのでどうぞそこのところもよろしくお願いします。
最後までお付き合いしてくださりありがとうございます。