第六十一話 悩み
倉宮優奈、風凪つくしの2人から告白を受け、尚且つ「私の事好きにさせてやる」と宣言された俺は次の日、学校を休んだ。
朝一番に優が迎えに来たが俺は声を出さずにチャットアプリで内容を伝えた。
優からは『分かった。』とだけ返事が来てなんで休むの?だとかの追求は受けなかった。
告白されたのは風凪だけならこんな学校を休むようなことはなかった。
しかし、現実は非情であれが夢、というような気の利いた展開にはならなかった。
その展開にならなかった結果がこの状況である。
今日は学校を休んで状況を整理したい。
なぜ、風凪があんな大胆な事をしたのか。
しかも、失敗するとほぼほぼの予想はついていたという。
杏奈の話じゃあ、失敗することが確実また濃厚な時には直接言うことは避けるという。
それなのに、あの2人は俺に直接言った。
確かに全ての女子がそうするわけじゃないだろうけど2人同時になんて現実世界で有り得るのかという話だ。
いやまあ、有り得るからこういう状況になってるんだけど。
告白しない理由の第1位が『関係が壊れるのが嫌だから』という雑誌の情報は間違っていたのか。
────俺はどうしたらいい。
閑話休題
今日1日中考えてはみたがこれだ!という案は出なかったし勿論正解も出なかった。
そもそも、正解があるのか怪しいものだ。
時刻は午後4時、そろそろ真奈達が帰ってくる時間だ。
と思っていると玄関が開く音がした。
それと同時に3人分の声が聞こえた。
心臓が跳ねたのがわかった。
昨日から優とも風凪とも顔を合わせていない。
気まずいのは分かりきっていた。
「青君、いる?」
「ああ。」
こうして、あの現場にいた当事者のみが俺の部屋に集まった。
真奈は友達と遊ぶとかでまた出かけていってしまった。
「あの、花形君。昨日はいきなりあんなこと言ってごめんね。私、酔っ払ってたみたいで...」
「酒でも飲んだのか?」
いや、それはないか。
演劇が終わってから俺は風凪と一緒にいた。
そもそも酒なんて売ってる店はない。
「寝る前に食べたチョコレート...あれウイスキーボンボンでしょ?」
「ういすきーぼんぼん?」
「うん。お酒が入ったチョコ。と言っても未成年でも買えるものだから...」
あー多分この前清水が置いていったものだ。
「青君、お酒強いからね。」
親の酒を間違って飲んだが俺は全然平気だったからな。
「でも!昨日言ったのは本心で嘘じゃないから...」
そう言ってまた顔を赤くする風凪。
酔っていたからあんな大胆な事が出来たのか…。
「私も嘘じゃないよ!」
「2人とも嘘じゃないって分かってるから困ってるんだろうが。」
「今すぐに答え出して貰う訳じゃないから大丈夫、ゆっくり考えて。」
「そうは言ってもな…」
前にも言ったが俺がやってるのは『保留』という最低な行為だ。
2人の少女に期待させるだけさせておいて後になれば片方または両方ともさよなら、ということも有り得るわけだ。
二股かけてるチャラ男とやってる事はそう変わりない。
「大丈夫!10年以上好きだったんだから今更だよ。」
優はクラスでも人気の部類で過去に何度も告白をされているのは知っている。
バスケ部の近藤とかも告白したらしいが敗れたと聞いた。
「私もいきなりだし…花形君の気持ちは考えてなかったから。」
風凪も一部の男子に人気だ。
なんでも、家庭的で勉強も出来てお淑やかだからだそうだ。
しかし、俺がそばにいるから俺と付き合っているという噂話を聞いたと龍平が言ってたっけ。
「そう言って貰えると助かる。」
早々にケジメを付けなきゃな。
次の日から俺は学校に復帰した。
朝はいつも通り優の出迎えで登校、授業中は風凪に分からない所を教えて貰いながら過ごすという前とほとんど変わらない生活だった。
「青砥、お前風凪さんとなんかあった?」
「!な、なんでだ?」
「いや、風凪さんの目がなんか変わったつか柔らかくなったつか。とにかく変わったんだよ。」
昼、空き教室で昼食を食べていると龍平がそんなことを聞いてきた。
変わった原因は恐らく昨日の1件だろうな。
「別になんもない。」
