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異世界1日目 4月1日(月) ③女神様ときどき絶望

 

 よし、まずは自分の気持ちを抑え込もう。相手は女神様であり心も読めてしまうのだ。下手な事は考えてはいけない。


「あの、女神様? 状況のご説明をお願いしても宜しいでしょうか?」


「あ、うん。実はね、さっきも言った通り転移に失敗しちゃって。そのせいで寿さんがイメージした世界とは大きくかけ離れたこの世界に転移させちゃったの」


 でしょうね! 普通にスライム居たし!


「あの、転移をやり直して貰えないでしょうか? 流石にこの世界での生活はちょっと……」


「あ、転移は神界でしか行えないの。それと転移出来るのはお一人様一回限りなの。じゃないと同じ人から何度もオファー来ちゃうからね」


 力が抜け落ち両手両膝が再び地面に付いてしまった。本日二度目だ。絶望を味わうの……ああ、冷たいですね、地面……。


 それって俺の人生詰んだって事ですよね? 転移出来ない条件全て当てはまってるじゃないですか……。


 責任者出て来い!!


「でもね、今回は神サイドのミスだから特例措置が取られたの。それで寿さんが居た元の世界に帰れる方法を私が伝えに来た訳なの」


 それを早く言って下さい! 女神様! 帰る! お家に帰って暖かい毛布にくるまりたい!


「わ、分かりました! それでどうすれば元の世界に帰れるんですか!」


「お、落ち着いて。それはね、私の上司から説明してくれるから。その白い本を手に取ってどのページでもいいから開いてくれる? そして『神界に繋がれ!』ってイメージして欲しいの」


 あ、責任者って本当に居るんだ。神社会もやっぱりそういう感じなんですね。なにはともあれさっきの本だ!



 ――よし、神界に繋がれ!!



「寿さんですね? この度はこちらの不手際により、大変ご迷惑をおかけしましたことを心よりお詫び申し上げます」


 いきなり謝罪!? こ、これは俺も多用していた中間管理職必須のクレーム対策技術じゃないか!


 相手の口撃よりも一手早く謝罪を述べることで相手の出鼻をくじき、交渉をスムーズにさせる高位にあたる技! この技を使えるようになるには相当な失敗を被らなければ身に付けることは出来ない。


 上司さんも苦労しているんですね……。


「い、いえ。それよりも特例措置があると伺ったのですが」


 しかし本に向かって喋るのは中々新鮮だな。どんな仕組みなんだろう……。


「はい、この度はそちらにおります女神の不手際により、本来望まれた世界とは異なる世界へ転移させてしまった為、元の世界に戻る方法をご用意させて戴いたのですが、転移するには条件がございまして、私どもの方でも対応が非常に困難な事例となっております」


 さっき女神様が言ってた事だな。


「そこでその白い本、神ブックと呼ばれるものなのですが、そちらをご利用戴くことで寿さんの願いが叶う仕組みをご用意しております」


 くっ! 親切かつ丁寧な説明でゴネる場所、タイミングが無い! かなりのキレ者、そして苦労人であることは間違いない!


「で、では願いを叶える仕組みというのは一体どの様なものになるのでしょうか?」


 こうなったら素直に従うしかない。強引に責める事は出来なくも無いが、『じゃあ、お好きにどうぞ』などと見限られる可能性もある。


「はい、この神ブックで願いを叶えるには試練をクリアする必要がございます。その試練はこちらの方であらかじめ設定しております。あ、万が一ご期待に添えない場合は変更も可能ですので」


 ずいぶん準備がよろしい事ですな。


「本来、寿さんのイメージしたギャルゲーと呼ばれる世界感とは大きくかけ離れておりまして」


 きゃっ! 恥ずかしい! 女神様の上司の方までギャルゲーって……。神様達がバンバン使う言葉では無いですから。


「今そちらに見えます建物は高校では無く、保育園となっております。またそれに伴って、対象の女子高生は幼児に変わっております。お弁当イベントやパンを咥えた女の子にぶつかるイベントもございません」


 上司さん! ギャルゲー知ってますね? 絶対プレイしたことありますよね!? 


「神ブックでは対応する試練は神ポイントと言うものを貯める事になります。それを10000ポイント貯めることによりどのような願いも叶う仕組みになっており、その試練の内容は保育園の運営としております。尚、期間は三年の制限もございますので合せてご了承お願いいたします」


「三年以内に10000ポイントかあ。って保育園を運営するの! ムリですよ! そんなの! だいたい俺はただのサラリーマンですよ!? 教育機関に勤めてもいませんし!」


「お気に召しませんでしたか。他の試練ですと、『世界の魔王討伐』であったり、『世界に散らばる秘宝を集める』後は、『ドラゴンを倒そう!』などがございますが」


「保育園の運営に尽力させて頂きたく思います」


 他の試練がまさに試練だ。到底三年じゃ無理だし多分、いや、確実に達成前に死ねる。


「かしこまりました。それでは神ブックの試練は保育園運営に設定しておきますね。あと、この度の不手際に対するお詫びを用意致しましたので、ご笑納戴ければと思います」


 えっ! なんかくれるの! 貰う貰う! こっちは丸腰だし。貰える物は何だって貰う!


「まずは保育園なのですが、こちらは寿さんが住む場所として機能出来るよう電気、ガス、水道などのライフラインは整えておきました。居住空間並び最低限の保育園として建物、内装も整っております」


 これは非常にありがたい! とりあえず住む場所が有ると無いとでは雲泥の差が出る。


「続きまして、寿さんには私どもが使う神力かみりきをご使用戴けるよう神ブックをお手に取った時にすでに対応済です。万能な能力でイメージするだけであらゆる事象を再現、具現化する事が出来ます」


 あの体に吸い込まれた白い光はそういう意味があったんだ。てか神の力使えるの? 大盤振る舞いじゃね? 完全にチート能力じゃん! 


「ただし、死に関するもの、精神に関するもの、病やそれに付随するような症状は非対応となっておりますのでご注意下さい」


 非対応な事はなんとなく分かる。死はまあ、当然と思うし、精神操れたらズルになるし、でも病気とかは駄目なのかあ。風邪引かないようにしないと。


 でもその能力があればなんとかなりそうだ。さっさとポイント貯めて元の世界に帰ろう!


「ただ、神力かみりきを使うと神ポイントが消費されます」


 なんですと……?


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