第三話 対策
2時間目に出ることにした俺は風凪と一緒に教室に行った。
「あれ!どうしたの青君!清水先生の授業に出るなんて珍しいね!」
俺が教室に行くとクラスメイト全員が珍しいという目でこっちを見てきた。
「別に気が向いただけ。」
「あ、つくしちゃんも一緒なんだね。1時間目出てないから先生心配してたよ?」
「うん...花形君と話してて...」
風凪がそう言うと優は目で「何話してたの?」と問いかけてくる。
俺も目で「特に面白いもんじゃない」と答える。
何十年も一緒にいればこれくらいはできるようになる。
優がほかの女子生徒に呼ばれてそっちに行く。
俺と風凪は席についた。
この間にアイツらが来る可能性が高い。
だから、警戒はしてないといけない。
「あの、花形君?」
「?」
「守ってくれるのはありがたいんだけど具体的にどうやって守ってくれるの?まさか、殴ったりは…。」
「俺をなんだと思ってる。殴りはしない。まあ、相手が暴力で解決しようとしたら対抗手段として殴ることはあるかもしれないけどそれでも本気で殴ったりしない。」
男子高校生である俺がいくら同い年と言っても女子の腹とか顔とか殴ったら今後に影響を及ぼすかもしれない。
そうなると、風凪の件が色々面倒くさくなる。
それは、できるだけ避けたい。
「なら、良かった…。」
「つくしちゃん。みーっけ。」
背後から聞こえる甲高い声。
それに続いて何人かの気配を感じる。
クラスもいきなりの侵入者にしんと静まる。
「探したぜ。ほら、遊ぼ。」
「拒否権はないよ。」
男っぽい口調の女子生徒が風凪の腕を掴んで引っ張る。
風凪の顔は恐怖とも嫌悪とも取れる顔をしていた。
ガシッ。
「あ?なんだお前。」
俺はあくまで波風立てないように言った。
「悪い。風凪と今話してんだよ。遊びに誘うのは後にしてくれ。」
「はぁ?そんなの知るかよ。ほら、行くぞ。」
あー。うん。ダメだ。
俺は護身術である、手首を捻って掴まれた手をほどくということをした。
実際あれは、風凪の立場の人間がやるように出来てるから余計な力が必要だった。
「痛った!何すんの!」
「黙れ猿。人の言葉を理解できないのか?理解できないなら猿山か小学校からやり直せ。じゃなきゃ今すぐ俺の前から消えろ。」
俺はすぐにキレるから友達が出来ないと優に言われたことがある。
それが、この現状である。
今回は状況が状況なだけに許して欲しい。
「は、はぁ?意味わかんない!」
「だから、なら猿山か小学校からやり直せって言ってんだよ。」
「なんでお前に指図されなきゃいけないんだよ!」
「あ?なら、お前らがしてること今すぐここでバラしてもいいんだぞ?ん?」
「っ!」
「もういいよ。いこ。」
「なんか冷めたわ。」
「ふん。お前ホント詰まんねぇ。」
「それは、なによりで。」
3人組は教室を荒らすだけ荒らして出ていった。
「風凪。大丈夫か?」
「うん。で、でも。花形君が危ないんじゃ...」
「ああ、大丈夫。アイツらそこまで力ないしただ群れて色々やってるだけだから。」
「なら、いいけど...」
それより、危険になったのは風凪のほうだ。
今追い払ったことにより倍で報復されるかもしれない。
風凪の立場はまだ変わったわけじゃない。
「おーし。授業始まるぞー。ってあれ?」
能天気な声で入ってきたのはうちの担任。
清水涼子。
担当は世界史。年齢=彼氏いない歴の熟練教師。
熟練と言ってもまだ29でギリギリのラインにいる。
来年はおばさんと呼ばれてもおかしくない歳だ。
「お!青砥がいるなんて珍しいな。」
「あぁ、優にも言われた。」
「私の授業で問題起こすなよ?後処理めんどくさいんだから。」
こういうことを平気で言う教師だ。