「そうか、後夜祭の時お前ら居なかったからなんかあったのかと。一夜の過ちとかあったら面白いのに。」
「そんなことになったらどっちかは退学だろうな。」
ま、そういう過ちならこの旧校舎の影で行われてるよ。
毎回、追い払うのが面倒なんだ。
「龍平だって昨日は後夜祭に出てなかっただろ。」
「ああ、杏奈ちゃんに手伝いをお願いされてな。本当は青砥を探してたんだけど見つからなかったから俺でいいやってことでそうなった。」
「完全に先輩として見られてないだろ。」
「ふっ。俺は恋人に慣れればいいのさ」
「恋人よりペットの方が合ってると俺は思うが。」
「杏奈ちゃんと付き合えるならそれもありかもな。」
年下の女子のペットになっていいとかいうドMの友人には冷たい目線を送っておいた。
5、6時間目は空き教室でサボった。
午前中には2人とも普通に接してくれたが俺はまだ怖い。
女子高生という超不思議生命体はいつ何時どんなことをするか分からないからだ。
昨日の1件がいい例だろ。
あれからずっと俺はどんな答えを出せばいいのか分からないでいる。
例えば、俺が2人のどちらかを選んだ場合、必然的にどちらかは振られることになるわけだ。
「答えは急がなくてもいいか…。」
「なんの答え?」
俺がボソッとした呟きに反応したのは凛とした声だった。
「鈴姉か、びっくりさせるなよ。」
「文化祭終わってすぐなのにサボるとは相変わらずね。」
「そういう鈴姉だってサボってるじゃん。」
「3年生は今は三者面談期間で普通なら学校に居なくてもいいのよ。」
あー、進路とかの確定とかいろんなことが確定してくる時期だもんな。
「で、用もないのになんで学校に?」
「風凪さんと倉宮さんから事情は聞いたわ。」
「そうか...」
「ハッキリ言うわ。2人ともが幸せになれる結末はないわよ。」
俺も半ば気づいていながら見て見ぬ振りをしていた事実を若干デッドボール気味に投げてきた。
「それは...分かってる...」
「なら、何を悩んでいるの?」
「まあ、さっき鈴姉が言ったことも悩んではいたんだがそれよりは俺が好きを知らなすぎる。」
「どんな感情が出てきたら好きになるんだ?」
「どんな言動が出てきたら好きになるんだ?」
「俺にはそれが分からない。」
ゴンッ!
俺が俯くと頭の上から拳が降ってきた。
「痛い」
「痛い じゃない。青砥はなんかしらの定義がないと動けないの?そんな面倒な性格をしてるなら直した方が今後の人生で役に立つわよ。」
「いい?好きに定義なんてないの。好きの深度は人それぞれだし一概にこれとは言えないのが今の恋愛の現状よ。深度の違いで別れるカップルも少なくはないわ。」
「ただ、言えることは青砥は好きを知ってるはずよ。あれだけ好意を寄せられていれば分かるはず。」
「いや、全然わからな─」
「全然分からない。とか言ったら本気で説教よ。」
えー、そんな理不尽な。
俺は分からないから悩んでるのに分からないって言ったら説教って...
「ま、2人から返事は急がなくてもいいって言われてるでしょ?なら、じっくり考えればいいわよ。」
「でも、それってなんか卑怯じゃないか?」
「なにが卑怯なの?」
「だって、考えてる間には保留状態になってるってことで風凪や優の気持ちを弄んでることにならないか?」
「.....まあ、見方によってはそうかもしれないけど彼女達がそれでいいと言ってるんだからいいのよ。」
「あまり答えを急ぎすぎて青砥も彼女達も納得がいってないのが1番最悪で最低な答えだってことは覚えておくといいわ。」
「それは分かってるつもり。」
なんか、プレッシャーだなー。
俺はただ、いつも授業出てたまに空き教室でサボる的な至って平凡な高校生活を望んでいた。
今の状態は嫌いではないが何かしら悩みの種があるから気が休まらない。
もう少し、時間がある時、夏休み...は早すぎか。
冬休みとかは...年末年始悩み通すことになりそうだ。
うん。やっぱり、告白なんて2人同時にうけるもんじゃない。
どこかのライトノベル主人公なら上手くかわせたり上手い立ち回りが出来るんだろうな。
俺も少しは見習わないとな。




