第七話 誘惑
学校で出された課題をダラダラとやった。
「花形君、終わった?」
「いや、まだ。」
俺の課題は後半分くらい残ってる。
そもそも、この課題自体にも問題がある。
なにか生物について調べてこいっていうものだがこういう大雑把な課題を出されるとこっちとしてもやりづらい。
まあ、俺の自主性がないのが原因なのかもしれないけど。
「花形君は何について調べてるの?」
俺はそのままスマホの画面を見せた。
「狼?なんで狼なの?」
「なんかカッコイイじゃん。」
「どこで詰まってるの?」
「いや、何を書けばいいのか全く分からない。」
「狼だったら絶滅した理由、品種とかを書けばいいんじゃない?」
「おー。その手があった。」
早速調べてプリントに書き写す。
「やっと終わったー。疲れた。」
「花形君はWebをコピペしただけでしょ。」
風凪のジト目が痛い。
「元々やる気ないんだから余計に疲れるんだよ。」
「これが英語とかだったらどうするの?」
「シュレッダー行き。」
「やる気のなさが伝わってくるね。」
当たり前だ。
英語なんて海外に行かないと使わないし外国人は日本語が少しでも喋れるようになってから来て欲しいもんだ。
「てか、今何時だ。」
「11時だよ、片付けて寝ようか。」
「え、早くね?」
「花形君、いつも何時に寝てるの?」
「1時とか、2時とか。」
「だから、授業中眠くなっちゃうんでしょ。ほら、寝るよ。」
「今日は大人しく寝るよ。」
風凪の事とか色々あって頭が疲れてる。
「風凪は母さんの部屋使ってくれ。妹の部屋は鍵がかかってるから。」
「うん。そうするね。ありがとう。」
母さんの部屋は1階で俺の部屋は2階にある。
と言っても、家がそんなに広いわけじゃないから階段降りて左に曲がればすぐ着く。
「おやすみなさい。」
「おやすみ。」
俺は自室に戻るとすぐに電気を消して寝る準備をした。
(風凪。大丈夫かな。)
風凪は自分が辛い思いをしてたりしても隠す。
相当辛くなると隠しきれなくて所々に出始める。
周りに心配かけないようにしてるんだとは思うが危険でもある。
抱え込んだ挙句自殺なんてことになったら今度こそ俺はおかしくなる。
自殺に追い込んだ奴をこの手で殺すかもしれない。
そうならないためにも俺は風凪をイジメから守らなきゃいけない。
しばらく考えていると階段を上る音がした。
「あの、花形君。まだ起きてる?」
「ああ、起きてるよ。」
「入ってもいい?」
「どうぞ。」
電気を付けると相変わらず俺の服でブカブカな肢体があった。
首元とかもブカブカだから、少し前屈みになると胸が見える。
「どうした?」
「あの、えっと、怖くて寝れなくて。」
風凪は顔を真っ赤にして俯いた。
なるほど。一緒に寝たけどお互いに年頃ってこともあって不安なんだろうな。
「なら、一緒の部屋で寝るか。と言っても俺のベットはシングルだから風凪はベットで寝てくれ。」
「え、でも花形君はどこで寝るの?」
「床。」
「え、でもそれじゃ花形君が風邪ひいちゃうよ。」
「大丈夫。そんなに寒くないし毛布だっていらないし。」
俺はクッションを枕にタオルケットをかけて寝る準備をした。
「寝るぞ。」
俺は、部屋の電気を消した。
「うん。」
風凪はそれだけ答えた。
さて、ここまで平静を装ってきたが正直心臓はバクバクだ。
同い年の女の子と一緒の部屋で寝ること事態はそんなに珍しいことじゃ無かった。
偶に優が来て泊まっていくこともある。
優の場合は泊まる必要性は皆無なんだが。
勿論、優以外の女子が泊まるのは今回が初めて。
しかも、一緒の部屋で寝るという状況。
ドキドキしない方がおかしいと思う。