思ったことをすぐに口に出しズバッと物事を言う性格。
それにより、男子からも女子からも支持は厚い。
「寝かせておけばなんもできねぇよ。」
「授業受けに来たんじゃないのかよ。」
んなわけあるか。俺はアイツらを追い返すために来たんだ。
何なら今すぐ空き教室に戻って寝たいわ。
しかし、せっかく来たんだから少しは受けよう。
チャイムが鳴り2時間目の授業が始まった。
内容はフランス革命がどうとかの話。
前の授業を出てないから全く分からない。
「花形君分かる?」
「いや、全く。」
「後で教えようか?」
「頼む。」
風凪が教えてくれるようだ。
あんなことがあったばかりなのにへっちゃらみたいだ。
いや、無理してるのか。せめて俺に心配かけないように。
風凪に教えてもらうんだからと起きていたが3分後には睡魔に負けて寝てしまった。
次に起きたのは2時間目終わりのチャイムが鳴った時だった。
「よく眠れた?」
「ああ、邪魔が入らなかったから快眠だ。」
多分、清水は諦めて俺を起こすのをやめたというかしなかったんだと思う。
俺、起きてもすぐ寝るし。
無限ループなんだよ。
それから、3・4と連続で授業に出た。
快挙だな。俺が3時間連続で授業にでるなんて。
来る教師全員に珍しいって言われたよ。
「青君!お昼食べよ!」
「ああ、もうそんな時間か。」
「青君、さっきまでずっと寝てたよね。」
授業がつまらないからね、仕方ないね。
「あ、つくしちゃんも一緒に食べる?」
「あ、えっと。」
「風凪も一緒に食おう。その方がいい。」
「花形君がそういうなら。」
風凪には悪いけど俺のそばにいてもらわないと心配でならない。
「2人ってどういう関係なの?」
「ただのクラスメイトだ。それ以下でもそれ以上でもない。」
「.....怪しい。」
一体なにが怪しいというんだ。
ただ連れていかれそうなとこを止めただけじゃないか。
まあ、はたから見たら怪しさ全開か。
空き教室に行く間、優は俺たちの動向をずっと注意深く見てた。
特にこれといった隠しごともないし秘密もない。
ずっと優にガン見されながら空き教室についた。
「空き教室、久しぶりにきたー!」
まあ、ここは普段生徒が立ち寄らない場所だから。
トイレとかも寂れてて昼間でも不気味な感じがして一時期は、霊が出ると噂になったことがある。
3階の廊下を徘徊してるのを生徒が見たそうだ。
.....種を明かすと。霊というのは俺のことで俺が寝ぼけながら歩いてたから霊が歩いてるように見えたんだろ。
実際、去年1年間ずっと過ごしてきたが霊なんか見たことないし変な音とかも聞いたことない。
あるとすれば毎回退学になる不良共がタバコだの酒だのやってる声とかを聞く程度。
「うわー。つくしちゃん。綺麗なお弁当だね。」
風凪の弁当は女の子らしいお弁当だった。
厚焼き玉子にタコのウインナー。キャラ弁とまではいかないが白米も綺麗に彩られている。
「倉宮さんのも可愛いよ?」
優のは風凪と違った可愛いさを持った弁当だった。
違う点は白米がキャラの形になっていることくらいだが。
教室じゃ、いつもこんなやり取りが行われている。
俺はコンビニとかスーパーで買った惣菜パン。
スポーツもしてないしそんなに動くことがないからこれくらいで充分なんだ。
「青君は5時間目はどうするの?」
「でる。てか、しばらくは出る。」
「おー。青君がついに真面目に!」
「そうだといいな。」
「ねー。」
幼馴染のやり取りなんてこんなもんだ。
ツッコミ役がいないと永遠にこんな会話が続く。
「ごめ.....ううん。ありがとう。花形君。」
この時の笑顔は永遠に忘れることがないというくらい可愛いものだった。




