異世界2日目 4月2日(火) ④ずっと思ってたんですが……
今日の夕食は、とろける半熟加減のふんわり卵の黄色い誘惑、オムライスだ! ……おまけしておくか。ケチャップで『ルーミィ』っと。
「ふわああああ!」
リビングにオムライスが並べた所、奇声が上がった。雄たけびなのか? 感動の現れなのか? いったい何の部類に位置する声なのだろう。
「かわいい! そしておいひぃい!」
褒めるのか食べるのか、どちらか一つにしていただきたいものです、女神様。
さて、十分にオムライスを堪能してもらった後は労働していただきましょうか。働かざるもの食うべからずである。お付き合いしてもらいましょう、スライム採取に。
「ルーミィさん、そっちの草陰に居ますよ。あ、その奥にも」
「ま、まだ取るの……」
当たり前である。明日は大量生産する予定なので頑張っていただきたい。もちろん俺も頑張ってるが。
「ちょっと、休憩~」
桜の大樹の根元に腰を下ろす美少女。月明かりに照らされ、それだけで絵になってしまう所が素晴らしい。
「そうですね、少し休みますか」
満開の桜が夜風に揺られ、ひらひらと花びらを散らせている。
……異世界か。本当にとんでもない事になってしまったものだ。今頃、元の世界はどうなっているんだろうか。言えることは今後、無断欠勤になるのは間違い無い。いや、行方不明扱いだな。3年程かかる訳だし。
「……和也」
声がかかったのでルーミィの方を向くと上目で少し悲しげな表情を向けられていた。
俺、そんな不安な顔をしていたのだろうか。いかん、いかん、こんな若い子を心配させてはおっさんとして失格である。しっかりせねば!
「――さあ、園に戻りましょう。もちろん、スライムを探しながらですよ」
「やっぱりまだ探すんだ……」
園に戻り大量のスライムをキッチンに置き、ルーミィには先にお風呂に入ってもらっている。
この保育園、居住空間としては素晴らしい出来で、キッチンの他にもお風呂なども現代風であり、24h風呂である。電気代もかからないから大助かりだ。電気もリモコンで付くし。
「女の子との共同生活は気を使うなあ……とりあえずコーヒーでも飲むか」
異世界生活二日目も終わろうとしているが、一応、神ポイントの確認をしておこう。進捗確認は怠ってはいけない。たとえ何も無くても確認は必要だからな。
って、悲しいかな社畜の心得が全面に出てしまう。まあ、この件に関しては感謝だ、ズボラやってると後で取り返し付かなくなる。
――現在の神ポイント――
-800ポイント
うん? 昨日は-1000ポイントだった筈。いったい何があったんだ?
……そうか、神ブックへのイメージを変えよう。収支も確認項目に加えればいいんだ。やっぱ社畜は一度くらい経験しておくものだな。異世界で活きる!
ふざけてないで早く確認しよう……。
――現在の神ポイント――
・前日までの神ポイント -1000ポイント
・保育園の認可取得 200ポイント
・現在の神ポイント累計 -800ポイント
これで詳細な事が分かる、よし、これからはこれをベースにしていこう。
なるほど、今日は保育園の認可を貰ったことがポイントに加算されたのか。いわば初回ボーナス的なものだろう。このポイントが付いたと言うことは俺の考えは間違っていなかった訳だ。
「ふう! とっても気持ち良かったよ!」
……危ない、神ブックにコーヒー吹き掛けそうになった。そうだ、ルーミィお風呂に入ってたんだった。可愛らしいパジャマである。ルーミィにとても良く似合ってる。さすがイリアさんチョイスだ。
「あ、神ブック見てたの? どう? ポイント増えてた?」
そう言って手元の神ブックを覗きこんで来た……お風呂上りの女の子が急接近だと? そんなもの俺の人生の辞書に載っていない。
「あ、いえ、その。え、ええ。保育園の認可で増えてました」
「すごい挙動不審な態度取るね。――さてはお風呂上りの美少女を見て取り乱しちゃった?」
ええ、その通りでございます。っというか17歳の子にからかわれるとは。大人の威厳が台無しである。少しぐらいは面目を保っておかなければ!
「何を言ってるんですか。そんな無い胸で迫られても取り乱しなんてしませんよ」
あ、言っちゃた。初めて神界に行った時、思い留めた余計な言葉を。
「……何が無いの?」
えっ?
「な・に・が! 無いの!?」
「い、いえ。あの……」
ま、待って! その目……お、怒ってますよね?
「あるもん! ちゃんと胸、あるもん!!」
ちょっ、苦しい!苦しいから! く、首締めないで……ちょっと落ち着こう! ね! おっさんが悪かった! 全面的に悪かったから! ルーミィさんは綺麗で可愛いと思っています!
許し……ぎゃあああああああああ!!!!