異世界1日目 4月1日(月) ④上司さんの策にはまる
「神力使用で消費された神ポイントには下限値はございませんが、マイナスになり、使い過ぎると取り返すのが困難となりますので計画的にご使用下さい」
ダメじゃん! 神様の力、使ったら帰れないじゃん!? 貯まらないじゃん!?
「あと、神力が使えるのは試練の期限と同じく三年としております。尚、その期間内に達成出来ない場合はペナルティとして、もれなく消滅しますので意地でも10000ポイント貯めて下さいね」
ふふっ、今日三度目だよ。地面に両手両膝付けるの。そっか、俺、この短時間で三回も絶望したんだ。もう冷たさにも慣れたよ、あはは……もうこのままの状態で話聞こう……。
「あと、そこの女神、ルーミィと言う者なのですがミスが目立ちますので、人界で再研修を行う事にしております。期間は三年間として再研修中は神力が使えないよう私の方で預かっていたのですが、それを寿さんにお渡しさせて戴きました」
あ、そう。受けとった神力って女神様が持っていた力だったんですね。
「実は神ブックには様々な機能がありまして。ルーミィはそれらを全て知っております。そうそう、人界には送りましたがまだ研修先も決まってなくて。どこかに情報と人手が欲しい方が居ればいいのですが……」
この上司さん、本当やり手だな……情報と面倒係をくっつけた言うなれば抱き合わせ商法だ――違法ですよ? でも情報も人手も無い俺はこの条件を飲むしかない……。
「……ちょうど人手が欲しいと思っておりまして。女神様の研修先を私の保育園にして貰えないでしょうか……」
「おお、そうでしたか! それは都合が宜しいですね! こちらからも是非ともお願い致します!」
おのれ、策士め……。
「あの、ひとつ宜しいですか? 三年の縛りが多いように感じますが何故でしょうか?」
「おそらく、寿さんが当初思っていた高校生活が三年だからではないでしょうか? なので神ブックの期限もそれに付随したのかと思われます。神力とルーミィの期限はそれに便乗させて戴いた訳ですが」
高校は三年間だもんね。てもそこはねじれずに三年なんだ……。
「――それでは私はこの辺りで。何かお聞きになりたい事がございましたらいつでもご連絡戴ければと思います。それでは失礼いたします」
ふふ、ふはははは。立ち上がれない。立つんだ、俺……。
「大丈夫だよ! 私が付いてるよ!」
可愛らしい胸を張り、腰に手を添えている。俗に言う『大船に乗ったつもり』の構えだな。
でも正直心配です、女神様……貴女のせいでこの状況になってしまったんですよ? 再研修の面倒係までなすりつけられた身にもなって下さい……。
いや、前向きに考えよう。住む所はあるし神の力、神力だっけ? これもリスクはあるが生きていく為には非常に有効じゃないか! それにちゃんと帰る方法もある訳だし。それよりも……。
女神様の方を見ると首を少し傾けてこちらを見ている。
「うん? どうしたの?」
改めて見ると物凄く可愛い。何度見ても可愛い……。
そう、これから三年間、女神様と生活していかなければならないのが一番の不安だ。プライベートに関しては女性とまともに喋る事もほとんど経験していないのに、いきなりの共同生活だ。
彼女いない歴=年齢のおっさんにはハードルが高過ぎやしないか? むしろムリゲーじゃないか?
「よ~し、頑張っていこ~!」
高らかに手を挙げてらっしゃいますが、大丈夫でしょうか……神様が再研修させられるってどれだけのミスをしたんですか。もう、胃が痛いんですけど……。