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第一話 出会い

空き教室でぼーっとしていた所を見つかり、優に腕を引かれて教室に戻っている。

教室のドアを開けるなりクラスメイトほぼ全員がこちらを向くがまた興味無さそうにおしゃべりなどに戻る。


流石に一年丸々同じ光景を見てれば慣れるか。

6列ある席の窓側から二番目の列の一番後ろ。そこが俺の席だ。


普段の授業もまともにでてないから席の周りの人なんて覚えてない。

席に着くと同時に担任の女教師が入ってくる。


去年から同じ担任で気が合うのか叔母と一緒にいるところをよく見る。

大人しくHRを受ける。


すると、隣から視線を感じた。

向くと黒髪を真っ直ぐ伸ばした、ザ・お淑やか。みたいな子がこっちをチラチラ見てくる。

喋ったことないから見た目からの判断になっちゃうけど、見た目そんなにぐいぐい話しかけてくるタイプには見えない。

なにか話したくて話せないのか?


「なんか用?」

話かけずらいならこっちから話しかければいいだけ。

「あ、いえ。なんでもないです。」


黒髪の彼女はフルフルと小刻みに震えて俯いた。

何だったんだろうか...。

まぁ、相手がなんでんもないって言ってるんだから深くは聞かない。


これの出会いが俺の高校生生活を狂わせることになるなんてこの時は知らなかった。


帰り道。

HRを終えた俺は優と一緒に帰っていた。


「なんで青君は授業さぼるの?」

「つまらないから。」

「えーでも、世界史とか面白いよ?」

「雑談ばっかで毎回テストギリギリでテスト範囲を終えるあの授業が?」

「その雑談が面白いんだよ。」

「元々の授業がつまらないから雑談なんてどうでもいい。


どうせ出ても寝てるから聞いてないけど。


毎回こんな感じでクラスでの話題、体育祭とか文化祭が近ければそれ関連のことを優は話す。

毎回楽しそうに話すからこっちも飽きたりはしない。


「じゃあね。また明日。」

「ああ。」


俺と優は道のど真ん中で別れた。

幼馴染だけあって家は近い。

可愛い幼馴染が毎朝向かいに来てくれるのはいいんだがホントに毎日だから困る。

というのもズル休みができない。というのだ。


ズル休みをしようにも毎朝起こしに来る。

で、俺を引っ張り出す。


去年はこんな感じだった。

今年もそういう一年になるんだろうな。


「青。おかえり。」

「ああ。」

「相変わらず優ちゃんとは仲がいいんだね。」

「優ちゃんを泣かしたらただじゃ置かないからね。」


帰ってきて早々うるさいのは俺の母親だ。

俺の母親は優の母親と高校時代からの親友で今も家族ぐるみの付き合いをしている。

とにかくパワフルな母親だ。

俺には三個下の妹がいるが残念なことにこの母親に似てしまったためいつもうるさい。

ステレオ並みに声がでかい。

まさに歩くステレオ。


「後輩ができるんだから。しっかりしないと。」

「後輩となんかする機会なんてねぇよ。」

「分かんないわよ。もしかしたら一目惚れした子が告白しに来るんじゃない?」

「来るとしたら、野球部の近藤かバスケ部の田辺のとこだろ。」


カッコイイと言われることをしてないのに女子が寄ってくるなんてご都合主義真っ盛りのラノベじゃないんんだから。


「それもそうか。青、なんも部活やってないもんね。」

「先輩後輩関係がいやなだけだ。」


教師にだって敬語を使わないんだから先輩に使える気がしない。


「昔はそんなに無気力じゃなかったのにね。」

「年を取れば人は変わるもんだ。」

「それは。私への当てつけか?ん?」

「違うから。」


()()()()から変わったってことだ。」

「なんだい。まだ気にしてたのかい。」

「そりゃな。」

「あの事件は簡単に忘れていいもんじゃない。」


「ほどほどにね。」


