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第八十二話 対決

俺はここまでで出てきた情報からある1つの仮説を立てた。


「...可能性はなくはないがどうだろうな。」

「一応筋は通ってると思いますが?」

「だから厄介なんだ。否定が出来ない。」

「しかし、実際に動くとなると怖いな。」

「もしその仮説が間違っていたら振り出しだからな。毎回警察は物的証拠を抑えるんだが…」

「なら、鑑識に頼んでみては?」

「もう頼んだ。」

「で、結果は?」

「青砥が睨んだ通りだった。」

「なら、動けるじゃん。」

「待て、犯人が動いた動機はなんだ?」

「さぁ。」


「さぁって...お前な…」

「犯人が俺の仮説を聞いて動いたらそれでもう『黒』は確定でしょ?」

「動かなかったら?」

「考え直せばいい。」


「素人は大胆だな…」

「俺は探偵じゃないしましてや刑事でも無い。何を怖がるって言うんだ?」

「ふてぶてしいな。」

「メンタルは鋼鉄並みなんでね。」


「取り敢えず、こっちも動くぞ。」


増井警部は目撃者の中西百絵加さんに連絡を入れた。

彼女も立派な関係者。

事件の真相を知る権利がある。


ま、来ないなら来ないで構わないが。


「んじゃ、俺達は一旦帰ります。」


電話中の増井警部に向けて俺達は言ってから帰った。

電話中の増井警部は言葉は発しなかったが手を挙げて答えた。


「帰っちゃうの?」

「ああ、中西さんの家はここから結構離れていてな。来るのに時間がかかるんだ。」

「ふーん。そっか。」


朝から捜査にあたっていたと言うのに辺りはもう日が傾きかけて若干暗い。


「あー。捜査って意外と疲れるのな。」

「それを嫌な顔1つしないでやる増井さんも凄いよね。」

「あの人がなんで警部やってるのかわかった気がする。」


あの人、俺達が来る前には必ず来ている。

昨日から変わったことはないか、なにか分かる事はないか、それを朝から全力で探している。


刑事の鑑だよ。あの人は。


「すっかり夜だな。」

「もうちょっと離れたら星が綺麗に見えそうだね。」

「あと、月もだな。」

「隠れちゃってるね。」

「でも、完全に雲がかかってる訳じゃないから直ぐに出るよ。」


旅館までの道を歩いているとか後ろから視線を感じた。

しかし、振り返っても誰もいない。


「どうしたの?」

「いや、今視線を感じたんだけど…」

「!?、やめてよ。怖いよ。」

「まあ、大丈夫だろ。ここはまだ人目がある。」


俺達が今歩いているのは旅館までの道で1番人目がある場所、商店街だ。

夜の6時じゃあ買い物をする人でいっぱいだ。


商店街を抜けると少し人目は無くなる。

その分、俺達へと向けられる敵意を含んだ視線は強く感じられた。


そして、街灯も人目も無くなった時その視線を送ってきた者が動いた。


「走れ!」

「え!」


俺はつくしの手を引いて走った。


「青砥君!?どうしたの?」

「余裕があれば後ろを見てみろ。」


つくしはチラッと後ろを見た。


そこにいたのはコートを着た人影、暗闇のせいで男か女かも分からない。

そもそも、コートを着てる時点でもはや誰か分からないんだが。


「あの人は?」

「俺達がさっきまで捜査してた事件の犯人だよ。」

「なんで!なんで私たちが狙われるの!?」

「刑事の増井さんを狙うよりド素人の俺達を殺した方が手っ取り早いからだ。」

「それってどういう...」


よし、ここでいい。


「つくし、ごめん!」

「きゃ!」


俺はつくしを前に投げて追ってきた人影と対峙した。


「誰だ!」


しかし、人影は言葉を発することはなかった。

誰かという返答の代わりに懐からギラりと光る物を取り出した。


それが刃物だと分かったのは人間本来の危機察知能力によるもの、つまり、俺の体は逃げろと言っている。


だか、ここで犯人を逃がすほど馬鹿じゃない。

ま、刃物に素手で挑もうとしてる時点で馬鹿なんだけど。

しかし、俺には勝てるという確信があった。

初見の一発目はどっかしらに刺さるかもしれないがそれはそれで好都合だった。


「答える気はなしか。」

「ダメだよ!青砥君!逃げて!」

「つくしはどうすんだ?」

「私もあとから逃げるから。」


そのガクガクの足でか?

