番外編、南城の嘘─その1
この番外編は2まで続く予定です。(3以降も投稿する可能性あり)
時は遡って伊波と取材する前日、土曜日。
朝の8時スマホに着信があった。
「...誰だ。こんな朝早くから...」
『なにイラついてんのよ。今から時間ある?」
「ない」
『あるわね。じゃ、今から駅に来なさい。』
そういって電話を切られた。
着信者は南城君華。
「...チッ」
折角の休みをなんで両方とも潰されなきゃいけないんだ。
そんなのはごめんだ。
そう思って二度寝を決め込んで布団にもぐると家のチャイムが鳴った。
どうやら母さんが出たみたいだがもう嫌な予感しかない。
「青!クラスメイトさんがあんたに用だって!」
「クソすぎる」
眠さを引きずりながら玄関に行くとやっぱり南城の姿があった。
「あんたなら迎えに行かないと来ないんじゃないかなと思って。」
「.....」
「図星か。」
「なんで俺の家を知ってる。」
「倉宮さんから教えてもらったのよ。」
「帰れ。」
「あんたに付き合って欲しい所があるの。」
「ひとりで行け。」
「じゃ聞くけど、ちゃんと春香をエスコートできるの?」
そう言われて俺は少し止まった。
多分というかエスコートなんて絶対に出来ない。
「なら、練習しましょ?」
「必要ない。」
「なら、出来るのね。」
「出来る。」
「なら、エスコートしてみて。」
どうしても外に俺をだして付き合わせたい南城と
どうしても外に出たくない俺。
玄関で火花を散らしていると南城の援護が現れた。
「行かないなら青、買い出し手伝ってもらおうか。」
「よし、南城準備してくるからちょっと待ってろ。」
俺はいそいで着替えて南城に付き合うことにした。
「そんなに私と出かけたかったの?」
「寝言は寝て言えー。」
「じゃなんで。」
「母さんの手伝いに一回でも手伝うとその後、いろんなことを手伝えっていわれるんだよ。」
「デートで愚痴らないの。」
「デートのつもりはないからな。」
「まったく...クールぶっちゃって。」
「俺のチャームポイント。」
「なにそれ。」
「龍平の受け売り。」
「だから、そんなダサいのね。」
ダサいのか、次から言わないようにしよ。
「で、今日はなんの用?」
「ちょっと田辺のほうまでね。」
田辺...つくしと行った小旅行の場所だ。
「なんで態々、そんなところまで?」
「お父さんが今、映画の撮影で近くまで来てるから。」
「それと俺が行かなきゃいけないことになんの関係が?」
「....ついてるから。」
「え?」
「お父さんに彼氏いるって噓ついてるから!」
はい、ハッキリ聞こえました。
にしても噓て。
「なんでまたそんな噓を...」
「学校で上手くいってないって知られたら転校させられるから。」
「は?」
「最初はお父さんの仕事に付き合って転校を繰り返してて、中学から今の家にずっと住んでるけど。」
「転校を繰り返して心配したお父さんがウザくて...」
理由はひどいがまあ、なんとなくわかる。
「で、俺に彼氏の役をやれと。」
「だって、こんなこと頼めるの花形しかいないから。」
「変なことしたら優にチクれるからな。」
「勘違いしないの花形だけだし。」
同い年の幼馴染をもつとただの弱みでしかなくなる。
いや、そもそもチクられてもいいはずなんだが...その後を考えると変な気は起こさないに限る。
南城に連れられて田辺に来た。
「お父さんはどこに?」
「ここから、歩いていける範囲だって。」
なら、歩いていこうか。
その間、南城は無言だった。
「緊張してんの?」
「そ、そりゃするでしょ。」
声も心なしか震えている。
「あの南城がねー。緊張するとか新鮮すぎる。」
「あんまり見んな!」
横から拳が飛んできたよ。
かなり強めの。
お陰で横腹がかなり痛い。
「あんまり暴力振るうと彼氏じゃないって言うぞ。」
「そんなことしたら後ろから刺すから。」
「嘘なんかつかなきゃいいのに。」
「あんたが言うか。」
「自分の気持ちに噓ついてるくせに。」
「....余計なお世話だ。」
「ま、あんたが出した答えならいいけどさ。」
てか、なんで俺が悩んでること知ってんだよ。
「私は監督の子供だよ?人の表情とか仕草でだいたい心情がわかるのよ。」
「それ、もう監督とか関係ないよな?心理学者かメンタリストの域だろ。」
「私がそう感じたんだからいいの。」
「さいで。」
駅から数分歩くと、テレビの関係者であろう人が増えて来た。
「今は休憩中だから、運がよければ有名俳優や女優に会えるかもしれないわよ。」
「別に興味ないから。」
「あんたなにして過ごしてんの?」
「本読んだり、ゲームしたり。」
「楽しいの?」
「すぐ飽きるけど。」
そのせいで最近テレビ見てないから俳優なんて全然知らない。
時々妹の真奈が騒いでるのを見る程度。
それでも名前は憶えてない。
人混みの中心地。
まだ、朝早いため野次馬も少ない。
その野次馬を掻き分けていくと色んな人がいた。
というのも誰が誰だか変わらないんだ。
全員監督と言われても違和感ないし。
「誰がなんじょ...」
あの、何故に横っ腹をつままれてるんでしょうか。
「私のことは君華って呼んで。」
「細かい噓を...」
「いいから!」
こんな噓に付き合わせられる俺の身も考えてほしいがな。
「で、誰が君華のお父さんなんだ?」
「あそこで囲まれてる人。撮影のことで打ち合わせ中。」
「てか、なんで彼氏を連れて行くってことになったんだ。」
「お父さんが連れて来いって。」
「断ればよかっただろ。彼にも予定があるとかなんとかいって。」
「前に彼はなにもしてなくていつも暇してるみたいって言っちゃった。」
「君華の噓によって俺の行動がどんどん制限されてるの分かってる?」
「ごめん。それは謝る。」
「これなら、母さんの手伝いとかわらねえじゃねえか。いや、母さんのほうが割と楽かもしれない。」
「..........ッ!」
「俺の演技力なら君華が一番知ってると思ったんだが。」
「私をイジメて楽しい?」
「割と。」
「そう...学校で覚えてなさいよ。」
うわー怖ぇ。
なんで女子って笑顔からの怒り顔が職人級なんだろうな。
「君華。来てたのなら話しかければいいのに。」
俺と南城が言い合ってると細身の男に声をかけられた。
「誰だあんた。」
「ちょっと!」
「ははは。用心深いというのは本当のようだな。」
南城め、そんな噓までついてたのかよ。
ま、どう見ても南城の父親だわな。こんなタイミングで声をかけてくるやつは。
見た目は細身。だがなにかスポーツをやっている?腕まくりしてる腕はまた感じ筋肉質。
怒ると静かに怒るタイプだ。
「えっと、紹介するね。彼氏の花形青砥。」
「ども。」
「君が君華の彼氏か。なんでも旅行中になんかの事件を解決したんだって?」
「ああ、お父さん!その話は...」
「まあ。小さな、ニュースにもならない事件なら。夏休み中に解決をしました。」
「おお。半信半疑だったがまさか。是非その話を聞かせてくれないか。」
「あまり面白い話じゃないぞ?」
「構わない。よろしくたのむ。」
初対面の印象はこれでいいか。
演技というのは結構疲れるもんなんだな。
これをカメラの前でやってのける俳優は凄いと思うね。
さて、あとは南城がついた嘘次第。
バレるか、運良くバレないか。
どちらにしろ俺に被害はないからいいけど




