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第十三話 危険信号

体育祭が近いってことで学校は完全に体育祭ムード。

俺みたいな無気力野郎には辛い雰囲気。


それに伴い、実行委員の仕事も増える。


全ての授業が終わった放課後。

俺が今いるのは会議室。

今は実行委員の顔合わせと仕事の振り分けをしている。

一通り名前を呼ばれたが、面子は去年とほぼ一緒。一年生が加わっただけで他に変更はなかった。


「それでは、今から、仕事の割り振りをしていきます。変更の要望、質問は最後にお願いします。」

こうして、指揮っているのは勿論生徒会長。


まあ。仕事の割り振りと言ってもやることは去年と変わらない。

あくまで、一年生に伝えるための時間だ。


各委員会、人物に仕事が割り振られていく。

そして、残ったのが俺と生徒会長。

実質、生徒会長は備品管理とかいろんな仕事があるからないのは俺だけになる。


「それでは、各仕事をこなし楽しい体育祭にしましょう。」

初回の実行委員の集まりは解散となったのだが...。


まあ、仕事がないならいいや。

去年より実行委員が多いから俺の仕事がなくなったと思って置こう。


「どこへ行く。」


そう思って会議室を出ていこうとすると背後から鋭い声が飛んできた。


「青砥、仕事がないと思った?」

「思った。」

「そんなわけないでしょ。青砥は数少ない男の実行委員なんだからちゃんと仕事はある。」

「なくていいのに。」

今年の実行委員のほとんどが女子なんだ。

いや、去年も女子の方が多かったけど今年はより多い。

この学校の男子は無気力な奴が多い(俺含む)


「仕事を与えるからついて来て。」


俺は無言で生徒会長の後を追った。


こうして、生徒会長として仕事してるときはこんな感じなんだけど、プライベートになると目つきはきつくなるし俺には罵詈雑言しか言わない。

顔は可愛いのにもったいない限りである。


生徒会長の後を追っていくと、資料室なる場所に連れていかれた。


「ここにある段ボールを生徒会室まで運んで。」

「え、これ全部?」

「全部」


冗談だろ。

少なく見積もっても5㎏はある段ボールを全部運べと。

逃げたい衝動にかられた。


「逃げたら清水先生と倉宮さんにチクるから。あとは、よろしく。」

生徒会長はそれだけ言うと自分の仕事に戻っていった。


「はぁ。やるか。」

俺は溜息をつきながらもやることにした。

担任の清水はまだいいが優にチクられるのだけは辞めていただきたい。

俺が優に逆らえないのを知ってるからな生徒会長は。


頼まれた段ボールは見た目通り重かった。

普段運動してないとこういうとこできついんだよな。


段ボールは全部で十個前後。

一階の資料室から重い段ボールをもって二階の生徒会室まで運ばなきゃいけない苦行。


全部運び終わるころには腕はまともに動かなくなってたし全身汗だくだった。


「終わったか。ご苦労様。」

「来年もやるのか...いやになる。」

「今日の仕事はない。帰っていい。」


というので帰ることにした。


教室に行くと優と風凪と杏奈と3人より少し大人びた人がいた。


「加奈先輩。いたんですか。」

「なんだ私がいちゃ悪いか。」


加奈先輩はこの学校の生徒会副会長。

生徒会長とは、幼馴染。

俺の中学時代を知る人の一人。


「いえ、そんなことないですが珍しいですね二年の教室の来るなんて。」

「いやな、青がちゃんと働いてるか見にきたんだよ。」

「その割には4人で楽しそうにしゃべってましたが。」

「細かい事気にすると禿るぞ。」


細かくはないがこの人になに言ったところで無駄なのはもう経験済み。


「で、本当はなにしに来たんです?」

「まったくいけ好かない男だな。」


余計なお世話だ。


「最近、涼音の様子が変なんだ。」

「生徒会長が?そんなことなかったと思いましたが。」

「常に一緒にいる私なら分かる。体育祭の事で疲れがたまってるのかもしれないな。」


確かに、生徒会長は春の新入生が入ってきてから仕事が山積みだ。

それから、体育祭まで休みなしで動かなきゃいけない。


「それで、まさかとは思いますが...」

「私は会長代理の仕事で忙しい。だから、青。涼音を頼んだ。」

「無理です。」


俺は即答した。

だって、そうだろ。


嫌われれるんだぞ俺は、その俺に何をしろと。


「いや、青から話かける必要はない。ただ、倒れないようにしてくれればいい。」

「それって、結果的に俺が生徒会長と一緒にいなきゃだめってことじゃ。」

「じゃ、頼んだ。」


強引な先輩だ。

今に始めったことじゃないが...。


今日。

生徒会長の様子が変と思ったことはなかった。

隠しているのか、それとも俺が気づいてないだけか。

どちらにしろ、避けられている生徒会長を見守れとか無理ゲーすぎる。


ま、倒れさせなきゃいいんだ。


次の日も当然実行委員会の仕事はある。

今日の仕事は昨日運んだ資料の整理。

競技に合わせて色々ルールとか書いてあるものを整理するだけ。


とまあ、こうして仕事を割り振った後、生徒会長も同じことをするために資料室に向かっている。

昨日運んだ段ボールともう二つあったという。

それを指示し忘れたと言っていた。


流石の俺も異変に気付いた。

中学からそうだが、生徒会長は色々ため込む性格をしていると直人が言っていた。

そして、その異変が顕著に出たのは資料室に段ボールをとりに行く時、階段を下りている時だった。


二階と一階のお踊り場。

不意に生徒会長の体がフラッと前に倒れそうになった。

加奈先輩から言われて注意してたからすぐに手が出て支えられたし嫌がるだろうけど腹辺りに腕を回したが、ここは階段。



平面の地面と違って前かがみに倒れたらそのまま下まで落ちることになる。

生徒会長は意識がはっきりしてないのか俺の腕を嫌がる素振りもしないし足が前にでることはない。

気を失っている状態で受け身なんかとれるわけもない。


俺は生徒会長の腹に通した腕を思いっきり引いて落ちるのを阻止しようとするが腕だけで高校生の体重を持ち上げられるわけもなく俺と生徒会長はもつれるようにして階段を転げ落ちた。


落ちたのを誰かが見ていたのだろうか女子生徒の悲鳴が聞こえた。

生徒会長は完全に気を失っている。

見たところ、傷はない。


俺は言うと頭を打ったのかめっちゃ痛いし体を打ちつけたようで思うように動かない。


しばらくして、誰かが近づく足音と引き換えに俺は意識を手放した。



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