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第八話 ちゅ。

風凪の件が学校で問題になって俺は職員室に呼ばれた。

理由はだいたい察しがつく。


四時間目が終わって風凪と職員室に向かう。


ドアを開けて担任の元に直行する。


「失礼しますぐらい言えよ。」

「めんどい。」

「まったく。」

「風凪も要件はわかってるな。」

「はい。」

「んじゃ、移動しようか。」


俺達は面談室に向かった。

今回の件で一番憂鬱なことだ。

担任に呼ばれるのは想定内。そして、イジメとなればもう一人出てくる。

生徒会長。


俺はこの生徒会長が苦手というか向こうも逃げて意識があるようだ。

それも当然。

生徒会長の名前は篠崎鈴音しのざき すずね

俺を『人殺し』と言った直人の姉だ。


俺達が面談室に入ってすぐに生徒会長は現れた。


「失礼します。」

「お、揃ったな。」


最初は風凪から事件の概要について聞いた。

その過程で俺の話題も出てきた。

そして、大人数の集団に襲われたこと、なんとか逃げ出して俺に助けを求めたこと。

を、話した。


「まったく、余計なことをするんですね、青砥は。」


中学時代の呼び名を数年経った今でも使うのかよ。


「なんだ篠崎、なんか不満でもあるのか?」

「清水先生ならご存知でしょう。彼が犯した罪を。」

「彼は、私の弟を間接的に殺したんです。」

「それは、青が悪いんじゃないって聞いてるぞ?」

「彼の周りの人間はそう思うのは無理はありません。」


「しかし、彼は中途半端な手助けによりイジメを過激化させました。それが彼が犯した罪ですよ。」


生徒会長は俺をより一層睨んだ。

俺としては事実だから反論もなにもできない。

ただ、過去の傷を抉られるのを耐えることしか出来ない。


「そんなことないです!」

以外にも、生徒会長に反論したのは風凪だった。


「会長はなにも分かっていません。イジメられている側がどれだけ助けてほしいと願っているかご存知ですか?彼は誰も取ってくれない手をとってくれたんです!」

「けど、彼のせいで貴女は顔に跡が残るほどの仕打ちを受けた。それでも、ありがとう。と言えますか?私は3年生なので顔を合わせる機会は少ないですが担任の清水先生ならご存知でしょう。」

「ありがとうと言えました。例え、イジメが過激化しても彼が助けてくれたのは事実です。それだけでイジメられている側の人は嬉しいんです。」


風凪は精一杯会長を睨んでいた。


「私が言っているのは、中途半端な手助けのことです。その前のことは言っていません。」

「それでも....!」

「いいよ。風凪。」

「花形君?」

「俺は今回も中途半端な手助けをした。それは紛れもない事実だ。」

「青砥も分かってるならやらないように。」


ここで、会長と風凪が言い合う必要はない。

俺が大人しく傷を抉られていればいい。物理的に抉られるんじゃないんだ、死にはしない。


それからは、風凪の話を聞きつつ俺の傷をことあるごとに抉ってきた。


五時間目の予冷がなる。


「おっと、次の授業の準備がある。これで解散!」


担任が出て行って会長が俺に一睨み入れてから退室、俺と風凪だけ残された。


「悪い、俺早退するわ。」

「大丈夫?」

「大丈夫。」


風凪と別れて家に帰った。


母さんはまだ帰る時間じゃないから家にはいない。


俺は部屋に籠った。

あれだけボロクソに言われて落ち込まない奴はいない。


ガチャ。

玄関が開く音がした。

母さんが帰るのはもう少し先、妹はまだ集団宿泊先、今日帰ってくるが帰ってくるとしても夕方だ。


「花形君?いる?」


俺を花形君と呼ぶのは一人しかいない。


「風凪?授業は?」

「私も早退してきたんだよ。」

「風凪がさぼるなんて珍しいな。」

「あれがあって直後だから、簡単に早退させてくれたよ。」


得意気になるとこじゃないだろ。


「で、なんで、風凪がなんで俺の家に?」

「花形君、落ち込んでる様子だったから。」

「そりゃな。あれだけ、ボロクソに言われれば萎えるさ。」

「でも、会長も言い過ぎな気がする。」

「自分の家族が死んだんだ。不安、喪失感、悲しみ。いろんな思いがあったんだろうな。」


そろそろ、母さんが帰ってきてもおかしくない時間だ。

昨日からの泊まり込みだから昼頃帰ってくるはずなんだが...。


「花形君。目のあたりにゴミがついてる。取るから目瞑って。」

「ああ。」


俺は言われた通りに目を瞑った。


チュ。


到底ゴミを取るときの音には聞こえない。

びっくりして、目を開けると同じく目を瞑った風凪が超至近距離にいた。

風凪は目を開けると風凪は後ろに飛び退いた。


「先に目、開けるなんてずるいよ。」


人に不意打ちでキスする方がずるいと思うが?


「す、少しは、お、お礼できたかな。」

「恥ずかしいならやるなよ...」



頭が混乱して正常な判断が出来ていない。


ガチャ。


頭が混乱している中、玄関が開く音がした。


「青。玄関にローファーあるけど誰か来てるの?」

「来てる。」

「女の子?」

「だったらなんだよ。」

「青もそういう歳になったんだね。」

「黙れ。」


母さんのお陰で何とも言い難い雰囲気は緩まった。


「わ、私お母さんに挨拶してくるね。」

「お、おう」


ただ、俺達当人の微妙な空気は変わらなかった。


俺はベットに倒れ込んだ。


なんなんだ今のは。

あの大人しいことに定評のある風凪がキス?

キスなんて間違いようのない行為だ。


肌と肌が触れるくらいならまあ、よくあるだろう。

しかし、マウス とぅー マウスなんてことはまずないわけで...。

わけが分からない。

この数週間で風凪が俺を好きになったとは思えない。

俺自身、そんな好かれるような行為をしてない。


なら、あれは本当に風凪流のお礼なんだろうか。


こればかりは、本人に聞かないと分からない問題だ。


ふと、喉が渇いて冷蔵庫に飲み物を取りに行こうとすると母さんと風凪が話しているのを聞いてしまった。


「なるほど、青とはそういう関係なんだね。」

「はい。花形君にはお世話になってしまいました。」

「青はああ見えて本当は優しい子なんだよ。」


他人に自分ことを話されるってこんなに恥ずかしいもんなんだな。


「私もそう思います。花形君はイジメられている私を助けてくれましたから。けど...」

「生徒会長に色んな事言われてしまいました。」


まだ気にしてたのか。

風凪が気にすることでもないし俺の責任と言えば責任なんだ。


「本人の前で言うのもなんだけど、青は風凪さんを助けなくてもよかったんだよ。皆が見て見ぬふりをしてる中青は風凪さんを助けた。それが無鉄砲だってなんであの子は気づかないのかね。」

「あそこで青が助けなくても誰もなにも言わないんだよ。だって、青は教師でも生徒会役員でもない。止める必要はなかったんだよ。」


たしかになかった。

けど、1度突っ込んだ首は簡単には引っ込められないんだよ。

まあ、風凪が泥だらけで来た時から生徒会長がでしゃばるのは分かってたよ。

そして、またボロクソに言われることも。


それを知ってて俺は風凪を助けた。

ボロクソに言われるのが嫌だったら風凪を助けたりしない。


これ以上聞いてると恥ずかしくて死ねるから俺は飲み物を取らずに自室に戻った。

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