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第八十四話 今度は俺のターンだ!

「あーそうだ。青砥。」

「ん。」

「杏奈ちゃんがバイト辞めるってさ。」


龍平はいつもの調子でそう言った。


「は?どういうことだ?」

「なんかお父さんに秘密でやってたらしくてそれで俺と代わった時にそれがバレたんだって。」

「でもあれって、保護者の印鑑必要だったよな。」

「お母さんは賛成してくれててお母さんのサインだったみたいだ。」


人の家庭にとやかく言える立場ではないが、この時俺は少しイラっと来ていた。


「龍平はいいのか?お前、元々杏奈が目的で始めたんだろ。」

「そうなんだよなーでも、人の都合だし俺がなにか出来ることでもないしなー。」

「情けないな。杏奈の父親がそんなに怖いか。」

「いや、お前は見てないかもしれないけどそうとう強面だったぞ。」

「まあ、俺はお前さえよければいいけど。」


杏奈は大分、小悪魔なところはあるけど飾らないし仕事もそつなくこなすほどにイイ子だ。

バイト内でも評判は上々でマスコット的存在でもある。

そんな存在の杏奈が杏奈の意志と関係なくあのファミレスを去るというのは少し寂しい感じもした。


龍平から情報を聞いてから俺は色々考えていた。

しかし、本人がどう考えてるか分からない状態で考えても答えは出なかった。


だから、聞きにいこうと思う。

昼休み。


「龍平、杏奈のとこ行くぞ。」

「え、なんで?」

「いいから来い。」


俺は龍平のネクタイを引っ掴み一年の教室まで引きずった。


「森田杏奈はいるか。」

ドア付近のたむろしていた男子生徒に話かけると教室の真ん中あたりで机に突っ伏していた杏奈を呼んだ。


「先輩2人がなんの用でしょう。」

杏奈の声はいつになく落ち込んで聞こえた。

この時点で、杏奈はバイトをやめることに躊躇いがあることは確定したも同然なんだが一応本人の口から聞いておこう。


「龍平から話は聞いた。で、お前の意志を聞きに来た。」

「先輩はまたお節介を焼くつもりですか。」

「まだ、確定じゃないがな。」

「迷惑とか考えないんですか。」

「相手がだれであろうと屈しないのが俺の長所だと思ってる。」


杏奈は俺の顔をじっと見てから、空き教室へ行こうといった。


「本心を言えば、辞めたくないです。」

「じゃあ、辞めなきゃいいだろ。」

「お父さんが決めたことですから。あの人が一度こうと決めたら絶対に曲げない人です。今のあの人になにか言ったところでなにも変わりません。」


杏奈自信は辞めたくはないが、父親が怖くて自分の気持ちを言い出せないってところか。


「早速諦めモードか。」

「あの剣幕で怒られたらそりゃこうなるって。」

「龍平、お前その場にいたのになんで止めなかった。」

「あっという間だったんだって!スーツ姿の男が入って来たと思ったらあっという間に杏奈ちゃんを連れていっちゃったんだ。」

「止めることは可能だったか?」

「俺は食器をもってたからすぐには動けなかった。」


俺がつくしとデートしてる間にそんなことが起こってたのか。

まあ、俺がいたとしても止められたか定かじゃないからこれ以上、龍平を責められない。

出来ることは、杏奈の父親を説得することだけだ。


「そんな...さっきも言ったはずです。言うだけ無駄だと。」

「大丈夫だ、殴られる覚悟くらいはある。なあ、龍平。」

「え、俺が動くの?」

「俺はその時いなかったしな。いたお前のほうが状況を知ってるし色々説得力がある。部外者の俺がしゃしゃり出る場面じゃない。」

「でもだな。」


「好きな女のためなら相手の父親くらい黙らせろ。そんなんじゃ一生幸せになれないぞ。」

「俺はなにしたらいい。」


「龍平先輩、いきなり真顔でなに言い出すんですか。龍平先輩も知ってるはずです。」

「いや、確かにあの時は動けなかったけど退職届を出す前ならまだ間に合う。」

