第三十四話 キャンプ前日
キャンプまであと1日となった日。
俺はいつものようにバイトしていた。
今は12時で小休憩中。
12時は人が多くなる時間だから15分だけ休憩してまたホールに戻る。
「キャンプ楽しみだなー!」
「ただの野宿だろ。なにが楽しいんだ。」
「バーベキューとか水遊びとか楽しいだろ!肝試しだって出来るし。」
「どれも面倒臭いものばかりだな。」
「ったく夢がねーよ、夢が!」
夢を見るのは寝てるときで十分。
小休憩が終わってまたホールに出る。
杏奈とバトンタッチして注文を受けに行く。
そこにカランカランという入店のベルと共に入ってきたのは超見知った顔だった。
「青君!」
「花形君。ごめんねお仕事中に。」
俺を君づけで呼ぶのはこの2人しかいない。
「2名様ご案内。」
キッチンに聞こえる程度の声で言って2人を席に誘導。
「ご注文お決まりでしたらそちらのベルでお呼びください。」
俺はあくまで淡々と機械的に言った。
「もー!なんでそんな機械みたいな喋り方なの!」
「そんなに敬語とか使わなくてもいいよ?」
いや、こっちは仕事中だから。
立場的には優達が客で俺は店員。
他の人の目があるから出来るだけタメ口は控えなきゃいけない。
「何しに来た。」
まあ、俺は普通に喋るけど。
「何って、お昼食べに来たんだよ?」
「なんで態々…」
「つくしちゃんがここにしよって」
「えぇ!それを言ったのは優奈ちゃんでしょ!」
この際どっちでもいい。
「注文決まったらそのベルで呼べ。」
そう言って他の人の注文を取りに行く。
そのうち、優達の席のベルが鳴って呼び出された。
優達は注文を済ませたあと俺に1枚の紙を手渡した。
その場で確認する訳にはいかないからキッチンに持ってって確認した。
『明日の予定とか色々聞いて。』
と書かれていた。
予定はみんな空いてるだろうしその色々が重要だと思うんだが。
「あ、私は実家に挨拶に行くので途中からの参加になります。」
「分かった。それを書けばいいだろ。」
優達の料理が出来上がって運ぶ。
運び終わって最後に紙を残していった。
『杏奈は実家に挨拶に行くかれ途中参加だそうだ。』
それから、しばらく手紙のやり取りがあった。
お昼時とはいえ夏休みだから客が少ないのが幸運だった。
優達は買い物に行くと3時くらいに出ていった。
入店が12時くらい、退店が3時...女子ってほんとにドリンクバーだけで3時間ぐらい粘るんだね。
午後5時になって終業した俺達は優からの指示で俺の家に集まることになった。
「キャンプかー。俺小学生以来だわ。」
「龍平先輩は今でも小学生みたいな考えをお持ちなので最後からそんなに日は経ってないんじゃないですか?」
「ん?それって俺が小学生と同類ってこと?」
「そうですよ。」
「酷いなー、せめて中学くらいにしてくれよ!」
いや、お前高校生だろ。
中学生でもダメだろ。
龍平と杏奈が俺を挟んで言い合いをしながら家に帰った。
「おじゃまします。」
「おじゃまー」
「あ、青君。おかえり。」
「花形君、おかえり。」
俺が帰ると既に優達がいた。
「どうやって入った。」
すると、優は鍵を見せてきた。
「青君のお母さんがくれた。」
とうとう、他人に鍵を預けるようになったか。
いくら幼馴染とはいえ血の繋がりのない人をどうしてそんなに信用出来るのだろうか。
まあ、優の場合なにかしてもすぐに分かるからいいけどさ。
隠すのが下手すぎて可哀想なくらいだ。
リビングにて鈴姉は別件でいないが加奈先輩がちゃんと伝えてくれるとのこと。
後で、一応話の趣旨は伝えておこうか。
「で、なんのために集まったんだ?」
話すことなんてないしあとは個人の用意だけなんだが…
「んーこれと言って理由はないけどなんか皆で集まりたくなっちゃった!」
いや、可愛く舌出してもダメですよ?
理由も無しに集まったのかよ。
昔から急な行動をしがちだがここまでとは恐れ入った。
「んじゃ、ここで確認しておく。水着とかその他キャンプ用品の他に用意してほしいものは?」
「花火がしたいから誰か買ってきてくれると嬉しいかな。」
「誰が買うかは後にして他は?」
「んー」
「倉宮さん、誰が行くのか把握してる?」
「あ、そうだった。」
「ガバガバな予定だな。」
行くのは、男2人と真奈を除いた前回の女性陣。
最初は真奈も行く気ではいたが母さんが旅行に行くと知った途端そっちについて行くそうだ。
女子が減ればこっちの負担も減る。
少なくとも、守らなきゃいけない対象が減る。
「テントとかのキャンプ用品はどうするんだ。」
「それなら、店長が持ってるらしい。食材も店で使わなかった食材を使うらしいからその辺は心配しなくてもいいとさ。」
「そうですか。」
取り敢えずは明日の詳細を聞くことが出来たから良しとしようか。
まったく、前日だと言うのにこうも予定がガバガバだとこっちまで心配になる。
そして、明日はいよいよキャンプ出発日である。
どうか事件とか面倒臭いことは起きないでほしい。




