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異世界108日目 7月17日(水) ②家庭訪問inアメリア邸 ~四歳の花嫁~

 

「あの……私の書いたお便り帳、読んでいただいてくれておりますでしょうか?」


 そうだ、万が一アメリアが渡していない可能性もある。ここはしっかりと確認しておかなければ……望みは薄そうだけど。


「はい、毎日読ませてもらってますよ。でもアメリアがどうしてもって言うもので」


「アメリア、カズヤせんせ~と番になるぅ~」


 四歳の子と結婚なんてダメ! 絶対ダメ! カズヤ先生、社会的に死んじゃうから!


「和也……」


 そんな目で見ないで! 俺は被害者だからね? 


「えっと、まずはその件からお話いいたしましょうか……」


 一から十まで、抜けなく漏れなくしっかりと、きっちりとお話させていただき、なんとか親御さんの了承は得れたのだが……。


「いや~。番になる! ソフィもルーミィせんせ~も一緒!」


「え、わ、私は……」


「ルーミィせんせ~も一緒! ね~?」


「は、はい……」


『は、はい……』じゃ無いでしょ!? これ以上話をややこしくしないで! 最近そっちの話になると感情を優先させてるからね? 気を付けて行こうね?


「じゃあ、アメリア? もう少し大きくなってからまた聞いてみたら?」


 ママさんの助け舟である。その船、何が何でも乗せて下さい!


「う~ん。わかった! 大きくなったら番になる!」


「しかし、もともと懐っこい性格なのだがお二人には特に顕著なんだ。はっはっは!」


 笑い事では無いですよパパさん……まあそれだけ信頼してくれているんだろうけど。とりあえず『時の流れに身を任せて、ああ、そんな事もあったね』作戦は継続だ!


「カリム様、シルフ様、ご談笑中失礼致します」


「うん? どうした?」


 燕尾服のイケメン、フレーズさんが話に入って来た。案内やお茶を出してくれたりしたので見た目通り、執事のお仕事をしているのだろう。しかしなんでございましょうかね?


「先程、私めは両先生方に無礼を働いてしまいました。どうか処罰を……」


 一気に部屋の空気が変わった。先ほどのイケメンさんの比では無い。この感じはアメリアを保護した時に初めて親御さんに合った時と同じ感覚だ……い、息が……。


「……我が命を持って償う所存です」


「よかろう」


 待って! 命を簡単に投げ出さないで! 執事さんも別に言わなくていいから! 


 ルーミィは完全に硬直して口元が微かに震えている……ダメだ動けそうにも無い。


 俺は……よし、直接殺気を当てられている訳じゃない上、最近イリアさんの殺気を受け続けているからちょっと慣れてる! 言葉を投げるぐらいなら全身全霊を込めれば!!


「ちょ……っと……ま…って……」


 こ、これが限界だ……もう動けません、喋れません。


「あなた!? 先生達が動けなくなってるわよ!」


「おおっ! これは失礼を!」


「っはあ、はぁ……す、すみません、フレーズさんは勘違いしただけで、そ、その悪気は無いので許してあげて貰えませんでしょうか?」


「カズヤ先生がそうおっしゃるなら。私も以前同じ事をしてしまいましたし……フレーズ、この件は不問とする」


 良かった……危うくスプラッターな世界が広がる所であった。しかし相変わらずの恐ろしさである。殺気の圧力だけで窒息して多分死ねると思う……。


「無礼を働いた私めを許すだけで無く、命までお救いいただけるとは……和也先生、いえ、マスターとお呼びさせて下さい。そしてこのいただいた命、マスターに捧げます」


 捧げて貰わなくていいです。銀狼様の執事なんて恐ろしくて夜も眠れませんし、貴方は少なくとも神様と同等以上の存在なんですよ? そんな方を使う事なんて出来ません!


