表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

44/288

異世界34日目 5月4日(土) 元の世界にあって異世界に無いもの


 今更であるがこの世界にはGWは無い。ここは日本では無いから当然建国記念日とか子供の日は無いのである。その為、今日も朝からせっせと村でタピオカミルクティーとクッキーの販売に精を出している。


 このイベント広場で露店販売していて分かったのだが、実は多目的に使われているようだ。コンサートを開いている時もあったし、スポーツ競技やフリーマーケットみたいなのも開催されていた。これらは村長の村活性化の意向らしい。


 だが実態は武器屋食堂のおばちゃん曰く、イベントが大好きなだけとの事だ。まあ、悪い事じゃ無いんだけどね。


 ちなみに本日の売れ行きも好調である。なにせルーミィの技術力と俺の調理技術が合わさっている訳なのだ。人気爆発である。



 お昼を少し過ぎた頃には完売御礼となり、遅めの昼食を取るために武器屋食堂に向かうことにした。これはある事を確認する為である。


 しかし横を歩くルーミィの足取りは非常に軽やかだ。この子は食堂に行けることで胸がいっぱいのようだ……胸がいっぱいか、いや、心の中に留めておこう。



 ロングソードが二本重なる看板の店。武器屋では無く食堂に到着だ。扉を開き、テーブルのある部屋へと足を進める……あんな鎖鎌あったけ? なんか微妙に配置が変わっているような気がする……。


「おや、いらっしゃい! 好きな席に座っておくれ!」


 大変威勢の良いお声である。しかし妙に安心する声でもある。まさにお袋って感じだ。少々お昼の時間から過ぎている為、お店には俺ら二人しか居ないようだ。


 ルーミィは席に着くなりメニューを食い入るように睨みつけ、アレもいい、コレも捨てがたいなどと小声でブツブツと呪文でも唱えているかのようである。


 持っている物がメニューでなければ確実に魔法を発動させようとしている魔法使いに勘違いされますよ? ここ、剣と魔法の世界ですからね。


 そんなルーミィを尻目に当初の目的を果たすべくメニュー表を開き、端から全て目を通していく。食べたいメニューを探すのでは無く、ある法則を探っているのだ。



 全てのメニューを一覧し、静かにメニューを閉じ、元にあった位置に戻した。


 ――やはり、思っていた通りだ。やっぱりこの世界にはアレを使った料理が一切無い。


 ルーミィも究極の二択を決断したようでやり切った顔をしている。労をねぎらう為にも早く注文をしてあげよう……。俺も同じものでいいや。ルーミィが悩み抜いたものなら間違いは無いだろうし。


 おばちゃんと世間話を少々交えながら注文を伝えた後にルーミィに本題を切り出す。


「ルーミィさん、今度のスライム料理の新製品が決まりました。そして今後の基本ともなる料理方法も暫定ではありますが固まりました」


 それまでルーミィは注文した料理を妄想していて上の空だったが『スライム料理の新製品』と言うパワーワードでこちらの世界に戻ってきてくれた。


 お願いだから勝手に異世界に行くのは止めてもらえませんかね?


「なになに!? また和也の世界の美味しい料理を作るの!?」


 この世界の料理は元の世界と酷似している。ハンバーグもあればパスタだってある。牛や鶏、豚も居るのだ。そんな中で只一つ無いものがあった。


『出汁』の文化だ。


 正直、食堂の味やギルドの料理は俺が作るものより遥かにレベルが高い。しかしそれも当然の話だ。俺は料理が好きなだけであって本業はしがないサラリーマンだ。料理で生計を立てている彼らには遠く及ばない。


 故に今まではスライムを用いったアイデアを使い、元の世界の料理をアレンジして発売してきたのだ。和菓子の存在や出汁の文化が無いと言うのも日本食の文化が無いと言う派生であろう。


 だが、出汁を使った料理であればこちらに一日の長がある。このジャンルならば勝機を見出せる!


 日本人で良かった! 彼女が出来なくて将来を見据えて料理を覚えて良かった! 関西に生まれて突っ込みを覚えて良かった!


