表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

89/288

異世界103日目 7月12日(金) ②ルーミィの女心

 

「スライム製品の売れ行きは如何でしょうか?」


「概ね好調だな。特にアイスの売れ行きがずば抜けている状況だ。保管の冷凍庫はまだ余裕があるから、もう少し作り置きしておいた方がいいな」


 おっちゃんとの給食プランも無事まとまったので、引き続き雑貨店へと足を運び、イリアさんとスライム製品の販売動向を確認中である。


 雑貨店には冷蔵、冷凍の保管庫が設置されており、商品のストックも可能となっている。これはナーシャさんの魔法によるものらしい。村一番の大店はハイスペックである。


「そうですか、となると、材料は前みたいに袋単位で仕入れた方が良さそうですね」


「ああ、そうだな。大量仕入れは使用する見込みと、保管場所があるならメリットが勝るからな。あの保育園なら十分スペースもあるし、それを選択しない手は無いな」



 その後、しばらく販売戦略を話し合い、ひと段落した所で、イリアさんから例のイベントの件を尋ねられた。


「ところでビーチフェスだが、カズヤ達ももちろん行くんだろ?」


「ええ、先程クレイドからお聞きしまして。ルーミィは葛藤中ですが」


「じゃあ、あたしと二人で行こう! 夕暮れのビーチにカズヤと二人……沈む夕日を背にふ、二人は……きゃ!」


「私、ビーチフェス行きます」


 イリアさん、乙女度上がってませんか? 先程の打ち合わせの時とのギャップが天と地ほどあるのですが……。


「いいのか? 海では常に水着だぞ? しかも人も大勢集まるし、女の子は注目の的だぞ?」


 そりゃあ……イリアさんはね。女性も含めて振り返ると思いますよ?


「み、水着じゃなくて普段着でも……」


「それはダメだろ。水着じゃないと海に行ってる意味が無いじゃないか」


「うぅ、でもお……」


「いや、待てよ……海に入ってしまえば水着じゃないルーミィは来れない。と言うことは、海に入ってさえしまえばカズヤと……」


「水着着ます。そして海にも入ります。二人きりにはさせません」


 イリアさん惜しいですね。妄想は心の中でするものですよ? なんかまだ二人で言い合っているがそっとしておこう……仲がいい二人だ、ほんとに。





 どうして? 何故? 分からない……自問自答を幾度も繰り返す。しかしその先にある答えには一向に辿り着かない。見えるのは永遠に続く深い闇のみ。


 全身が小さく震える、口が渇く、そんな状態なのに汗がこめかみ付近から一つ伝い落ちる。


 ルーミィが……あのルーミィが何故……。


 いや、もう自分の中では解決するのも、理解する事も不可能だ。問い正すしか無い。本人に直接……そう目の前に居るのだから……。



「も、もう一度宜しいでしょうか? 本当に夕食、いらないのですか?」


「う、うん……今日は、ちょっと……」


 あり得ない! 異世界に来た初日からおなか減った、おなか減ったと訴え、嫌いな物など聞いた事が無く、誰よりも幸せそうな笑顔で食事をするルーミィが!


 そして何より大好物の唐揚げ&ハンバーグを拒否するだと!?


「……イリアさんに診てもらいましょう」


「えっ!?」


 何かの病気かも知れない、神力では病気は治す事が出来ない。手遅れにならない内に一刻も早く!


「急ぎましょう、大丈夫です。イリアさんならきっとなんとかしてくれます!」


「か、和也、ちょっと落ち付いて……」


 落ち着く? 何を悠長なことを。そんな事を言っている場合では無い! 止むを得ない、少々強引になるが無理やりにでも連れて行く!


「すみません、失礼します!」


 ルーミィの体に手を回し、抱え上げる。俗に言うお姫様抱っこである。しかし軽い……いつもあれほど食べているのになんて華奢な体つきなのだ。いや、それが危険な状態とも言える。


「あぅ、わわわゎ……ス、スットプ! 和也!」


「しっかり掴まっていて下さい!」


 腕の中で暴れるルーミィだが離す訳にはいかな――。


「わ、私、ただダイエットしてるだけだから!!」


 ……こんなに軽いのに?



「ううっ……酷いよ和也……よりにもよって抱っこするなんて。重いのバレちゃったじゃない……」


 お姫様抱っこを解除した途端、そのままラグの上に崩れ落ち、丸くなってしまった。


「和也の作るごはん、美味しいからいつもいっぱい食べちゃってたし、これからは給食で食堂のごはんも毎日食べれるし、海に行くならずっと水着だし……」


 あ~、それで食堂でも頭抱えてたんですね。ダイエットですか、全くする必要無いと思うのですが……女心と言うものなのでしょうか。


「もう……私、ダメ……全部バレちゃった……顔も丸くなってきたし」


 どこが? いつものお美しいお顔ですが?


「腕もたぷたぷだし……」


 どこが? 触れれば折れてしまいそうなか細い腕が見えますが?


「脚だって太くなってるような気がするし……」


 どこが? 大変綺麗な御身脚でございますが?


「全然太ってません、むしろ痩せ過ぎです。さっきも抱いた時も……」


 あ、無我夢中だったけどルーミィをお姫様抱っこしちゃた……。


「……う、うん。抱かれた……」


 ラグを指でぐるぐるいじっている……いや、あの、あれはね、ちょっと慌てて……しかも抱いたって言ってもお姫様抱っこ! 抱っこですからね! 


「と、とにかく! ルーミィはダイエットなんてしなくても、十分綺麗で可愛いですから!」


「えっ……ほ、本当? き、綺麗で可愛い……」


 だああ! 何言っちゃてんの俺! 誤解、誤解なんです! おっさんはそんなつもりは無いって言うか、いや、確かにそう思ってはいるけど。じゃなくて!


「ありがとう、和也。心配してくれて……私、お腹すいちゃった!」


 真っ赤な顔して嬉しそうに席に戻り、笑顔で夕食を食べ始めた……まあ、いいか……。


 尚、その日の夕食の味は全く感じる事が出来なかった……。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
宜しければポチりとお願いします!小説家になろう 勝手にランキング
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