しばらく続く沈黙。
俺は寝れないでいた。
優の時は普通に寝れるのに今回は寝れない。
仕方ない。目を瞑ってなにか考えていよう。
こういう時に趣味がないって損だなとか考えた。
その内に俺は寝ていた。
朝、自分のとは違う暖かさを感じて目が覚めた。
目覚まし時計は、6時30分を指していた。
いつも起きる時間の1時間も早くに目が覚めた。
そして、俺を目覚めさせた暖かさの正体は、風凪だった。
俺の中で時が止まった。
俺は今、風凪と添い寝という形で寝ていた。
そして、風凪が着ているのは俺の服でサイズがブカブカ。
風凪の頭は俺の肩の高さで俺の腕にしがみつくように寝ていた。
仰向けから起き上がるときに俺は両手を使って起きた。
ということはだ、俺の目線からは風凪の胸とかが丸見えなわけで...。
しかも、昨日びしょ濡れだったからブラも外したらしく本来つけてるはずの布が見えなかった。
俺は風凪をそっと寝かせた。
この状況で起きられたら流石にまずい。
顔でも洗うか。
朝からこんな悩ましいものを見せられたら色々危ない。何がとは言わないが。
階段を下りて洗面所に向かう。
洗面所の扉を開けると目の前には昨日風凪がつけていたであろうブラが乾かしてあった。
「風凪は俺を悩殺させる気なのか?」
そうとしか思えない配置なんだが。
風凪のブラを見なかったことにしてさっさと顔を洗う。
こんな危険地帯からは早く逃げ出さなければならない。
顔を洗って俺は部屋に戻った。
部屋に戻ると風凪はまだ寝ていた。
風凪にタオルケットをかけなおして俺はヘッドホンをつけてゲームをすることにした。
すべてのゲームでログインを済ませると丁度目覚ましが鳴った。
「んっ。あ、おはよう。花形君。」
「お、おう。」
さっきのことがあって風凪の顔をまともに見れない。
「あ、私寝相悪かったみたいだね。」
風凪は今自分がいる場所を見てそう思ったらしい。
「いや、気にすんな。」
俺も見せてもらったし。
「そう?ならいいけど...。」
「あ、7時45分くらいに優が来る。」
「倉宮さんが?」
「家が向かいなんだ。だから、俺を起こしに来る。」
「へぇー。倉宮さんの家、向かいなんだ。」
ん?待てよ。
優の家が向かいなんだったら態々俺の家に泊まる必要はなかったんじゃないか?
そうすれば風凪も安心出来ただろうし俺もあんな悩殺される危険性もなかった。
「あ、じゃあ。用意してくるから洗面所には入らないでね。」
「分かった。」
さっき入ったけど。
風凪が用意のために下に降りた。
俺も用意をして時間までゲームでもしてることにした。
周回を3回ほど回ったとこで時間になったからバックを持って下に降りる。
キーンコーンキーンコーン。
連続2回、優だ。
「青君、おはよう!」
「朝からハイテンションだな。」
「あれ!なんでつくしちゃんがいるの!まさか、2人で...。」
「風凪を見れば理由くらいはわかるだろ。」
「あ...。」
今の風凪には女子には似合わない怪我の後がある。
「大丈夫だった?」
「うん、大丈夫。」
俺と優と風凪は前に女子2人を並べて登校した。
案の定、風凪の怪我は問題となりイジメていたあの3人は退学となった。
これで、問題が解決すればいいんだが。
「よかったな。これでもう風凪をいじめる奴はいないだろ。」
「それは、青君がいるからでしょ。」
あの時..あの3人が教室に押し寄せた時に俺が対抗した。
それが生徒間で噂レベルで流れ、『俺があの3人を退学まで追い込んだ』という感じになって広まった。
実際俺はなんも手出しはしてないんだけど。
あいつらが勝手に怒りに任せて自爆しただけ。
ただ、それだけだ。