母親からの声を背中で受けて俺は自分の部屋に戻った。


ベットに俺は倒れこんだ。

中学二年の時の事件。


俺の過去決して明るいもんじゃない。むしろ、暗い、真っ暗だ。

今でも覚えてる光景。

考えると胸のあたりが絞めつけられる。


と、いきなり睡魔が襲ってきて俺は寝てしまった。


どれくらい寝ていたのだろうか。

下の階からの母親の声で目が覚めた。


「青!優ちゃんが用があるって!」

寝ていても届く声。まったく。声がでかい母親だこと。


母親に呼ばれて下の階に降りる。

玄関には普段着を着た優が少し申し訳なさそうに手を振ってきた。


「で、用ってなに?」

「その、近くのスーパーまで一緒に行ってくれないかな~と思って。」

「...なんで?」


俺の家から一番近くのスーパーまで20分はかかる。

時刻は夜の8時。

女子高校生が出歩くには少し危ない時間帯。


「調味料切らしてるの忘れちゃって」

えへへと笑う優。

前にもなんどかあったけ。


「ちょっと着替えてくるから待ってて。」

流石にこの時間帯を制服で出歩くわけにはいかない、補導はめちゃめんどくさいからされたくない。


「おまたせ。」

「うん。」


「優ちゃんにへんなことしないように」

「言われんでもしないわ!」


ほんと余計なことしか言わない母親だ。

母親に見送られて俺と優はスーパーに向かった。



「ごめんね。こんな遅くに。」

「どうせ暇だし。」

部屋にいても本を読むかゲームしてるかだし。


俺は隣の幼馴染をちらっとみた。

茶髪に整った顔つき、服を押し上げる胸は大きいほうに部類される。

スカートから覗く足は丁度いい肉付きで脚フェチにはたまらないだろう。


「青君てさ。」

「なんだよ。」

「私を好きになったことある?」

「ないな。」

「即答!?なんで~私じゃだめ?」

「そうじゃないって。」


「俺と優は昔から一緒だろ?それこそ生まれた病院だって一緒なんだ。感覚としては双子の妹の方が近い。」

「...そうなんだ。」

「ああ。」


「でも、ドキッとしたことはあるでしょ?」

「そりゃな。優は可愛いから。ドキッとしたことくらいはあるさ。」

「それって、どんなとき?」

「風呂でばったり会った時。」


俺が答えると優は顔を真っ赤にして

「青君の馬鹿!」

「怒るなって。あれはわざとじゃないだから。」


風呂でばったり会った後滅茶苦茶説教されたのを今でも覚えてる。


そんなことを話しながらスーパーについた。


「なに買い忘れたんだ?」

「お醤油とか味醂(みりん)とかだよ。」

「んじゃ、早く買って帰るぞ。」

「うん。」


優は買い物籠をもって売り場を周る。

その間俺はぶらぶらしてる。

会計するときには戻ってくるように言われている。


このスーパーは住宅街に建っているからか結構な規模がある。

休日に行くと子供の迷子が出るほどに。


あ。

そんなことを考えながら歩いてたら見覚えのある顔を見かけた。

私服でもわかる黒髪。


俺の隣の席の女子だ。


辺りをキョロキョロと見ている。


(なにしてんだ?)

声をかけようとしたが学校での反応をみるとやめておいた方がいいな。

しばらく、見てると女子はグミをカバンに入れてそののまま店を出ようとした。


見て見ぬふりはできないから店の外まで後を追った。


「ちょっと待った。」

「!な、なんですか!放してください!」

「うお!」


カバンを振り回して追い払おうとする。

「落ち着けって、俺は店員じゃないから。」

「え?あ。」


女子生徒も気が付いたようで暴れるのをやめた。


「単刀直入に聞くが、なんでこんなことした。」

俺はあくまで優しく声をかけた。

「それは.....」


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