第四話 継続
5.6と授業(睡眠)を受け帰りのHR。
さて、ここで問題があった。
帰り道のことだ。
俺と風凪の家は反対方向。
女子生徒の家までついて行くとなるといよいよ危なくなってくる。
しかし、帰り道が一番危険なことも確かで待ち伏せとか今度は学校外の奴らと一緒になって来るかもしれない。
だから、一番危険なんだ。
「あ、あの、花形君?帰りはどうしたらいい?」
「出来るだけ家まで行きたいけどそれだと風凪も嫌だろ?」
好きでもない相手とましてや初対面の相手と一日中一緒にいるなんてこと、苦痛を感じる人の方が多いはすだ。
「私は...別にいいけど?」
「は?」
これには俺も驚かずにはいられなかった。
考えてもみてくれ。
初対面の異性の生徒がそれなりの経緯があるとはいえ家までついて来るという状況。
俺が風凪の立場だったら絶対とは言えないけど断る可能性が高い。
どんなに危機管理がなってなくてもそれだけは嫌がるのが普通というものだ。
それなのに、風凪は了承した。
「べ、別に変な意味はなくてただ怖いだけだから...」
「お、おう。なら、一緒に帰るか...。」
元々お互いに人と接することがないんだからこうたどたどしくもなる。
理由もちゃんとあったからホッとした。
元から無愛想だったおかげでそんなに顔には出てなかったと思う。.....そう思いたい。
帰りのHRを終えて優と風凪を前にして風凪の家まで送ることになった。
前では2人の女子高生が雑談に花を咲かせている。
少し聞くがなにが面白いのか分からないとこで優は笑う。
優とは正反対の性格をしている風凪は少し困った様子で聞いていた。
学校から歩くこと15分。
「ここが私の家だよ。」
白い壁面が眩しい一軒家。
門の前には小さな花壇もある。
「今日はありがとう。すごく安心して授業に集中出来たよ。」
「喜んで貰えたなら結構。けど、これからしばらくこういう感じになっちゃうと思う。流石に限度は決めるし風凪がもういいと言うなら辞めるから。その時は言ってくれ。」
「うん。ありがとう。」
「んじゃ。」
風凪と別れて元来た道を戻る。
「青君がつくしちゃんと一緒にいたのはそういう事だったんだね。」
「他に何がある。俺が積極的に人と絡むように見えるか?」
「だから、不思議だったんだよ。もしかして良からぬ関係何じゃないかって。心配して損したよ。」
妙なとこで変な推理を入れるから混乱するんだよ。
推理するのは情報が集まってから。
鉄則だろうに。
「なんで優が心配すんだよ。」
「別に!何でもないよ!」
「そうか。」
急にまた元気になって。
テンションがわからん。
次の日。
「あ、花形君。おはよう。」
朝、いつもの時間に俺は空き教室じゃなくて教室にいた。
「おう。昨日の今日でよく来る気になったな。またアイツらが来るかもとは思わなかったのか?」
「思ったけど花形君が守ってくれるのを信じてるから。」
「そ、そうか。」
最近の女の子はこう人をドキッとさせるのが流行っるのか?
