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異世界1日目 4月1日(月) ⑤大事な事は先に言って

 

「おお~、広い」


 一面ピカピカのフローリング、保育園の遊戯室を見ての感想だ。


 三度の絶望からなんとか立ち上がり、今は女神様と保育園の中を散策している。


「ここは……園長室か」


 まっさらなデスク、テーブルにソファ。どうやら全て新品のようであり部屋には埃一つ落ちていない。


「ふっかふか~」


 来客用であろうソファに座り、おくつろぎなさっている女神様……気楽なもんでございますね! ほんと! はっ! いかん! 心の声は筒抜けになるんだった。


 ――精神持つかな、俺……。


「女神様、他の部屋に参りましょう」


「おっけ~!」


 ……にしても口調が軽いな。いや、いいんですけどもね。最初との印象が違い過ぎて少々戸惑ってしまってるだけですから。


「寝室、のようですね」


 室内にはベッドがあり、シーツや毛布なども綺麗に添えられている。


 他にはクローゼットとデスクが設置されており、イメージとしてはビジネスホテルに近い。お風呂やトイレは付いていないみたいだ。


 尚、この間取りの部屋は何部屋かあり、とりあえず俺と女神様の寝床は問題無いようだ。尚、リビングといった居住空間も存在しておりテーブルにイス、ソファーに床にはラグなども敷いてあり、大変くつろげそうである……今はそれどころではないが。


 そのまま散策を続けているとある空間を見て、足が止まった。そしてこの世界に来て一番最初に心が躍った瞬間だった。見つけたのだ。


『キッチン』を。


「うおおおお! レンジやオーブンがある! しかも大容量業務用タイプ! 調理器具も一通り揃ってるし何より物もいい! おお! 鍋もいろんな種類が、中華鍋まで! 包丁も種類豊富!」


 ありがとう! 上司さん! この設備があれば調理に困る事は無いです!


「え、あ……そ、そう」


 女神様、ちょっと引いてますね。でも大切な事なんです。生きる為に必要な設備ですから。


「にしても電気やガス、水は一体どんな仕組みで成り立っているんでしょうか……」


 蛇口をひねり、お湯が出てきた所で当然の疑問が声に出てしまった。だってこのレンジとか日本製だよ?俺も現実世界でも欲しかったやつだし……。


「私もよく分からないけど、魔法じゃないかな? でも使いたい放題なんだって」


 さすが異世界ですね。魔法の一言で片付いちゃうんだ。でも電気代やガス代がかからないのは素晴らしい!


 あ……そういえばお金、一切持って無いぞ。いや、持ってた所でこの世界では使えないか。



 一通り散策を終え、今後のするべき事を確認する為に園長室に戻ってきた。


「さて、女神様。いくつかご質問があるのですが」


 まずは神ブックそして神力の使い方を把握しておく必要がある。そのために女神様の再研修を引き受けた訳だし――


 あ、やばい! 失礼な事を考えてはいけない! 邪悪な心よ去るのだ! 


「うん、いいよ! でもその前に……」


 やっぱりバレてた! すみません! すみません! どうかご慈悲を!


「さっきから女神様、女神様って呼んでるけど上司も言ってたよね? 私の名前はルーミィ。それに私も寿さんって呼ぶのも他人行儀で肩が凝るからこれからは和也、って呼ばせて貰うね!」


 そっち!? 全然構いませんが……。


「お仕事口調は疲れるんだよ。やっぱ自然体が一番だね!」


 なるほど。こっちが地か。神様に対して失礼な気もするが女神様本人がそう言うなら従うしかない。


「わかりました、それではルーミィさん。と呼ばせて貰いますね。まずは神力についてですが……」


「うーん、固い口調のままだね」


 これでも精一杯ですから。女性とフランクなトークなんて俺には出来ません。それが出来てたらちょっとアレな世界なんて望まずリア充してますから。


 女神様改め、ルーミィさんから神力と神ブックについてお話を聞かせて戴いた。神力については上司さんから聞いた基本条件の他に、神ブックが媒体になるらしい、つまり触れている事が発動の条件だ。


 しかも起こす事象によってポイントの消費は異なるとの事だ。


 仮に火の魔法を使うとした場合、マッチクラスの魔法と火炎放射クラスの魔法では大きくポイントが違うらしい。しかも消費されるポイントは事前には分からず、消費した後に請求が来る仕組みときたもんだ。


 怖くて使えない……。何も考えずに使用してしまうと一発で詰む可能性がある。小さい事から試していき相場を確かめなければ……。


 使えない万能の力とはいかがなものか……。


 神ポイントを増やす方法については保育園に関する事象を達成、または行う事で増えるらしい。つまり園児を迎え入れ、保育を行う必要がある。


 他に神ブックには素晴らしい能力があるようで、ペンが無くてもイメージするだけで書き込め、また過去に書き込んだ内容もイメージしながらページをめくれば再生出来るという優れ物だ。


「ありがとうございます。大まかな所は理解致しました」


 丁寧、無礼の無いように言葉を選び、心を無にする。なんか悟りを開けそうだ。


「なんか、妙に気を使ってると言うか、何と言うか……。あ、ちなみに私の神力は和也が持ってるから私は一切神力は使え無いよ。普通の人と一緒で見ての通り、ただのか弱い女の子だからね」


 心読めないんかーい!!  


 そういう事は先に言っててば! 今までずっと精神擦り減らしてたんですよ? 無駄に精神的苦痛を味わってたじゃないですか……。

 

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