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異世界3日目 4月3日(水) ①スライム水まんじゅう爆買される

 

 今日も肌が痛い。では無かった……肌寒い。


 昨日は散々であった。まあ、自分がまいた種だけど、首を絞められ、ひっかかれ……。あの誠意の土下座でなんとか許してもらえたがあの後の風呂はきつかった。傷口が染みること、染みること。ぜんっぜんリラックスできなかった……。


 今後ルーミィには胸の事は一切触れないでおこう。あれは逆鱗だ。


 キッチンに立ち、朝食のパンとコーヒーを用意する。多分あの子はカフェオレぐらいがちょうどいいだろう。ブラックはきっと飲めないような気がする。


「おはよう~」


 先日の普段着とは違う新しく購入した服を着ている。しかしイリアさんのセンスに脱帽だ。お任せで頼んだものであるが、俺とルーミィの特徴に合わせた服をチョイスしてくれている。サイズもぴったりだし。


「おはようございます。朝食の準備出来てますから召し上がって下さいね」


「わ~! ちゃんとした朝食だあ!」


 ご機嫌に朝食のパンに噛り付いている。とりあえず餌付けだ。これで機嫌は保てる!


 さて、今日はスライム水まんじゅうの大量生産だ! あんこは昨日、傷の痛みに耐えながら作ってある! 一気に仕上げて午前中から販売するぞ!





「おっ! スライム水まんじゅう売ってるのか!」

「私、四個下さい!」

「俺は五個くれ。家族にも喰わしてやりてえ!」


 超大人気だ。こんなに売れるものなのか? 今日からはお持ち帰り用の紙パックを用意している。これでテイクアウトも出来るようになった。


 しかしあれだけの数が僅か2時間で完売とは。売上袋が重いぜ! ふはは! しかし今日はまとめ買いする人が多かったな。リピータさんが多い証拠かな?


 あと、あれだ。ルーミィ効果だ。あの笑顔が大きく売上貢献してくれている。おっさんの笑顔ではそうはならない。


「お疲れ様です、ルーミィさん」


「今日も全部売れたね! あれ? 2個余ってる?」


 片付け中にルーミィが気付いたようだ。その2個は持っていく宛があるのだ。


「ええ、武器屋食堂のおっちゃん、おばちゃんに食べて貰おうと思って。あと、もうお昼なのでついでに昼食を食べて行きましょう」


 お腹を空かせて不機嫌にする訳にはいかない。それに稼ぎも想像以上だ、食堂で食べる分程度は何の問題も無い。


「……もう怒ってないから気を使わなくていいよ。でも女の子にあんなこと言っちゃダメだからね!」


 はい、反省しております。とりあえず本人の口から改めてお許しが出たので安心した。


「でも、食堂のご飯は食べたいから早く行こう!」


 ……やっぱり食事は最優先なんですね。



 イベント広場から一つ筋を曲がった所に武器屋食堂がある。


 しかし何度見ても武器屋だよなあ、ここは。あ、ルーミィがスキップで店に入って行った。危ないよ、そこら中に刃物がある店だから。


「おばちゃん! また来たよ~!」


「失礼します。昨日はお世話になりました。これ、よかったら召し上がって下さい」


 そう言ってお持ち帰り用の紙パックに入れたスライム水まんじゅうをおばちゃんに渡す。


「あら、気を使わなくてもいいのに! あんた! カズヤさんが例のスライム料理持って来てくれたわよ! さ、ちょっと混んでるけどあそこが空いてるから座って頂戴。後で注文取りに行くから」


 おばちゃんが教えてくれた席に腰掛ける。なんか禍々しい斧が目の前にあるが……気にしないでおこう。


「さあ、お好きな物を頼んで下さい」


 メニューを眺めてみるとやはり元の世界と変わらないラインナップである。しかし、何だろう。違和感を感じる……。


「和也! 私、コレ! コレにする!」


『おすすめ! ボリューム満点!』


 あ、うん。今おっさん考え事をしてたんですが。なになに? ハンバーグセットですか。美味しそうですね。それにしてもこの違和感は……


「いらっしゃい! お二人、何にする?」


 おばちゃんも来てしまったか。まあ、この妙な違和感の原因はまた今度考えるとしよう。


「このハンバーグセットを2つお願いします」


「あいよ! 特別に大盛りにしといたげるよ!」


「やったあ!! 私、私嬉しい……」


 泣かないで、大盛りになっただけで。ちゃんと食べさせてるでしょ! まったく。




「カズヤ、ちょっといいか?」


 食事を終え、帰る直前におっちゃんに呼び止められた。何だろう?


「スライム水まんじゅうありがとな。美味かったぜ。だが、あの中身はなんだ?豆を甘く煮たものだろうが」


 この世界では未知の料理であろう『あんこ』の事を食材レベルで当てて来るとは。やはり只者では無い。凄腕の料理人だ、この人は。


「流石ですね。おっしゃる通りです。あれは『あんこ』と呼ばれる料理です」


「かあ~っ! まいったな。俺もまだまだだな! あんな調理法があったとは。また新しい料理出来たら食わしてくれ! サービスするからよ!」


「はい、まだまだ案は持ってますので、新作が出来たらまたお届けしますね」


 おっちゃんに褒められるとなんだかすごく嬉しい。料理人の血が騒ぐな。あ、保育園の仕事まだ何にもしてないや。血を騒がせている場合じゃないな……。





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