 後半はおまけなので伝えないがこの内容をルーミィに話す。もちろん、ルーミィにも出汁の意味が分かっていないが、その二つの大きな瞳は新たな料理への期待に満ち溢れていた。


 注文した料理が届いたのでここでの話は終了とした。まあ、ルーミィが目先の料理を優先しただけなんだけど。


 そうだよね、今はそっちの方が大事だよね……。


 それにしてもやはり美味しい。注文したのはミートスパゲティーだ。麺はアルデンテでミートソースはジューシかつ、とてもフルーティ。このソースにも相当手を込めているな……。


 お値段もリーズナブルであり、いつも昼時に満員なのも頷ける。



 食事も終わり、帰り際におばちゃんから園児達を連れておいでと言われた。願っても無い申し入れであり、校外学習の一環とし利用させて欲しいとこちらからもお願いさせていただいた。週に一度は村に来るのも行事に入れてみるのもいいかも知れないな。



 再びイベント広場に戻り、日差しを避ける為、屋根のあるベンチに腰をかける。


「さて、先程の話の続きですが、新製品の名前を発表します。それは『そうめん』です」


 夏の代名詞とも言えるメニューである。喉越し爽やかで暑い日なんかはキンと冷やした麺をつゆにくぐらせ一気にすする! そして毎日食べると飽きてしまうあのそうめんである。


 正直、あの細さの麺を再現することは不可能かもしれないが出来る限り近づけたい。せめてパスタぐらいの太さには辿り着きたい。


「初めて聞く名前でどんな料理か分から無いけど、和也が作るならきっと美味しいよ!」


「しかしながらこの料理には2つのハードルがあります」


 そうなのだ。まず第一に俺があの細麺を作り出せるかが課題である。そしてもう一つ、出汁の元になる食材だ。これには昆布や魚が必要となる。しかしここは異世界。出汁の文化が無い世界でどこまで揃えれるかが問題だ。


「一つは私の技量、そしてもう一つの問題は食材です。これを解決する為にはイリアさんに相談して、入手が可能かを確認する必要があります」


 先程まで期待と希望に満ちていたルーミィの顔色が一気に曇り、不機嫌そうな表情になってしまった。露骨に嫌がっているのが手に取るように分かる……。


 一週間程前からルーミィにはイリアさんを見てはいけない令が施行されており、雑貨屋への買い物はルーミィが行っている。しかし今回は特殊な食材を頼むのでルーミィでは少々荷が重い。


「むう……。そんなこと言ってイリアさんに会いたいだけなんでしょ!?」


 何故そこまでイリアさんから遠ざけようとするのだろう……。確かにあの服装とバディはずっと拝んでいたい気持ちにはなるが……。


「ほら! やっぱり下心がある顔してる!! やっぱりダメ!!」


 おうううっ、俺……。


 しかしこのままでは死活問題になることを伝え、雑貨店に行くときは必ずルーミィと一緒に行く事を条件に、イリアさんを見てはいけない令は解除されることとなった。



 イベント広場から雑貨店は目と鼻の先にある。今俺はルーミィの絶対監視の下、イリアさんに調達して欲しい食材の相談をしている。


「海のものなら入手は難しくないぞ? あの山を越えればすぐ海だからな」


 そう言うとイリアさんはさくら保育園の大樹の奥の山を指さした。


 えっ? あの山越えたら海だったの?


「ただ、魚自体の入手は簡単なんだがカズヤの言う『カツオブシ』というのは流石に店頭には無いな」


 まあ、ダメ元で聞いてみた結果だ。となるとやはり魚から出汁を取る事を考えないといけないか。


「ちょっと時間はかかるが港町にツテがあるからそこで加工する手もあるぞ?」


 そんな事も出来るんですね! さすがセクシー商人! カツオ節が手に入るとなれば料理の幅は大きく広がる!


「あ、そうそう。この前頼まれていた本をしまうホルスター出来てるぞ、ほら」


 おお! 中々かっこいい! ベルトに付けてと。うん! ばっちりだ。これでいつでも神力が使える。出来ればそんな事態にならないで欲しいが。


「おお、似合うじゃないか! それじゃあ入荷したら知らせるぜ! カ・ズ・ヤ」


 またそんな口調で……まじで勘弁して下さい。ほら、あなたの言葉でルーミィから冷気にも似た怒気が流れ込んで来てますから。


「か・ず・や!?」


 俺、何もしてません……。同じ言葉でも口調でこうも変わるとは……悪いのあそこの露出の高いお姉さんです。



 今話で十万文字突破しました! PVも累計一万を突破し、ブクマ登録も沢山の方から頂け、改めてお礼申し上げます。何よりの励みとなります!


 引き続き皆様にお楽しみ頂けるような小説を執筆して参ります、本作をお気に召していただければで構いませんのでブクマ、評価、お待ちしておりますので宜しくお願い致します! 感想やレビューなどもお気軽にどうぞ! 今後の執筆の参考にさせて頂きます!


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
宜しければポチりとお願いします!小説家になろう 勝手にランキング
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