異世界92日目 7月1日(月) ①保育園にプールが来た!
「わあ~! 葉っぱでたあ~!」
「……観察日記書く」
「ちっちゃいね~」
花壇に向けて述べられてる園児達の感想の通り、ついに朝顔の芽が出たのである。
ソフィに観察日記を付けてみるかと話した所、喜んで引き受けてくれ早速書いてくれている。少し覗いてみたが子供とは思えない程、絵が上手なのである。その絵を見てアメリアとソフィは『お~』と歓声を上げていた。
ドラゴンさんて器用なんですね……。
さつまいもの方も順調に育ってきており緑の葉が出てきている。こっちは神力の効果が出ているようだ。秋の収穫が楽しみである。
「お芋さん~お芋さん~、たくさんのお芋さん~」
サラはさすがエルフと言うべきか花壇や畑がお気に入りの様子である。謎の歌を歌いつつ毎日声をかけている。
さて、今日も晴天。昨日、ルーミィも雑貨店で散々揉めていたが、なんとか水着を購入出来たようだし早速その水着が活躍する『プール』を神力で具現化しよう。
……ルーミィの水着か。ど、どんなのだろう。
――余計な事は考えずに……イメージするのはビニールプールだ。大人も入れるぐらいのサイズの超キングサイズの物を……。
「わ~! おっきなはこ~!」
運動場に具現化させたのは大きなビニールプール。小さいな滑り台や小物類も合わせて用意してみた。もちろん、定番の黄色いアヒルも忘れていない。
よし、早速水を貯めてと。しかし、ちょっと大きく作り過ぎたかな? 少し時間がかかりそうだ。
「じゃあみんな、一度お部屋に戻ろうか。みんなに水着を渡すからね!」
遊戯室に戻り再び神力を使う為にイメージを膨らます。
――子供の水着と言えば……やっぱりアレしか思いつかない。まあ、仕方が無い。俺は女性はもちろんのこと、子供ともプールなんて行ったこと無いし。この知識しか無い以上、止むを得ない。
神力の白い光が消えた後に残ったのはスクール水着だ。尚、アメリアの水着には尻尾の穴を開けたものを具現化した。
「和也先生……」
あ、ルーミィがジト目で。ご存知だったのですね、この水着の存在。だって仕方無いじゃん! 俺の中で子供の水着ってこれしか思いつかなかったんだもん!
まあ……胸の部分に付けている名前をひらがなにしたのは余計な知識が入っているかも知れないけど……。
「……可愛い」
「尻尾の穴ある~!」
「うんしょうんしょ……」
「ルーミィ先生! サラちゃんを! 早く!」
もう脱ごうとしているよ……この子。もう、わざとやってるんじゃないだろうか。さすがエロフの血を引くだけある。
園児達に着替えはルーミィに任せ、俺は園長室で着替え一足先にプールの様子を見に向かう。結構水が溜まってきており、音を立てる水の音、そして波紋が涼しげである。
しばらくすると園児達の声が聞こえてきてスクール水着姿で駆け寄って来た。一人、幼児らしからぬスタイルの子がいる。ちょっとだけだが名前が横に広がってしまっている……。
「かずやせんせ~! おみずいっぱい~」
「……この服、涼しい」
「お風呂~」
よし、サラ、水着を脱ごうとしないで。カズヤ先生、ルーミィ先生に殺されちゃうよ? まだ生きたいんだカズヤ先生は。
サラの勘違いを至急訂正し、園児達にプールに入る際の説明を行う。その間にプールの水も溜まったようだ。
「よ~し、まずは準備体操をしてから……ってルーミィ先生は?」
ルーミィの姿が見当たらない、まだ着替えているのだろうか。うん? 遊戯室の入口で顔だけ出してこちらを見ているじゃないか。何をしているんだ……。
「ルーミィ先生~! 早く来て下さ~い! 園児達待ってますよ~!」
声をかけるとやっとこちらに向かって歩き出してきたのだが、その姿に思わず見入ってしまった。
水着自体は白いラッシュガードで隠れて見えないが、長い髪は以前プレゼントした桜の髪留めでひとまとめにされ、艶やかさが出ている。
水着の露出こそしていないが細く長い脚は見えており、その破壊力は計り知れない。100人中100人が振り返る程の美少女だ。
「は、恥ずかしいからあまり見ないで……」
うわ~、さっきまではちょっと楽しみにしていましたが、目の前に来られると全く俺の手には負えません。ムリです。眩し過ぎます……。
「あ、あの……す、すみません。で、でもとてもお似合いですよ……」
「えっ……ほ、ほんとう?」
萌袖状態でラッシュガードの裾を引っ張りながら照れている様子は、見ているだけでこちらが恥ずかしくなってしまう……。
尊い。実際に女神様だから言葉の意味も間違ってはいない筈だ。こんな光景を見られる日が来るとは。俺、生きてて良かった……。
残り三年弱で消滅しちゃうかも知れないけど……。




