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第六十九話 突然の来客

週の真ん中木曜日。

天気は雨。そのせいか少し肌寒く感じる。


「うわー。雨だね。テンション下がる。」

「優は植物かなんかか。」

「青君だって雨は嫌いでしょ?」

「そりゃな。足元濡れるから嫌いだな。」

「雨は絶対に好きになれないよ。」


HR後の放課後。

日直の仕事をぶつくさ言いながら続ける優。

俺は特にやることないから帰ろうとしたら優に止められてしまった。


なにか用かと思ったら寂しいから一緒にいて欲しいとの事だった。

さっきまで風凪が一緒だったが先生に用とかで今はいない。


「あ!」

「青君、大変だよ!」

「なにがそんなに大変なんだ。」

「傘持ってくるの忘れた!」

「折り畳みは?」

「家に置いてきちゃった。」


こういう所でうちの幼馴染は抜けている。


「風凪が持ってればいいけど…」

「青君は持ってないの?」

「持ってるけど一人用ですごく小さいやつだ。」


大方相合傘をしようとしたんだろうが残念ながら俺のやつは一人用。

エロイベントは起こさせない。


最近、優や風凪がエロ方面で俺を誘惑してくる。

今のところ全ての誘惑に勝ってはいるが俺の理性もどこまで持つか分からない。


出来るならそういうことはやめていただきたい。

俺の精神衛生上のために。


「日直の仕事終わりー!」

「私も今終わったところだよ。」


優の日直の仕事が終わるタイミングで風凪が帰ってきた。


「風凪、折り畳み傘って持ってるか?」

「うん。持ってるよ。」

「つくしちゃん!出来れば入れてって欲しいんだけど…いいかな?」

「うん。いいよ。」

「ごめんね。家逆方向なのに。」

「大丈夫だよ。」


話がまとまったようだから俺たちは帰ることにした。


昇降口は季節と雨のダブルパンチにより冷え切っていた。

もう少し気温が下がったらこの雨が雪になるんだろうな。


そんなことを考えながら帰った。


「ただいま。」


家に帰るとリビングがやけに騒がしい。


気になって覗いてみると。

まだ立ち始めたばかりくらいの子供がいた。


「あ、青。おかえり。」

「それ、誰。」

「友達の子供なんだけど海外出勤になっちゃってウチで預かったんだよ。」

「いつまで」

「大体1週間前後。」

「1週間も預かるのかよ。なにかあったらどうすんだよ。」

「大丈夫でしょ。ウチにそんな危険なものは置いてないし私がずっと見てればいいんだし。」


とその時。母さんの携帯が鳴った。


「はい。花形です。...はい。え!.....あーはい。すいません。今すぐ向かいます。」


物凄く嫌な予感がするのは俺だけでしょうか。


「青、ごめん。お母さん1週間、泊まり込みになっちゃった。」

「はあ!?この子どうすんだよ。」

「そこの棚に離乳食があるからソレがご飯ね。」

「じゃ!お母さん行くから。後よろしく。」


そう言って母さんは勢いよく家を飛びだした。


「どうしろと?」


置いてかれた当の本人は状況が掴めず「?」を浮かべるばかりである。


この年頃の子供になにをすればいいのかまったく分からない。


取り敢えず出来ることをしよう。


で、隣の家にいる優達を呼んだ。

俺に出来ることの最大限だ。

正直、俺に赤ん坊の世話が出来る訳がない。


「可愛い~もちもちする~。」

「花形君。この子は?」

「あーその子は....」


「ぱぱ!」


場が凍り付いた。

俺が説明しようとしたのにこいつは...