風凪は派手か地味かで言えば地味な方だろう。
スカートだって校則をちゃんと守って膝下まで下がっている。
うちの学校はブレザーでその下にはセーターを着ている。
ラノベとかアニメとかの地味っ子キャラと言えばという感じの生徒。
昨日話し始めたばっかでお互いのことは同学年で同じクラスという認識程度。
それなのに、不覚にもドキッとしてしまったのだ。
「今日は授業出てくれる?」
「ああ、一応全部出るつもり。」
「大丈夫?一緒にいてくれるのは嬉しいけど無理矢理は私的にもちょっと。」
「授業出るのが普通だからサボるのは異常なことだから。」
「あ、うん。そうだよね。」
風凪も俺に毒されて来てるな。
一緒にサボれたら楽なんだけど。
真面目な風凪は嫌がるだろう。
1時間目から6時間目まで受けた俺はその日の活力を使い果たしていた。
それは、2時間目のこと。
昨日同様世界史があった俺のクラスは勿論清水だった。
その清水にいじめられた。
寝てたらいきなり起こされて答えろとかいう。
世界史は中学の応用だから簡単は簡単だった。
正解を答えた俺だったがそれからずっと俺だけを指名してきた。
偶に、他の生徒も指名してたが数でいえば俺の方が圧倒的に多い。
そんな感じでいじめられた。
「だから、授業に出るのは嫌なんだ。」
担任の清水は俺の叔母と相性がいいのか俺のことを色々知っている。
そう、色々だ。
「大丈夫?清水先生も容赦なかったね。」
「あれは、人間じゃない。鬼か悪魔の類だ。」
「また、そんなこと言うとどこかで聞いてるかもしれないよ?」
「そうなったら俺は死ぬ。」
しばらくして、清水が教室に入ってきた。
「おーし。HR始めるぞ。」
最初は諸連絡でダラダラと話した後、真面目な顔で話し始めた。
この教師が真面目に話すなんて相当大事なことかろくなこと考えてないかのどっちかだ。
「というわけでイジメとか悪口とかくだらないことはやらないように。」
以外にも前者だった。
と、思っていた時期も俺にもありました。
「で、青砥。私が鬼とか悪魔って言ってたの聞こえてるからな?」
「地獄耳が。」
「教師への暴言は指導対象だ。後で職員室まで来るように。雑用を頼もうかな。」
そんなの誰が行くかよ。
「来なかったら、分かってるな?」
「あ、はい。」
清水の顔は笑ってるけど笑ってない。
ある種の狂気すら感じる。
「んじゃ、解散。」
HRが終わった後俺は本当に雑用係にさせられた。
その間、風凪には図書室で待ってもらっていた。
図書室なら司書がいるし勉強する生徒もいる。
異変があれば少なからず教師に言うだろうと言うことで図書室となった。
「よし、帰ってよし。」
「疲れた。」
「あ、そうだ。」
「?」
「青砥、最近風凪と仲良いみたいだがなにかあったのか?それとも現在進行形でなにかあるのか?」
清水の嫌いなとこはここだ。
普段、大雑把な性格してるくせにこういう時だけ勘がいい。
「別に。なんでもねぇ。」
「...そうか。気をつけて帰れよ。」
清水と別れて図書室に向かう。
「あ、花形君。清水先生との用事終わった?」
「ああ、あの教師、ほんとに雑用させやがった。」
「花形君にも非はあると思うよ?」
ただ真実を言っただけなんだが。
「ま、いいや。帰ろう。」
「うん。」
今日は優がお母さんに買い物を頼まれてると言って先に帰ったから俺と風凪だけで風凪を送ることになった。
「.........」
「.........」
道中無言だったのが意外と辛かった。
お互い人見知りなとこあるから仕方ないのかもしれないけど。
「あの。花形君はなんで私を助けてくれたの?」
「は?イジメから助けるのは当然だと思うが?」
「多分、クラス全員は私がイジメられてるの知ってたと思うんだ。けど、誰も助けてくれなかった。」
「自分がターゲットにされるのが怖かったんだと思う。だから、私が犠牲になって耐えれば済む話しだと思ってた。けど、花形君は違った。」
「私を無条件で助けてくれた。」
なんでなにも理由なんてない。
あの時突然起こった『気まぐれ』。
強いて言うなら、助けたかったから。
偽善だと言う奴もいるだろうけどそんなことは関係なしに助けたかったから。
ただ、それだけ。
「特に理由なんてない。強いて言うならただの気まぐれだな。」
「じゃあ、その時の気まぐれに感謝だね。」
そんな感謝されることでもないと思うけど。
『青砥。お前ってほんと気まぐれ屋だよな。』
『はぁ?なんだいきなり』
『いや、助けてくれたのはありがたいけどその後のことなんも考えてないとか行き当たりばったりすぎだろ。』
『人生なんてそんなもんだろう。』
『人生観出てきた!』
『けど、ほんとに感謝してるよ。ありがとうな。』