 ルーミィは……再研修中だから良しとしておこう。


「い、いえ! そう言う訳には。フレーズさんはこのお城に必要な方だと思いますので、今まで通り白銀狼夫妻に仕えて下さい」


「カズヤ先生? 私は一向に構わないですが?」


「辞退させていただきます」


 即答である。執事ならば園に常任して身の回りのお世話をしてくれることになる。そんな事させれる訳が無い。


 ルーミィも『ムリムリ! ムリだよぉ!』とジャスチャーしてきてるし。


「なんと器の大きいお方……分かりました。ご命令通り私めは引き続き白銀狼ご夫妻に仕えさせていただきます。しかし、カズヤ様はこれより私めのマスターにございます。ご用命があればいつでもお呼び立て下さい」


 もう、いいかな……それで……。


「パパね、おこるとすごく怖いの!」


 自分の身内だから慣れてるのかな? アメリアあれはね、怖いって言うレベルじゃないんだ。この前の茶番劇あったでしょ? あれと全く同じぐらいの危険度だからね?


 このやりとりですっかり消耗してしまったので園でのアメリアの状況はルーミィが説明してくれた……。


 ありがとう……本当に助かります。大活躍ですよ、ルーミィ先生! さて、しばらく休ませてもらったので、もうひと頑張りするとしよう。


「ところでここからはさくら保育園からのご提案なのですが、『夏休み』と称しまして1週間程ご家族で過ごしていただこうかと思っております。ご家族での、コミュニケーションを深める機会としていただければ、と思っております」


「そういえば最近出かけてなかったな、よし! アメリア、その夏休みの間に何処か行こうか!」


「うん! おでかけする~!」


「そうね、久し振りに魔界辺りまで行ってみましょうか!」


 夏休みで一家揃って魔界って……そんな所、本当にあるんですね。


「それではそろそろ失礼させていただきます。貴重なお時間ありがとうございました」


「もう帰ってしまうのですか? 三日三晩の宴ぐらい用意させていただくつもりだったのですが」


「ダメだよ、パパ! 明日もほいくえんあるし、せんせ~達は次はソフィのおうちに行くんだから!」


 そうだね、アメリアは賢いね~、もっと言ってやって下さい。それに三日三晩はきつ過ぎる。


「そうか、そうだったな! パパうっかりしてたよ! はっはっは!」


 ほんとうっかりが多いなこの一族は……。



 ゲートまでアメリアと白銀狼夫妻、更に執事のフレーズさんもお見送りに来てくれた。ちなみにフレーズさんは膝をついて畏まっているし……帰ろう、帰ってゆっくりしたい……。


「あ、カズヤ先生、ちょっとお待ちになって下さい」


 ゲートに入る直前にママさんに呼び止められた。なんだろう? またレシピかな?


「……アメリアですが、あの子、本気かもしれませんよ?」


 小声で衝撃的な事を伝えられた……嘘と言って下さい、お願いします……。四歳の花嫁は本当に世間が許さないので。


「せんせ~、また明日ね~!」



 アメリア邸からゲートに乗り、無事保育園に帰って来た。しかし完全に甘く見ていた……これほどまでに消耗するとは。


「どうするの? アメリアちゃんの事」


 ルーミィが放つ言葉が鋭く重い……どうしようもありません。時の流れを信じるのみです……。




 カランと澄んだ心地良い音が聞こえて来た。先ほど飲んだアイスコーヒーの氷が解けてグラスに当たった音だ。


 自室にてスライム料理のレシピを考えていた所であったが、そろそろ神ポイントの確認をして休むとしよう。


 氷が解けて水になったコーヒー味の水を残りの氷ごと口の中に入れた。味はともかく冷たくて心地良い。



 ――神ポイント――


 ・前日までの神ポイント 3364ポイント


 ・日常保育3人 6ポイント

 ・初めての家庭訪問 300ポイント


 ・現在の神ポイント 3670ポイント



 非常に大変な思いはしたがその分ノーコストで神ポイントが加算されている。やはりこの行事はボーナスがついたか。


「明日はソフィの家庭訪問……アメリアですらあの流れ……」


 ソフィとは確実に婚姻話になるだろう……特に番にこだわっているし、呼び名も変わる事が多いからなあ。


 でも何故、園児の家庭訪問で結婚うんぬんの話をしないといけないのだろうか……。


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