「青君?どういうこと?」

「花形君、子供いたんだね。」


目からハイライトが消えた2人はヤンデレになりそうな勢いで俺を見ていた。


「赤ん坊のいうことを間に受けるなよ。」


「でもぱぱって言ったよ?」

「俺が男だからだろ。そもそも、こいつの母親は誰だって話。優なら知ってるだろ、俺がそんな身体だけの関係を持つなんて不可能だって。」

「それは...そうだけど...」


そんな器用な事が出来るなら2人への答えなんて迷ったりしない。


「その子は母さんの友達の子だ。」

「お母さんは?」

「仕事。さっきの感じからすると仕事入れてたの忘れてたんだろうな。」


「いつ帰ってくるの?」

「一週間後。」


「「え?」」

「一週間後」


「預かる期限は?」

「一週間。」


「青君、ちゃんとお世話できるの?」

「絶対に無理。」


動物の世話だって難しいのに人間のましてや赤ん坊の世話なんてできる気がしない。


「だから、手伝って欲しい。」

「しょうがないなー。手伝ってあげる。」

「私もできる限りのことはするよ。」


「ホントにすまん。」


不甲斐ないな。

人一人世話するのに優達の手を借りなきゃいけない。

うーん。なんかスッキリしない。


「......うぇ....ふえぇぇん。」

俺達が今後について話していると優に抱かれていた赤ん坊が泣き出した。


「あらら。お腹減ったのかな?」

「ああ。この袋に離乳食があるって言ってた。」

「そう言えば、このこの名前は?」

「速野勇士だって。」

「ゆうし君かー。」

「かっこいい名前だねー。」


ストローで離乳食を食べながら勇士は満足そうな顔をしている。


「多分、勇士君は1歳半くらいだから。1人でも歩けると思うよ。」

「そうだね。1歳半くらいだったら1人で歩けるんじゃない?」


「2人とも詳しいな。」

「昔、保育士に憧れてちょっと勉強したんだ。」

風凪が保育士...女神的な優しさがあれば園児からも人気になるだろうな。


「私はお母さんに色々聞いてたからだよ。」

まあ、優は知ってた。昔から子供とか大好きだったもんな。


勇士は眠くなったのかウトウトしだした。


「眠いのかな。」

「女子二人に囲まれて寝るとか豪華すぎかよ。」

「青君も一緒に寝たいの?」

「いや、そういうわけじゃないけど。」


この二人に囲まれたら安眠できる気がしない。

いや、実際にできないだろうな。


「でも、どこで寝ればいの?」

「....さあ。その辺は聞いてないな。」

「じゃ、青君の部屋でいい?」

「え、俺が面倒見るの?割とキツイと思うんだけど。」

「大丈夫、私も一緒に寝るから。」

「それは助かるけど...俺の部屋で?」

「他にどこで寝ればいいの?まさか床でなんて言わないよね。


そこまでは言わないが一緒のベットというのはいかがなものかと思ってしまう。


勇士が寝て風凪が明日くると言って帰ってしまった。

送ると言ったら断られた。


「花形君?覚悟はしておいた方がいいよ?」

なにをと聞こうとしたが風凪の意味ありげな顔を見たら聞こうとしたが聞くのが怖くなった。


「優、勇士は寝たか?」

「シーっ。今寝たとこ」


俺のベットですうすうと寝息を立てて寝ている。


「可愛いね。」

「寝ていればだけどな。起きればうるさいだろ。」

「ちゃんと誰かがそばにいれば大丈夫だよ。」

「そうは言ってもいつも誰かがそばにいるって無理だろ。明日だって学校があるわけだし。」

「そうだよね。明日はお留守番かな。」

「でも、それって危険じゃないか?」

「なんで?」

「うちには階段だってあるし、刃物だってある。この年の子1人が半日近く過ごすには危険すぎる。」

「じゃあ、学校に連れていく?」

「学校に連れて行っても俺達が授業出てる間、誰が面倒見るんだよ。」

「青君の空き教室で預かるのは無理?」

「それでも俺が毎時間いるわけじゃないからな。」

「先生に事情話して強力して貰う?」

「あまり教師は頼れない。全員が全員強力してくれるとは思えない。」


下手をすれば勇士の母親にも連絡が行って仕事に支障をきたす可能性だってある。

そこまでして教師に頼ろうとは思わない。


「あ!それならいっそ堂々と教室にいればいいんじゃない?それなら手が届く場所にいつもいることになるし!」

「それまでに絶対に質問攻めにされる未来が見える。」

「それはしょうがないよ。ゆうし君のためだよ。」


この手の話題は女子だけじゃなくて男子も気になる話題だ。

それに高校生が子供連れで登校したとなればあの風紀委員長がなにを言ってくるのか分かったもんじゃない。


「じゃあ、夜ご飯食べて寝ようか。」

「あ、ああ。そうだな。」


そうだったその前にこの夜を明かす必要があるんだった。


夕飯を食べて俺の部屋で勇士を間に挟んで寝っ転がる。


「良く寝るやつだ。」

「なれない環境で疲れてるんだよ。」


気持ちよさそうに仰向けに寝る勇士はとても気持ちよさそうだ。


「ねえ、青君。」

「ん?」

「私達が結婚してさ。赤ちゃんが生まれたらこれくらい可愛いのかな。」

「....わからん。俺に聞くな。」


そう言って俺は優達に背を向けて寝た。


(なんだよ。今の質問。)

(俺と優が結婚?)

(そんなの.......)


有り得ないと言い切れなかった。そして、それもいいなと思った自分がいたことに俺は自分自身驚いている。

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