そいつはちょっと無理があるだろ。


刃物を見てからつくしの足はもう動かなくなってる。

元々運動は苦手なつくし。

俺の速度であれだけの距離を走ればもうヘトヘトのはずだ。


「大丈夫、死にはしない。けど、救急車は呼んでおいてくれ。万が一にな。」


俺とつくしが喋ってる間に人影は俺を串刺しにしようと刃物を振りかぶる。


それを懐に入って受け止める。

人の体重+重力+振り下ろす速度=重さ


という式は一般的な力の出し方として使われる。

正月の餅つきなんかを想像してもらえれば分かりやすいだろうか。

それを使って行われた動作というのは非常に大きなものとなって対象物に当たる。


が、しかしこれらをひっくり返すことも可能だ。

人の体重+重力+振り下ろす速度=重さ

をひっくり返すことが。


簡単なことである。

それらを支えられるまたは超える程の力があればいい。


また、餅つきに例えよう。

小学生が餅をつく力と成人男性が餅つきをつく力というのは絶対とまではいかないがほとんどの場合、成人男性の方が強い。


当然、支えるのが簡単なのは小学生の方である。

何が言いたいこというと


俺は今、人影が振り下ろした刃物を振り下ろされた手首を掴むことで回避していた。


刃物の正体は果物ナイフ。

通常のナイフより小ぶりではあるがその分、心臓などに到達しやすい(骨の間を通るから。)


「やっぱあんたか。前島さんを殺害した奴は。」


月明かりが俺たちを照らす。

すると、暗闇で分からなかった人影がハッキリとしてくる。


「なぁ、中西百絵加さん。」

「いつから分かってたの?」

「ついさっき、刑事から電話来たろ?その数分前だ」

「そっか、 バレちゃったか。」

「なら.....死んでもらわなきゃね。」


1歩下がると果物ナイフを突き出して心臓を狙ってくる。

めっちゃ怖い。1歩でもミスったらそのままブスりだからな。

それに、後ろにはつくしがいるからあまり下がれない。


(遅いな...何してんだ?)


