凍死した少年
雪がはらはらと降って来た。家族と出くわす度に重苦しい。どいつもこいつも腹が立つ。むしゃくしゃして、もうどうにもなりゃしない。やけっぱちになってふてくされて、真昼の誰もいない庭に、大の字になって寝転んだ。
空が見える。雪を送ってくる元をじっと見つめた。眼鏡があるから雪が目に入らなくて安心だ。しばらく見て目をつぶる。そうだ、もうこのままずっと動かないでやろう。誰かに気付かれて、声を掛けられたりするまで。このままずっと微動だにせず。体が雪に覆われても。
しばらくじっとしていたが、人が来る気配すらない。誰かに見つからないと意味がない。早く誰か来ないかと目を開けてみたら、眼鏡の上に雪が積もっていた。白く輝いて僕にかまってくれる。少し元気が出た。諦めたら負けなんだ。よし!もう寝よ!寝てる最中とかに誰かに気付かれて起こされるだろう。誰が僕を起こしにくるだろうか。母か、父か、妹か。誰だろうが吃驚するだろう。面白いろいや。
どれくらい寝たのか。暮れてはないらしい。何か猛烈に眠い。顔に積もった雪を払おうとしたが力が入らない。なのでもう一回寝た。次に寝てる最中とかに起こされるだろうと、期待して。
だが次に起きてみても、誰にも気付かれないままだった。ついに夜になってしまった。目の前が真っ暗だ。これはもう今日中には起こされないな。でもやめようとは考えない。きっと見つかるのは朝になるだろう。朝になったら母は洗濯物を洗いにこの庭の横を通るから、その時気付いてくれるだろう。庭に雪が人型に膨らんで積もってるのを見て、さぞびっくりするだろうな。母がなぜ人型に膨らんで積もっているのかと、驚く所を想像をして、おもわず笑ってしまった。笑いをこらえながら、早くその時にならないかなあ、と浮き立つ気分のまま、上機嫌で、その夜を過ごす、夜。