第八十八話 問題解決
「へー、杏奈のバイト、続けることになったのか」
「おうよ!めっちゃ頑張ったんだぞ!」
「おつかれ。」
「それだけかよ!」
それ以外に何をご所望なんですかね。
「あれだけ頑固頑固言ってたのに説得出来たじゃねぇか。」
「いやいや、青砥の正論じゃあ多分無理だったよ。」
「俺の案は使わなかったのか?」
「テンパって使えなかった。」
まあ、こいつなら多少は外れたことを言うだろうと思っていたけどオリジナルの作戦を使うとは…
意外と頭の回転早いんだな。
「どんなこと言ったんだ。」
「えっと、『杏奈ちゃんを僕にください!』だったかな?」
龍平の言葉に俺と優とつくしは固まった。
本人は気づいてない様子で喋り続けてる。
「その後杏奈ちゃんに許可貰ったらいいとか言われたから、杏奈ちゃんにいいかって聞いたら、いいよって言われたからそれで解決。」
「龍平、お前マジか...」
「鈴木君、それは...」
「鈴木君がここまで大胆なんて...」
「え?え?なに?なんでそんな暗いの?」
「この際だから、言ってやる。」
「お前がしたのは杏奈への告白だ。それを親にまで言って何も言われないってことは親公認の恋人ってことになるんだよ。」
「.............え」
どうやら今自覚したようだ。
龍平はそのまま硬直して
『俺が告白...俺が告白...』
と念仏のように唱えていた。
解決方法に少しばかり難があったが結果オーライということで。
龍平と杏奈の仲は無駄に応援してやろう。
☆
杏奈の件が落着して俺は真の暇を手に入れた。
高2になってから全然落ち着けなかった。
つくしの件に始まり夏休み、修学旅行、文化祭、告白、優の誕生日、勇士の件、つくしとのデートなどなどあげればキリがない。
高2の冬現在、俺は普通と言うものが分からなくなってきた。
古今東西全ての男子高校生がこんな苦労してるとは到底思えない。
少なくとも龍平は違った。
なら、俺が異常ということになる。
俺が自分で望んじゃいないことが次々と舞い込んできて解決したい事柄が全く解決まで行かない。
まあ、解決出来ないのは俺のせいでもあるんだが…
2人からの告白の答えはまだ出てない。
告白されてからというもの2人からのアタックが異常に強くなった。
特につくしなんかは譲らなくていい所まで譲る性格だと思ってたから少し意外だった。
優に至っては焦って暴走する事態に...
そんな2人はとても可愛い。
優は元々クラス上位に入る人気ぷりだしつくしは夏休み終わったくらいから人気が出始めた。
そのまま人気が出て誰かと付き合うもんだとばかり思っていたが甘かったようだ。
「どうしろって言うんだよ。」
現在12月初め今月はクリシミマスがある時期だ。
クリシミマスまでに何とか決着をつけたい。
年末年始に悩むなんてことしたくない。
だからといって早まるのだけは避けたい。
俺と優とつくしが納得できる解決方法を出すかそれに近しい最善の案が必要だ。
しかし、告白されて2か月半...これといった案は思いついていない。
このままじゃ年末年始悩み通すことになりそうだ。
まあ、実際は答えは出ているも同然なんだがそれが中々言い出せないでいる。
さっさと言い出せば楽になれるのに...それが出来ない。
多分、怖いんだ。
中学の時の再来、周りから誰もがいなくなることが怖いんだ。
『1人』が好きだ好きだと口では言っても結局『孤独』には耐えられないんだ。
それくらい俺は弱いし寂しがりやだ。
もし、俺がこの件に答えを出したら2人のみならず皆離れて行ってしまうのではないか。
そう思うことがたまにある。
承認欲求という言葉があるが、今の俺はまさにそれだ。
自分の存在価値がなければ不安になる。
俺が謎解き、喧嘩などの時に生き生きとしてるのはその承認欲求が満たされてるからだと思う。
「弱すぎかよ。」
溜息しか出ない。
「青君、寝言?」
いつの間にか空き教室の椅子に優が座っていた。
優だけじゃない、つくしもいた。
「いつからいた。」
「結構前から?青君が『どうしろっていうんだよ』って言った辺りからもういたよ?」
ほとんど最初っからじゃねぇか。
俺、声漏れてなかったよな...?
漏れてたらものすごく恥ずかしいんだけど。
「青砥君、私達そんなの頼りない?」
「は?なんの話だ?」
「青砥君夢でなんかうなされてて『誰もいなくなることが怖い』って言ってたから。もしかしてだけど私達がいなくなる夢でも見てたのかなーと思って。」
「んまあ、それに近しい夢を見た。」
「私達が一緒よにいるんじゃダメ?」
「いや、そんなことは無いぞ。それに俺が見たのは悪夢だ。悪い夢だ。」
俺に言い聞かせるように言った。
「そっか、良かった。」
俺はこの関係を壊したくない。
けど、俺が答えを出すってことはこの関係になにかをするってことだ。
それは友情を深めるものかもしれないし、亀裂を入れるものかもしれない。
それは実際に答えを出してみないと分からない。
俺達全員がハッピーエンドで終われる結末はない。
なら、選択肢は自然と1つに絞られる。
「2人に話したいことがある。」
2人は無言でこちらに向いた。
「文化祭の時の2人からの告白だが...」
俺が話題に出した瞬間、2人が息を呑むのが分かった。
「ごめん。2人とも。断らせてくれ。」
これが俺、花形青砥が出した答えだ。
2人を同時に好きになってしまった男の末路だった。
二兎追う者は一兎も得ず。
昔の人は良く言ったもんだ。
俺の場合、兎がその場で待っているんだが。
そして、どちらか選べなかった男は両方を追わないことに決めた。
それが今の高校生の俺に出せる最善の答えだった。
「いままで、散々振り回して置いて勝手だけどほんとにごめん。」
俺にはただ謝ることしかできない。
それくらい俺は酷い事をしたんだ。罵られても文句は言えない。
「よかった。」
「私も同意見。」
「え?」
2人から帰ってきたのは安堵した空気だった。
「私てっきりつくしちゃんを選ぶもんだと思ってた。」
「私は優奈ちゃんだと思ってたよ?」
目の前では告白を断られたのにも関わらず笑い合う2人の姿があった。
別に、悲しむなんて傲慢なことは考えてはいなかったが少なくとも幻滅されると思ってた。
「幻滅なんてしないよ。」
「私達ってそんなにひどいことするように見える?」
「そういうわけじゃないけど...俺はそうされても仕方ないことをしたんだ。」
「この程度で幻滅するなんて幼馴染失格だよ!」
「そうそう。幻滅することなんてされなかったし。」
ほんと、俺、こんなことで悩んで答えを先延ばしにしてたのか。
心配することなんてなにもなかったじゃんか。
関係の崩壊も、誰一人いなくなる心配も考えるだけ無駄だったわけだ。
「青君!?なんで笑いながら泣いてるの?
「だれのせいだと思ってる。」
「私達のせい!?」
なんか悔しいからそうだと言って置こう。
12月5日、俺が抱えていた人生最大級の超難問は綺麗さっぱり後腐れなく解決した。
こんな俺を見捨てなかった優とつくしには感謝しかない。
「二人とも、ありがとう。」
「「どういたしまして!」」