「死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね」

「すげぇ憎悪。悪霊になりそう。」


とか、そんなことを考えられる位は冷静なんだけど。

混乱状態になった人間は動きが単純になる。

指して、横に振っての繰り返し。

なら、避けることは容易い。


それに、

「よっと。」

「クッ!離せ!」

「嫌だよ。刺されたくないし。」


餅つきのくだりはこのことを言ったんだ。


男と女じゃ力量が違う。

女がスポーツをしていたり筋トレをしていたらまた変わるだろうが、彼女はバリバリ医学系でスポーツをしてる様子はなかった。


俺と中西さんが力比べをしていると遠くからサイレンの音が聞こえてきた。


「さぁ、どうします?この状況見られたら確実にアウトですよ?」

「その前に君を殺して後ろで震えてる子も殺してあげる。 」


人がどれほどの憎悪があったらこんなに人斬りになれるのだろうか。


「死ね!」

中西さんがナイフを突き出した。


「龍平直伝、小手返し」

中学時代に龍平に教わったカウンター技。


突き出された手首を上から押さえつけるようにして人差し指の筋肉を伸ばしきる。

それを人からやられるとどうなるか。


「痛っ!」


そう、痛すぎて持ってるものを落とす。


果物ナイフを取り上げると中西さんは大人しくなった。


「全く、世話のやける人だ!」


俺が中西さんに近寄ると隠し持っていたもう一本のナイフで腹を刺された。


「青砥君!」

「あははは!私、こう見えても執念深いの。殺すって決めたら逃がさない!」


俺はそのまま中西さんを抱きしめた。


「なっ!」

「捕まえた。いやー、大変だった。」

「!なんで!離せ!死ね!」

「そこまでだ!中西百絵加、殺人未遂で現行犯逮捕だ!」


中西さんの手首に手錠がかけられる。


「なんで!なんで死なない!」

「刺されるって分かってるのに警察が何も対策しないとでも?つくしの演技に騙されたならドンマイだな。」

「演技?」

「そう、結構実力派だろ?」


演劇で見せた演技は相当なもんだった。

だから、今回も一芝居打ってもらった。


俺の腹には防刃素材の腹巻みたいな物を巻いている。

前島拓さんの身辺調査をしていたら自然と中西さんの話題も上がってきた。


その中で執念深いという話があった。

その時点から容疑者の候補に中西さんはいた。


中西さんがパトカーに乗って警察署へと送られる。


「いやーまさか青砥の仮説がそのまま当たるとはな。」

「俺もビックリだ。」


俺が立てた仮説というのが

「犯人は中西百絵加」という漠然としたものだ。


漠然としていても筋が通ればいいと俺は考えた。


殺し方だがまあ、その辺の石で殴ったんだろう。

前島さんの後頭部から見つかったラメというのが彼女がつけていたつけ爪だ。

で頭の裂け目というのがそのつけ爪で裂いた傷だったわけだ。


石で殴られた前島さんは苦しみながらも階段そばまで這いつくばって行った、しかしそこで再び中西さんにトドメを刺された。


地面に引きづった痕跡がなかったのはただ単に痕跡が残るほどのあとがつかなかった。

石畳じゃあほとんど残らないからな。


で、死後工作とか色々していたら1時間が経っていた。

その間、人が来なかったのは下では丁度、太鼓の演し物があったからだ。

それでも人が来るだろうがその人に遺体を見つけられた時は自分は知らぬ存ぜぬを貫き通すつもりだったんだろう。


死後工作が完了して中西さんは叫んだ。

しかしここで重要なことを発見した。

なんと、自分のつけ爪が剥がれている。

手には少量の血痕。


見ると固まった血の中につけ爪が落ちていた。

人が来る気配を感じ取った中西さんは急いで剥がれたつけ爪と付けているつけ爪を剥がした。


剥がしたつけ爪は浴衣の袖にでも隠して俺達が来るのを待った。

鑑識からでた情報というのが後頭部から出てきた彼女の皮膚辺だ。

後頭部が裂けるほど勢いよく殴ったんだから彼女も怪我をしていてもおかしくはないからな。


そして、俺達が到着して増井警部を呼んで捜査をした。

ここまでは彼女の想定内。


想定外だったのが俺達の捜査の参加。

俺達が捜査へ参加したことによりどんな情報が出てくるか分からなくなった。

そして、彼女の予想通り無駄な情報が出てきてしまった。


このままでは自分が疑われる。

そこで今日、待ち伏せして殺そうとしたんだ。


昨日殺さなかったのは祭り終わりで人が多かったから。


「しかし分からんな。なんで彼女は自分が第一発見者になった?」

「そんなの簡単。いつ人が来てもおかしくない状況で戻ったら誰かと鉢合わせになる。その時に死体があればなんで気が付かない?ってなる。」


なんか呆気なかった。

「もう少し粘って欲しかった。」

「冒険家だな。1歩間違えてたら青砥死んでたんだぞ?」

「まあ、防刃素材のやつ着てたし相手が誰か分かってたし。」

「それでもな刃物見せられたら普通は動けないよ。」


刃物の使い方がなって無い人を見てる方が余程怖いね。

うちの生徒会長なんかモロだ。


「ま、捜査ご苦労であった!」

「それと同時に物凄く助かった。昨日の今日で解決出来るなんて。」

「たまたま俺の仮説が合ってただけだろ。」

「謙遜はしなくていい。胸を張れ。それくらいのことをしたんだ。」


昔からの癖でね。あまり自慢が得意じゃないんだ。


「損な性格だな。」

「ほっとけ。」


増井警部と別れて俺達は宿えと帰った。

今日は疲れたからもう一泊して明日学校は遅刻して行こう。


「いいよ。今日は頑張ったもんね。」

「助かる。つくしもありがとな。」

「演技ではあったけど途中ほんとに怖かったんだからね!」

「ごめんて。まさか走ってくるとは思わなくてさ。」

「それに...刺されるとか私...聞いてなかったよ?」

「ごめん。言ったら反対されると思った。」


「当たり前でしょ!防刃って言ったって絶対に防げるわけじゃなし第一、防刃素材は突きに弱いんだよ!」

「え、マジで?」

「知らないでやってたの!ほんとに怒るよ!」


もう既に怒ってるじゃないですか。

まあ、刺されるくだりはつくしには言ってない。

理由はさっき言った通り、反対されるから。


「もう、馬鹿。」

「次はちゃんと伝えるから。」

「次は来ないようにするの。」

「ハイハイ。」


つくしとのデートは台無しになっちゃったけど貴重な体験が出来た。

.....埋め合わせどうするかな…

今から色々考えておくとするか。

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