異世界104日目 7月13日(土) ③ビーチフェス ~水着コンテスト予選開始!~
ビーチフェス最大のイベント『水着コンテスト』その為に用意された、と言っても過言では無い特設ステージには、審査員席も設けられた本格的なものとなっており、その周辺は大勢の観客で埋め尽くされている。
イリアさんとルーミィは会場入りしてしまったので、少し離れて人だかりを眺めているのだが、これはとてもじゃないけどまともに見れそうにも無い。
「おや、カズヤじゃないですか」
爽やかイケメン勇者様、アレクである。まさかビーチフェスに来ていたとは。
「アレクもいらしていたんで……」
俺は気付いてしまった……目の前に映る残酷な現実を。
潮風に揺らされる髪ををかき分け、歯を光らせながら微笑えむ姿。
程よく日焼けした小麦色の体は引き締まっており、腹筋は6パックに割れ、腕も脚も細身ながら華奢さを感じさせないしっかりとした筋肉が付いている。
元の世界で例えるならプロボクサーのような、一切無駄の無い体である。
……タオルを! いや、服を! この際コートでも構わない! 恥ずかしい、自分の体が恥ずかしい! こんな完璧超人の横に居たくない!
俺、分かったよ……ルーミィの気持ちが……。
「どうしたんだい? いきなり崩れ落ちて」
「い、いえ。気にしないで下さい。ところでアレクも水着コンテストを見学ですか?」
イケメンマッチョ勇者様とてしょせんは男である。ナーシャさんには申し訳無いが、これは男の性である。
ふはは、分かる、分かるぞ! 同士よ!
でもナーシャさんが怒らない程度にしてね? いきなり真冬になっちゃうから。
「ええ、ナーシャが審査員をしてるからね。やっぱり自分の奥さんが一番だよ」
……俺をぶん殴って下さい、死なない程度で。
「ここからなら良く見えるでしょう?」
アレクは警備員と言う訳では無いが、面倒な事が起きた場合にすぐ対処出来るよう、最前列に席を設けられており、俺をそこに連れて来てくれた。
少々ずるいが、例の職権乱用しまくる村長に比べたら可愛い物である。
「みんな! 待たせたな! ビーチフェスの目玉イベント『水着コンテスト』開幕だあ!」
高々と開会宣言が行われ、観衆が大いに沸く。それはもはや雄たけびと表現する方が正しいだろう。しかし、そこは大した問題では無い。
何故そこに居る? クレイド……。
独特のマイクパフォーマンスを続けながら会場を盛り上げている。どうやら司会の役割のようだ。
「今年のコンテストは5人の美女がエントリーしてくれたぞ! 審査するのはレジェンドのお二人、イリアさんとナーシャさんだあ~!」
隣でアレクが笑顔を向けその先に居る華麗な女性、ナーシャさんに手を振っている。イリアさんが『動』であるならナーシャさんは『静』である。
露出はビキニなどと比べると断然低いが優雅さのある水着であり、セクシーよりも美しいと言う言葉が先に出る。
成程、これがレジェンド……ナーシャさんも過去三回優勝してたのか。
「それと! この俺、クレイドの3人でお届けするぜ!」
クレイドも審査するんかい! 貴方は何のレジェンドですか? そろそろ村長から引きずり降ろされたりしませんか? 少し心配だ……。
「だが、知っての通り、優勝を決めるのはみんなの一票だ! 宜しく頼むぜ!」
テンション高いな……まあ気持ちは分からなくは無いが。しかし以外と公平なルールだ。まさか投票制とは。
「まずは予選の開始だ! 五人の美女から二人が選ばれ、決戦の舞台で更なる熱戦を繰り広げるのだ! さあ、早速、水着美女達に登場してもらおう!」
大きな歓声が上がり順番に名前と特徴、謳い文句的な事を述べられていき、ステージに水着美女が並んでいく。まさに絶景である。お、次はルーミィの番だ。
「エントリーナンバー4番、白い妖精、ルーミィちゃんだあ!」
うわあ……とても恥ずかしそうだ、一切顔上げないし……。
「そして最後はこの方! エントリーナンバー五番、世界で一番可愛いと噂される神が生んだ奇跡、絶世の美女とはまさに彼女の為に用意されていた言葉であろう! ギルドより参加のフラムさんだあ~! もう可愛い! 可愛過ぎる! マジ天使!」
をい……。
個人的な感情を注ぎ過ぎじゃないか? 他の参加者と比べて明らかに贔屓してるし、最後の方は相当おかしな事を言ってるぞ?
しかし、フラムも参加していたとは。しかも何だあのメイド服は、いや、あれは水着だ。メイド服の水着か……いい、すごくいい!
「さあ、五人が出揃った所でそれぞれアピールをしてもらうぞ! イエーイ!」
ノってますね……まあきっとムフフメイドの水着を見たせいか。きっと嬉しくて堪らないんだろうな。
「お次は4番、ルーミィちゃんだ! どうぞ!」
おっと、いつの間にかルーミィの番か。他の参加者の方もとっても魅力的だ。つい夢中で見てしまっていた。
いつも注意してくるルーミィが居ないからじっくり見れる。ああ、幸せだ……。
「ル、ルーミィと、い、言います。す、好きな、た、食べ物は、お、美味しい、もの……です……」
噛み噛みの上、言ってる意味が良く分からない。相当テンパってるな。
「ううぅぅ……恥ずかしいよぉ……」
他の参加者は自分の体と水着を惜しげも無くアピールしてたいたが、ルーミィはラッシュガードを着ている。
これだけでも圧倒的に不利な上、顔を真っ赤にして下を向き、ずっとラッシュガードの端を引っ張っており、アピールどころではなさそうだ。
可哀そうであるが、これは予選敗退は確実だな。まあ、本人もそれを望んで――。
その瞬間、開幕した時と同じぐらいの歓声が沸きあがった。
「し、新鮮だ!」
「あの恥じらい、堪らない!」
「あんな子を嫁にしたい!」
「ルーミィちゃ~ん! 応援してるよ~!」
周りから聞こえる絶賛の声。どうやらあの自信の無さが逆に良かったと言うのか。
まあスライム製品を露店ブースで販売してるから顔見知りも多いし……あれ? これ予選通過しちゃうんじゃないかな?