「...ホント馬鹿ですか。」

「言われてるぞ、青砥。」

「いや、龍平だろ。」

「両方です。」


「後輩のためなら少しくらい馬鹿になったほうがやりやすいってもんだ。」

「よっし、さっそく作戦会議だ。」


「もう...ホントに馬鹿です。」


口の悪さは相変わらずだが、その声には悲しみより嬉しさが混じってるように聞こえた。


「反撃するにも武器となる情報がないと辛いな。」

「うーん、姉貴にも聞いてみるけど、あんまり武器になるようなことは無いと思うぞ。」

「相手が親っていうのが面倒だな。」


龍平達から聞いた話だと、いつも通り接客していた→杏奈の父親が入店→杏奈を発見→説教→そのまま杏奈

を連れて帰ってしまったという。


「鈴姉、知恵を貸してくれ。」

「人様の事情にずかずかと踏み入るのはよくないことよ。」

「けど、このままじゃ杏奈が辞めさせられるんだ。」

「時間の問題でしょう。遅かれ早かれそうなるわよ。」


「鈴音さんは素直じゃないにゃー。」

「なによ加奈、なにがいいたいのよ。」

「あの場に鈴音もいたじゃん。それで結構嫌悪感丸出しの顔をしてらっしゃったじゃん。」

「あれは、いきなり大声を出す大人げない男性にイラつきを感じただけよ。」

「ほんとにそれだけですか~?」


こうも生徒会長を挑発出来るのは学校中探してもこの人だけだろうな。

それくらい強烈に挑発していた。


「ほんとよ。ただ、知恵を出すとすれば、営業妨害にはなるんじゃないかしら。」

「よくないとか言って置きながら、手を差し伸べるツンデレっぷり。私じゃなきゃ見逃しちゃうね。」

「これ以上調子に乗るといい事ないわよ。」

「はーい。」


怒られても一切反省の色を見せない。

相変わらずだなー。


「営業妨害って相手は親だぞ?それで通るか?」

「正確には『威力業務妨害』ね。」


『威力業務妨害』

直接的、有形的な方法で人の業務を妨害する行為のことを指すのだが...


「相手が親とか言ってるけどどうせ誰であってもやるんでしょ。」

「まあ」

「それなら、ボロボロでもいいから武器をもっておいたほうがいいわ。」

「そうか...威力業務妨害か...大人に通じるといいけど。」

「その辺は店長と協力してもらってどうにかするしかないな。」

「でも気を付けることよ。あまり行き過ぎると脅迫罪になるからね。」


こっちが法を武器に使うのであれば、向こうにも法という武器が出来るというわけか。


「上等だ。」

「青砥は喧嘩慣れしてんなー。」

「今回はお前が動くんだから、そんな他人事みたいに言うな。俺が動くのは情報収集までだ。計画が失敗しると芋づる式に俺まで吊られる羽目になるんだ。」

「さすが青砥ね。抜け目ない。」


その当時のことを聞きながら俺と龍平は情報を集めて計画を練った。

今回の相手は親だ。しかも、自分の親じゃなくて人の親という強敵。


「先輩はどうしてそこまでして私を助けようとするんですか。」

「私の時だけじゃないです。つくし先輩や優奈先輩の時もそうです。」

「先輩はハーレムでも築きたいんですか。」


「なんで助けるかって答えは単純に杏奈に非がないから。」

「つくし、優の時は俺しか動ける人間がいなかったから。」

「ハーレムの件はNOだ。2人からの告白も返せてないのにハーレムとか不可能だろ。」


「俺はそこまで器用じゃない。」


旅行から帰ってきたと思ったらこれだ。

難所ばかりの人生だ。

こんなんだから普段の生活が自堕落になるんだ。

それなら今回みたいなやつは無視すればいいじゃないかと思った奴。


それが出来たら苦労しないんだよ。

俺の好奇心は一回火がつくと優より面倒くさいんだ。

まだ戦ったことのない敵と戦うってわくわくするだろ?


つまりはそういうことだ。うん。


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