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第二話 予兆

「なんでこんなことした。」

「それは.....」


女子生徒は少し考える素振りを見せてから答えた。


「ほ、ほんの出来心です。」

「出来心?」

「そうです。だから、店員さんでも警察でも呼んでください。」


この時、俺はある違和感を覚えた。

見た目からそんな好奇心旺盛でやんちゃするタイプには見えない。

いや、もしかしたら素はやんちゃなのかもしれないがこんな夜遅くに万引きなんて普通はしない。


他になにか理由があるはずだ。

それに、あの傷...


「もうしないって言うなら誰も呼ばないけどさ。俺じゃなくて本当に店員だったら退学レベルのことだぞ。」

「そ、それでも好奇心には勝てないんです。」

「程々にな。」


女子生徒から未会計の商品を預かって店の陳列棚に戻す。

ホントになんだったんだろうか。


俺がレジに行くと丁度優が会計するところだった。


「あ、おかえり。」

「ん。」


俺と優はそのまま会計して帰った。

もちろん、荷物は俺持ち。

ちくせう。

醤油と味醂って重いんだよ。運動してない俺からしてみればだいぶキツい。


「さっきまで何してたの?」

なんて答えようか。

俺の中で解決してから優には話したい。

じゃないと優はお節介を焼いて首を突っ込んでしまう。


「.....猫と遊んでた。」

「猫嫌いなのに?」

「子猫だったんだ。」

「可愛かった?」

「そりゃな。まだ爪も育ってないから引っ掻かれないし。」


適当に誤魔化したけど割と誤魔化し切れた。


次の日。

俺はいつも通り気だるげに学校に向かう。

しばらく教室で本でも読んでおく。

朝は職員会議で鍵が取れないからな。


朝のHRのチャイムが鳴る。

さて、空き教室に行きますか。

俺が空き教室に行こうとすると担任が鍵を持ってきてくれた。

一々行くのめんどくさいから非常にありがたい。


担任から鍵を受け取り空き教室に向かう。


新校舎から旧校舎に行くには1階か3階から伸びる連絡橋を渡る必要がある。

上空から見ると丁度『コ』の字形になってる。


俺の空き教室は3階の端。

この下ではよく告白とかタバコ、飲酒なんかが行われる。

その度に職員室まで電話しなきゃ行けないからそれまためんどい。


俺は今日1日この空き教室で過ごすつもり。


俺がサボりを決め込んで睡魔に襲われていると旧校舎を走る音がした。


学校に怪談は付き物だがまだ明るいうちから出られても怖くない。

音からして2階から上がってくるところだ。


このまま走り回られるのも迷惑だから止めることにした。


俺が空き教室のドアを開けるのとほぼ同時。

1人の女子生徒が黒髪を揺らしながらこちらに走ってきていた。


「おい、お前。なにして.....」

そこまで言いかけてその先を言うことが出来なかった。

それは、女子生徒が言ったことが原因だ。


「ハァ...ハァ...助けて。」


助けて。

この平和な国でしかも学校という一応規律がある場所で聞くとは思わなかった言葉。


「こっち。」

俺は女子生徒の手を引いて空き教室に入れた。

そして鍵も閉める。


鍵を閉めるとまだ廊下から数人の足音が聞こえた。

足音からして数は3人。


『つくしちゃ〜ん。どこにいったの〜?』

『確かにいねぇな。こっちに上がってきたはずなんだが。』

『屋上じゃない?』

『アハハ。そのまま自殺してくれればいいのに。』

『キャハハハ。それね!』

『なんで万引きぐらいできねぇんだよ。』

『仕方ないんじゃない?なんか邪魔入ったぽいし。』

『関係ねぇよ。やらなかったあいつが悪い。』


廊下から聞こえて来たのは胸くそ悪い悪口と甲高い声。

どこのクラスか分からないが同じ2年ってことは分かった。

万引き。この言葉には覚えがあった。

記憶力皆無の俺でも覚えてる。

昨日の出来事と完全に一致した。


足音は屋上へと向かっていった。


「よし。もう大丈夫。あいつら屋上に行った。」


振り返ると女子生徒はドアから1番離れた、教室の隅にいた。


「もう大丈夫だって。」

「あの、ごめんなさい。」

「いや、なんだ。あいつらの話聞いてたら俺も無関係じゃなさそうだし。」


万引きを止めたのは俺だ。

俺が止めなきゃこの状況にはならなかったと思う。


「花形君はなんでここに?」

「ここ。俺が使ってる空き教室なんだ。えっと…」


「あ、風凪(かざなぎ)つくしです。」

「花形青砥。」


「よろしく。」

「はい。よ、よろしくお願いします。」

「確か、隣の席だったよな?」

「そうです。隣の席です。」

「別に敬語じゃなくていいよ。同学年だし。」

「はい...じゃなくて、うん。分かった。」


.............


気まずい。助けたはいいけどこの先のことを考えてなかった。


「なんでいじめられてるんだ?」

「えっと、さっきいた男ぽいこのセーターを汚しちゃって。」

「それで殴られたりしてると?」

「顔は殴られたりしてないけどね。体とかは...」


俺の問に風凪は暗い様子で答えた。


「悪い。嫌なこと思い出させちゃったな。」

「私が抵抗できないのが悪いんだよ。」


自己犠牲が強い子だな。


「自己犠牲が強いのはいいけど自殺しようとするのは良くないな。」


一応確認も兼ねて言ってみると風凪は手首を隠す仕草をした。


「.....なんでそれを。」

「昨日、手首握った時。指辺りになんか違和感を覚えてな。もしかしたらとカマをかけたんだよ。」



風凪の手首に浅いリストカットの跡が残ってた。

いくつもあるけどどれも浅いから失血死には至らなかったようだ。


「もう。どうしようもないんです。ごめんなさい。」

「イジメから逃げるには死ぬしかないんです。」

「学校か親に相談すればいいじゃ?」

「したよ。けど、ダメだった。」


ったく役に立たない学校だ。

肝心な時に機能しないでいつするんだよ。


「だから、我慢するしかないのかなって…。弱いね私って。」

「我慢が1番の悪手だ。」

「意思ってのは伝えなきゃ誰にも分からないんだよ。そうなると助けられるやつも助けられない。」

「意思が伝わった俺は守ってやれる。」


「花形君は優しいね。」

「あ、ああ。」


つい熱くなってしまった。

昔のことを思い出すとこうなる。


それからは風凪と話して1時間目は時間を潰した。


「風凪は2時間目はどうする?」

「出たいんだけど…。」

「怖いか。」


風凪はコクンと頷く。


「んじゃ。俺も出る。そうすれば追い払える。」


風凪とは丁度いいことに隣の席で守りやすい。


「けど、花形君に無理させるのは私としてもちょっと...」

「謙虚なのはいいことだが人の厚意には素直に甘えとけ。特に今みたいな状況は特に。」

「...そうだね。ありがとう。」


「それ。大事にしろ。」

「え?」

「人になにかしてもらったら『ごめんなさい』より『ありがとう』だ。」

「うん。ありがとう。」


イジメられてるからか『ごめんなさい』が癖になってる。

こればかりは少しづつ直していくしかないか。


ということで、俺は3時間目の授業以降の授業を出ることになった。


あ、3時間目の授業担任の授業じゃん。

今からやる気が削ぎ落とされるか音が聞こえた気がした。

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