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第二十六話 海

夏休み。


この言葉を聞いて何を想像するだろうか。


大量の課題?友達とどこに行こうかの計画?それとも、家でなんのゲームをするかの思案?

いずれにしろ、夏休みという長期期間の休みならではの想像だろう。


友達、家族と旅行に行くもよし、家で部屋に引きこもってゲームするんでもよし。

折角の夏休み、年に一度の長期休暇。

周りに迷惑をかけないならなにしてもいいと俺は思う。


そう。周りに迷惑をかけないならだ。


俺は今、車の後部座席の隅っこでうなだれていた。

眠さからだるさから暑さからなにからなにまでもがどうでもよくなっていた。


事の発端は今朝。

朝の4時とかいう朝早くに真奈と優に起こされた。

何事かと聞くといきなり「海行くよ!」という元気いっぱいな声で言った。


最初はふざけるなと思ったが何度も頼まれてしょうがないなという感じで来てしまった。

我ながら優に甘いとは思うが治らないことだから仕方ない。


起こされた俺はそのまま車の後部座席に押し込まれ隣には優、風凪がいる。

車の一番奥の座席だから逃げるに逃げられない。

見事に捕まった。


とまあ、こういった経緯があって今に至るわけだ。


そして、メンバーはいつものメンバーと言えばわかるだろうか。

そこに、車が運転できるバイト先の店長とちょうど家にいた真奈が加わったメンバーだ。


男は2人、女は7人

という明らかに人数構成を間違えたメンバー構成。


店長も女性だから余計だ。

店長が男であれば少しは楽だったのかもしれないとかそんなことを考えたがないものねだりをしてもしかたない。

大人しくしていれば安全なはずだ。


こいつらの場合静かにしてようがなにしてようが問答無用で話しかけてくるし平気で意味の分からないことを言う。

この旅行に来た瞬間から安地なんてないのかもしれない。


「ねぇねぇ!青君!海だよ海!」

「だから、なんだよ。俺は眠いんだよ。」

「青砥、今日海に行くって知らなかったの?」

「知らされてないな。」


運転している店長を除いたメンバーの目線が優に向く。


「優奈ちゃん、伝えてなかったの?」

「あれれ?私言わなかったけ?」

「言われたらあの時間には起きてる。」


いくら嫌だとしても俺が行かないと優は不機嫌になる。

前に俺が風邪で行けなかった時なんか手も付けられないくらい大変だったらしい。


「あはは。ごめんね。てっきり私伝えたもんだと...」

「次、伝え忘れたら行かないからな。」

「気をつけます。」


あんまり寝てない上に高速道路を走っている車の中は不思議と眠くなっている。

俺はそっと瞼と閉じて寝ることにした。


「あ、青君寝ちゃった。」

「優奈ちゃんがちゃんと伝えないから全然寝れてないんだと思うよ。」

「ううぅぅ。」


「けど、寝ている花形君は可愛い気があるよね。」

「わかる!なんかいつもはめんどくさがってなにもしない人だけど寝てると大人しい好青年って感じだよね!」


青君の寝顔の共感者がここにもいた!

昔からの付き合いでそれこそ生まれた病院すら一緒の青君。

普段はなに考えてるかわからないけどこうして寝てるときは無条件で許したくなる可愛さがある。


「寝てる間ならなにしてもバレないよね。」


私はそっと青君の頭を抱きかかえた。

サラサラな髪が撫でるのをやめさせてくれない。

青君の頭を抱いているとなぜだかほっとする。


「優奈先輩、大胆ですね。自分の胸に先輩の頭を埋めるなんて。」

「あはは、杏奈。自分にないからって嫉妬するのはみっともないぞ。」

「店長にはその立派なものがついてるでしょうが!」

「あはは。ドヤっていい?」

「その立派なものに刃物突き刺しますよ。」

「おーこわ。」

店長さんと杏奈ちゃん仲いいんだね。


確かに杏奈ちゃんよりは胸はあるけど自分のを大きいとは思ったことはない。

言われてみると...私が一番大きいのかな?


胸だって大きくてもいい事なんてないのに。

せいぜい、こうして青君の枕になるくらい。



俺が目を覚ましたのは優から着いたと言われてからだ。

それまで俺は眠っていた。


それにしても、車で寝るもんじゃないな。

窓側に頭を寄せて寝たはずなのに逆向きになっていたのか寝違えてしまった。

お陰で首が痛い。


あ、けどなにか柔らかい枕みたいのがあったのか少し安眠出来たきがする。


「加奈。今日は泊まりか?日帰りか?それによって私の飲み物が変わってくるんだが?」

「一応は日帰りですけど飲みたいならどうぞ。泊まるっても大丈夫なように着替えは持ってきてるんで。」


俺は、濡れたとき用の着替えと聞かされたが?

どおりで多いわけだよ。


俺は優を少しキツめに睨んだが優はそっと目を逸らした。

こいつ、俺が嫌だと駄々を捏ねないように事前に知らせなかったな。


こういうとこだけは頭が回る。


「んじゃ、私は飲ませてもらおうかな。私は浜辺で寝てるけど変なことしないように。特に龍平は。」

「いやだなー俺がそんなことするわけないじゃないですか。」

「水着姿の女の子を見ながら言われても説得力がない。」


「龍平先輩は一度生まれなおしたほうがいいと思います。」

「いや、俺杏奈ちゃんと結婚するまで死なないから。」

「不老不死になるつもりですか?」


こんなとこで漫才しなくていいから早く行こう。

暑すぎて溶けそう。


更衣室にて。

「なな。誰の水着が似合うと思う?」


龍平がそんなことを聞いてきた。


「知るか。」

「倉宮さんは純粋だから白いビキニ。風凪さんはお淑やかな青のビキニ。真奈ちゃんはピンクのワンピース。生徒会長は少し大人な紫のビキニ。姉貴はいいや。」


龍平の趣味を聞いたが俺もその組み合わせが一番似合うと思う。

龍平が省いてた加奈先輩だが、明るい性格をしてるからオレンジ系の色が似合うと思う。


「さあ!行こうか。俺達の楽園へ!」

「うるさい。喚くな。迷惑だ。」


はしゃぐ気持ちが分からない。

このクソ暑いなか水に入ったところで暑いものは暑い。

水着に興味がないわけじゃないが暑いのは嫌なんだ。


更衣室を出て海岸に出る。


「なんだ、まだ女子達はでてきてないのか。」

「ほんとにお前は欲望丸出しだな。」

「捕まんなきゃ欲望丸出しでもいいんだよ。」


いや、更衣室の会話は海に来たら仕方ない会話かも知れないけど捕まっても文句は言えないぞ。


「お、2人とも来たな。パラソルとかの設営手伝ってくれ。」

「店長は泳がないんすか?」

「私は生まれつきカナヅチでね。泳ぎは得意じゃないんだ。」

「だから、そんな荷物が少ないんですね。」


納得の荷物の少なさだ。

水に入らないなら水着とかタオルとかそういうものはいらないからな。


パラソルなんかを設営して少し休む。


「どうだ、龍平。いい目の保養になるでしょ?」

「そうすっね。皆いい肌してますよ。」


こいつの変態度は全く変わらない。

いっそ警察に捕まればいいと思う。


「ほんと龍平先輩はどうしようもない変態ですね。」


俺達の背後から聞こえた声。


振り返るとそれぞれ似合った水着を着た杏奈達の姿があった。


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